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4 うかつな発言に注意

「ねえ、シーナは好きな人っているの?」


 午前の授業を終え、ランチタイム前の時間。

カイは授業が終わると剣の訓練をしに、兵団の訓練所に行ってしまった。

見に来るかと言われたものの断り、私は部屋に戻って、シーナの入れてくれたミルクティーを飲みながら、お気に入りのソファーに座り休憩していた。


 昨日の本は、まだ最後まで読めてはいないが、物語中盤の「このままでは王子に邪魔されて恋もできないと、ヒロインが困っているところ」まで読み終わった。

そういえば、私も初恋ってまだしたことが無い。

そもそも出会いがないのだ。

王族主催のパーティーやお茶会には、私が血が繋がっていないからなのか、出ないでいいと言われているし、街に視察やお忍びで遊びにいく時は、セイ兄様とカイが両横にびっちりくっついている。

城内で同じ年齢の子どもに会うこともそうそうない。


そう思って一番身近なシーナに聞いてみたら

「いますよ。」

即答!!で返事が返ってきた。

思っていなかった答えに興奮する。

「え?うそ、誰、私の知っている人?!」

シーナはさっと顔を赤らめて、照れながら

「好きな人というか、結婚を前提にお付き合いしている人がいるんです。」と笑う。


ええー!知らなかった!!

 考えてみればシーナも25歳だし、結婚していてもおかしくはない。

シーナは女の子らしい可愛い顔と優しい雰囲気で、兵士達や他の使用人たちにファンが多いと、カイに聞いたこともある。

「それって婚約してるってことよね。いつからお付き合いしているの?」

「もう二年ほどになりますねえ。」

「結婚しないの?」

「彼が4つ年下で、仕事を一人前にすることができたらと約束しているんです。」

まさかの年下!!興奮が止まらない!予想外すぎる!

「どうやって出会ったの?」

私は持っていたミルクティーのカップをソーサーにがちゃんと置いて、前のめりになる。

「姉さんの部下なんです。」

「ってことは魔導士団の?!」

「そうです。姉さんに差し入れを届けに行った時に、新人として入団してきた彼と出会って。」

なんですってー!そんな身近に恋が落ちていたとは。

「私も今まで何人かの人にお付き合いを申し込まれて、デートをしたりしたんですけど、なんだかしっくりくる人がいなくて。でも彼に出会った時に、運命を感じちゃって!単純に見た目がタイプだったのかも知れませんが。」

そういうとシーナは、恥ずかしそうに目を伏せた。


 良いなー、なんか良い!すごく良い!その幸せそうな恋する乙女の感じ。憧れる。

そういえば本の中のヤンデレ王子様も言ってたな。ヒロインに会った瞬間、運命だと分かったって。

おかげでヒロインが大変なことになるんだけど。


「私もそんな運命を感じる恋をしてみたい。」

ぽつりと漏らすと、シーナは目を瞬かせて

「あれ?アリス様は、セイ様がお好きなのでしょう?」

と不思議そうに言う。

「え?なんでセイ兄様?だって兄妹だよ?」

「でも血は繋がっていませんし。小さい時から大きくなったらセイ様と結婚するとおっしゃっていましたし。今でもセイ様に見つめられると、顔が赤くなりますし。」

「嘘、顔赤くなってる?」

「はい。ですので好きでいらっしゃると思っておりましたが。」

な、単に私の対セイ兄様美形顔面耐性がいつまでもつかないだけで、恋する乙女と勘違いされていたとは…。

「確かに顔が好みなのは認めるけど、兄様はあくまで兄だと思ってるよ。結婚するって言ってたのも、小さい子がパパとかに言っちゃうやつだし。それに私は結婚して、城を出るの。本当の両親みたいに、普通の家に住んで、普通の生活を送りたいから。だから王族と結婚は無理。」

キッパリと一息で、昔から温めていた未来計画を言い切ったところで


ガタンっ!

突然ドアが大きく揺れる音が聞こえた。


バアアーンッ!!

壊れるくらいの勢いで、私の部屋のドアが開いて、人がなだれ込んできた。

あまりの勢いにシーナが慌てて、ティーカップを回収する。

「嘘よね?嘘って言って、アリスちゃん!」

「うわ、ママ?!何が、何の話?!」

なだれ込んできたのは、パパとママ。

この国の最高権威、王様と王妃様。その2人が血相抱えて、私の肩を掴み揺さぶる。


 ちなみにパパママ呼びは、強すぎる2人の要望だ。

お父さんお母さんだと本当の両親と区別がつかないからと言っていたが、ただの願望だと思う。

この年になって恥ずかしいから、せめてカイたちみたいに父様母様に変えさせてと言っても、その度に泣いて拒否されるのでこのままだ。

もちろん公式の場では、きちんと陛下呼びしているが、そもそも公式の場があまりないので、ほとんどこうなのである。


「さっきの話よぉ!結婚したらこの城を出るなんて、冗談よね?セイと結婚するって言ってたじゃないー!!」

ママは涙をボロボロこぼしながら縋り付いてくる。

「セイが何かしたのか?確かにあいつは、少しアリスに対してやりすぎなくらいの行動を起こすが、それもお前を愛してのことなんだっ!」

ママの涙をハンカチで拭きながら、詰め寄ってくるパパ。

「あの、2人ともちょっと落ち着いて。なんか誤解があるし、そもそも部屋の前で立ち聞きしてたの?」

そう言った途端、なんだか部屋の中の温度が急激に下がる。

この凍りつくような魔力の気配は…まさか。

嫌な予感にギギっとゆっくり首を反対に回し振り向くと、ドアからもう1人顔を出した。


「久しぶりに公務が落ち着いたから、みんなでランチしようと、愛するアリスを誘いに来たんだよ。」

ヒィっ!やっぱりセイ兄様!怒ってるバージョン!!

あーめちゃくちゃ怒ってる。

笑顔だけど、こっちに手を広げてものすごく笑顔だけど。

全く目が笑ってない上に魔力が漏れてる。

ヤダヤダ、なんで怒ってるのかわからないけど、とにかく怖い。すごく怖い。

ゆっくり近づいてくるのも怖い。

「でもランチの前に、緊急家族会議を開かないといけなくなったね。」

わあ!なんだか命の危機を感じるセリフ。

今すぐ逃げたい。ランチは一人で食べたい。

縋るような顔でシーナの方を見ると、めちゃめちゃ怯えた目で、首を横に振っている。

あ、そうですか…。回避不可能ですか。


「僕の可愛いアリス。ゆっくり納得いくまで話合おう。」

にっこりダメ押しの笑顔を繰り出して、いつの間にか目前にいたセイ兄様はサッと私を抱き上げる。

はい、お姫様抱っこという名の拘束ですね‥。


「みんなでランチって聞いたから、訓練切り上げて来たぜー」

そこでカイが汗を拭きながら能天気に顔を出す。

カイ!助けて!と目線で合図すると、一瞬で異常な空気を悟ったのか、

「あ、あー。ちょっと俺、シャワー浴びて着替えてから顔出すわ……」と言って、部屋を出る。


カイィー!!!

逃げた、逃げたわねー!

覚えてなさいよー!

そして、私はやたら笑顔のセイ兄様と泣きまくるママ、焦りまくるパパに連れ出され、部屋を出たのだった。


カイは、危機察知能力が高い

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