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謎の殺人鬼  作者: 立花 優
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第5章 対決

第5章 対決


 さて、一体、どうするか?

 執拗なマスコミの取材を適当に繰り上げて、その合間に、独自の調査を行うなど、ほとんど不可能に思えた。

 ただ、時間だけが、徐々に経っていく。



 さて、このような間にも、事件の解決の難易度は増していったのである。



 例の、犯罪現場とされる廃屋に近い、工場跡か倉庫跡らしき建物も、未だ、見つから無かった。これでは、如何なる手がかりも無い事になってしまう。



 まして、封筒からも如何なる指紋・血液型・その他の証拠は出て無いのだ。SDカードなどは、家電量販店にいけば、誰にでも手に入れる事ができるのだ。



 多分、このままでは、下手をすれば迷宮入りになってしまうでは無いか?



 ここは、もう、この私自身が動くしか無いのだ。



 私は、妻が毛嫌いしている弁護士の村西透が、どうしても、頭から離れ無かったのだ。

 一つは、妻を最初に犯した『ロンギヌスの槍』であるらしい事、それに、本人に仮に鉄壁なアリバイがあるにしても、誰か別の第三者に、この事件を依頼すれば、この事件は、起こす事は絶対に不可能では無いからだ。



 特に、村西透は弁護士である。村西透が弁護した人間の中には、そっち道の系統の者もいたのでは無いのか?これが、私が出した結論なのだ。

 特に、妻のヤッチャンが既に、中学1年生の時に、村西透と関係があった事は、警察も知らない事なのだ。



 私は、子供二人が殺害されてから、約二ヶ月後、意を決して、隣家の村西透の家へ向かったのだ。

 ここで、一挙に、片を付けるの覚悟でだ。



 土曜日の午後、私は、高級なブランデーを抱えて、隣に住む村西透の家へ行った。手ぶらではさすがに失礼だろうからね……。



「失礼します」



「やあ、遅かったですね。私は、橘さんが来られる事は、予想していました。色々と聞きたい事もあるのでしょう?」と、弁護士の村西透は、落ち着いた様子で返答した。



 応接間に入って、二人で、向かい合った。

 欧風の高級な応接テーブルを前に、二人で、向かいあったのである。



「私は、村西先生に、どうしても聞きたい事が二点あります」



「それは?」



「まず、第一点目です。私が、妻と結婚する前、妻は既に中学1年生で、男性と経験したと、私に言ってました。

 それは、女子バスケ部の相談役をしていた村西先生こそが、その相手じゃ無いのですか?

 私は、まだ、いたいけな中学1年生の妻を、犯した相手を、『ロンギヌスの槍』と名付けて追求しており、今でもどうしても許せないのです。



 で、第二点目です。村西先生こそ、この私ら一家を巻き込んだ驚愕事件の、本当の真犯人では無いのですか?勿論、先生には、鉄壁のアリバイがあります。

 しかし、今回の一連の事件は、先生が、私の家の隣に引っ越して来てからの連続です。

 どう考えても、変じゃ無いですか?」



 この時、私は、いざと言う時のために、高性能のスタンガンと、超高感度のボイス・レコーダーをポケットに入れて、相手と対峙していたのである。



 しかし、村西弁護士は、ここで、思いも付かないような回答を、淡々とし始めたのだ。

 正に、私の、想像を、遙かに超えた回答をである。



 私の思いは、この村西弁護士の反論により、全て、ぶち壊されたのである。



「私は、このような事がいつか起きる事を心配して、敢えて隣に引っ越して来たのです」と。



「えっ、それは、一体、どう言う事です?」



「普通なら、こう言う話は、墓場まで持って行くべきなんでしょうが、橘さんは、娘さんを二人とも殺された悲劇の人物です。

 私も、弁護士として、この問題は、決して無視出来ない、大きな問題です。



 幸い、今日の午後は、私の妻はデパートに買い物に行っています。まずは、半日は帰って来ません。



 よろしい、この私が、自分なりに調べた事を含めて、全てを、話しましょう」



「まず、最初の質問への回答ですが……」



 ここで、私は、ゴクリと唾を飲み込んだ。果たしてどのような回答が帰って来るのであろうか?



「橘さん。貴方は、貴方の奥さんを襲ったのはこの私で、無理矢理、犯したのだと思っておいででは無いでしょうか?しかし、事実は、小説より奇なり、なのです。



 その日は、彼女が、中学校に入学して2ケ月後ぐらいの頃の事です。



 バスケ部のボールの後始末を、私と、それはそれは美しい美少女だった貴方の今の奥さんと、二人きりになった日があったのです。



 その時、あの美しく幼い彼女が、急に、訳の分からない事を言い始めて、この、私を誘惑し始めたのです。

 何と、私の見ている前で、自らの下半身を急に全裸にし、

「ねえ、ここ、ここを見て。本物のアソコよ。私としたくないの?」と言い始めたのです。



 私も、中学3年生で、その頃は、性欲の塊であるとは言え、しっかりした理性はあります。



「何を馬鹿な事を!!!」を言って、私は、その時は拒否したのですが、



「私には、心の中に悪魔や髑髏がいて、急に、こうやって降りて来るんです」と、彼女は言います。



 で、その時は、私は手を出さ無かったのですが、一応、悪友に頼んで、避妊具だけは手に入れておきました。



 すると、今度の日曜日、私の家に押し掛けて来ると言うのです。



 私も、若かったのでしょう。結局、彼女と関係を持ってしまいました。

 既に誕生日後で、彼女は満13歳です。後に、大学で刑法を読んだら、本人の同意があっても、旧強姦罪ギリギリなんですよ……満13歳未満なら一発でアウトだったのです。ただ、当時はまだ親告罪でした。

 で、何とか、弁護士はしてますがね……。



 現在なら、平成29年の刑法改正で、非親告罪に変わっており、下手をすれば強制性交罪で起訴されたかも知れません。

 まあ、時効は10年ですから、私が、旧司法試験受かった時には、かの時効の10年は過ぎていましたがね。ただし、これは、絶対に、他言無用です。



 しかし、最初の行為の時、彼女の異常な反応に驚きました。癲癇のような発作、いや、多分、心因反応でしょうが、それは、正に彼女に悪魔が乗り移ったように感じました。



 それが元で、私は、受験勉強を理由に、彼女と急激に、距離を置き始めたのです」



 しかし、この私が、彼女と付き合ってから、そのような異常な反応は、見た事も聞いた事も無かったのだ。この点を聞いてみると、



「彼女自信は、私の心の中の悪魔や髑髏は、いつ現れるか自分でも分からない、と言っていました。

 この疑問は、私も感じ、高校時代、精神医学や心理学の本を読み漁りましたが、やはり、いわゆる三大精神病でもある、本当の癲癇でも無さそうだ。



 敢えて言えば、かっての日本で伝説にもあった「狐憑き」に近く、敢えて、名付けるとすれば、「憑依性精神病」に近い、と思いましたね……」



「しかし、何度も言いますが、私には、彼女の憑依された姿など、今の今まで、見た事が無いのですが……」



 すると、村西透弁護士は、立ち上がり、古びた二冊の本を、先ほどの瀟洒なテーブルの上に置いたのだ。



「これを、見て下さい」




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― 新着の感想 ―
[良い点] 法律の変更点を分り易く取り入れておられて、村西弁護士の立場が良く分かりました。 [一言] 主人公と弁護士の会話にリアリティが出て来たと思います。
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