another セイ
セイ兄様視点
ヤンデレ爆誕秘話です
セイ・リエラ
それが僕の名前。
リエラはこの国の名前でもあり、僕はリエラの第一王子として生まれた。
生まれた瞬間、桁違いの魔力を持っていた為、国中の優秀な魔道士達が、魔力を感知し僕の誕生がわかったらしい。
3歳で、自国語の読み書き及び他三大陸の言語取得、基本の数式に加えて、膨大な魔力で初歩の魔法を一通り使いこなせた僕は、優秀さは歴代最強とも言われる建国の王を凌ぐとも言われた。
加えて母譲りのまっすぐな青い髪と竜族の血を引く王族の証であるゴールドの目。
女の子顔負けの白い肌を持つ外見は、この国一の美形と言われ、実際大人も子供も、女性たちは僕を見ると頬を染めた。
2歳の時、弟のカイが生まれた。
弟は、栗色の髪にゴールドの目で、とても父様に似ていた。
弟は、王族の血を引いている為、もちろん魔力は高いが、全てが僕に比べ、子供らしい無邪気な子供だった。
カイを大変な難産で出産した母様は、これ以上の出産は子宮が持たないと言われ、3人目の子供が産めない身体となった。
そして元々女の子を切望していた母様が、生まれた瞬間、男の子だと知ってガッカリし、またカイに無理やり女の子の服を着せたりしていたのに、カイはいつも何も分かってない無邪気な顔で、ただニコニコしていた。
いつも無邪気なカイを見ていると、自分の方がひどくつまらなく感じた。
この先もきっとなんでもこなせてしまうだろうし、いずれは父上を継いで、この国の王になる。
きっと何でも手に入るけれど、本当の意味でしたいことや欲しいものができても、道を外れることはできない。
でも無邪気なカイは、第二王子という身分の元ではあるが、ある程度自由な選択ができるのだ。
魔法師団や兵団、国に危機があれば駆けつけなければいけないが、商売の才能があれば、商会を起こすことも可能なはずだ。
つまらない、人生だな。
4歳の時、既に冷めた表情をしていた僕の前に、
彼女は現れた。
母様に手を引かれ、僕たちの前に初めて顔を見せてくれた時、妖精が現れたと思った。
比喩的な表現ではない。
今は妖精族は、希少で滅多に姿を見せないが、昔は身近にたくさんいたそうだ。
そんな妖精族の本で見た、ふわふわの金髪にエメラルドグリーンの瞳をした妖精の姫にそっくりだったのだ。
「こんにちは、おうじさま。アリスです。」
妖精姫は、スカートの裾を恥ずかしそうに摘んで、にっこり笑って名前を名乗った。
「うわあー、てんしっているんだね。」
カイが無邪気にアリスの手を握って笑う。
その瞬間、僕はカイの手を振り払っていた。
誰にも触らせたくない、僕の妖精だ。そんな思いが巻き起こる。
「天使じゃない。妖精だ!」
「ようせい?」
手を振り払われた衝撃で、ぽかーんとした顔で僕を見るカイ。
「あらあら、2人とも取り合いはダメよ。それにアリスちゃんは人間よ。こんなに可愛いんだもの。間違えるのは分かるけれど。」
母様の言葉が俄かに信じられなかった。
今までで一番キレイだと思ったからだ。
小さな女の子にキレイというのもおかしな表現かもしれないが、アリスは存在事態が、キレイで透明に近い感じがした。
羽が生えていないのが不自然なくらいだ。
「アリスちゃんは、兵団の師団長ゼスと魔道士団のネアの娘よ。これから2人がお仕事の時、お母様と一緒に過ごすことになったの。2人とも妹と思って仲良くしてね。」
なるほど。母様と過ごす。
大方娘欲しい病の母様が、ネアにワガママを言ったんだろう。
まあ、こんなに可愛いんだ、無理もない。
その時、妖精は僕の服の袖を引っ張って言った。
「おうじさま、いちばんきれいで、きらきらしてるね。さすがおうじさまです。」
僕はその瞬間、初めて王子に生まれて良かったと思った。
一番キレイなのは、間違いなくアリスだと思うが、この顔に感謝した。
誰に何を褒められても、もう挨拶程度にしか思わなかったが、こんなに嬉しく思ったのは初めてだった。
「ふふ、アリスちゃんはセイが気にいった?大きくなったらセイのお嫁さんになる?」
母上が冗談めかしながら、半分本気で聞く。
「なる!アリス、おうじさまのおよめさんになる。そしたら、アリスはおひめさまだね。」
アリスは、僕をキラキラした顔で見つめて、返事をした。
「まあまあ、そうね!その日が楽しみだわあ。」
そのあと、今すぐにでも婚約を結べないかとか何やらぶつぶつ言っていた母様だが、僕はもうその時点で決めていた。
絶対にこの妖精姫を手に入れると。
そして、その為ならこの国一の権力者の王になるのも悪くはないと初めて思った。
でも、権力で手に入れても、アリスは本当の意味で手に入らない。
必ず僕を好きになってもらわないと!
その為ならどんな努力もしてみせる。
そしてその日から、つまらなかった毎日は、最高に素敵な未来が待っている毎日に変わったのだ。
これは確信だ。
僕の思い描く幸せなアリスとの結婚を、僕なら手に入れられる!
その出会いから数年後。
アリスの両親が亡くなり、アリスは、正式に王家の養子、僕の妹となった。
アリスは僕のことを「兄様」と呼ぶようになった。
そしてカイとは親しく話すのに、カイの真似をしてか、僕に対して敬語を使うようになったけれど。
僕は妹だと思ったことはない。
僕の中では、ずっとあの時から、特別で誰より手に入れたい妖精姫のままだったのだから。
成長し、父様の仕事を手伝うようになり、書類を整理していたら、ネアの情報が書かれた紙が出てきた。
そこには、ネアの高い魔力の根源は、祖先に妖精の血が流れているのではないかとの記載があった。
となると、アリスの美しさと魔力の高さは妖精の先祖返りではないのか。
やはり僕の感じていたことは、正しかった。
そして僕はというと、成長しますます高まる魔力に、竜族の先祖返りではないかと言われていた。
妖精姫と竜族の王子。
もしかしたら僕達は、前世から強い絆で結ばれているのかも知れない。
今世での出会いはやはり運命なんだ!
アリス、待っていて。
僕は必ず2人の幸せな未来を作るからね。
次から第二章です
少し時間がかかるかも?です