表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/21

12 準備

さすがセイ兄様というべきか、次の日にはパパママへの説得及び入学申込みが完了していた。

二人は兄様に何を言われたのか知らないが、渋々納得したらしい。

ママにはやはりというか、話を聞いてから、すぐに部屋に駆けつけて泣かれはしたけれど。


しかし心は痛むがしょうがない!

人生がかかっているのだ。


そうと決まれば、来月開校の学校には、もう生徒たちは、続々と入寮し始めているらしく、私も急いで準備を始めることになった。


寮の部屋には外国からの留学生なとが来ることも想定して、少しだけ特別室という広い部屋が用意されているらしい。

そこだけ続き部屋で使用人部屋があるらしく、シーナも一緒に行くことになった。

寮では朝晩、食堂でご飯が用意されているし、お昼は学校の食堂でランチが食べれる。

洗濯もまとめて寮母さんがしてくれるらしい。

ただ部屋の掃除や、着替えなどは当然と言うべきか、自分ですることになる。

普段全く自分で何もしない、いやもちろんできるんだけど、そこは腐っても王女。

箱入り、いや城入り?娘の私。周囲に自分でするな、使用人の仕事を取ってはいけないと言われ育ってきた。

そんなわけで

セイ兄様にシーナは絶対一緒にと条件をつけられたのだ。


「アリス様、持って行くお洋服はどうしましょうか?」

荷造りを進めてくれているシーナが、クローゼットの前から声をかける。

「そうね。普段は制服があるらしいから、お休みの日に着る洋服、数着でいいかな?変装して、お金持ちのお嬢様ってことにするらしいから、それっぽい服を選んでくれない?」

「かしこまりました。でも変装ってどういった変装をされるんですか?アリス様は多少ごまかしても、溢れる美少女っぷりですぐバレるような気がするのですが……」

美少女部分は置いておいて。

いくら王都から離れても、王族の顔は大抵の人は知っている。

主に兄様やパパのせいなのだが……。


一昔前までは、人々の顔を伝える方法は、絵という表現手段しかなかったのだが、おじいちゃんの代にカメラが発明され、写真という手段ができた。

その時点では、まだ画質も荒く、色もモノクロだった。


しかし、パパや兄様が仕事中も私と離れるのが寂しい。

いつだって私の存在を身近に感じたいと、いつもの親バカアンドシスコン病を発症。

私の写真を持ち歩いていても、なんだか写真が荒く、臨場感がなく余計寂しいと、2人で何やら研究し、カラーの画質がいい写真が撮れてしまう、カメラを開発したのだ!

兄様はそれだけでは飽き足らず、既存の音声のみの通信機器を改造し、半径1メートルを鮮明に映せる通信機を開発した。さらについこの前、人物を立体化することまで成功させていたのだ!

この立体化の状態も、特殊な魔石の上に常時浮かび上がらせておくことが可能で、セイ兄様の発明に喜んだ親バカなパパが、各都市の役所に王族立体家族写真を配置したのだ。

家族五人、なぜか私が真ん中で微笑んでいる立体画像を見せて、自分の娘はこんなに可愛い、仲良し家族だと国中の地方の国民に自慢しまくっているらしい。


本当に色んな人に迷惑だからやめてほしい。

そして何より恥ずかしい。


これにより王族の顔はリエラ中、津々浦々知れ渡り、美形な王子たちのファンクラブまで発足されているらしい。

ちなみに私のファンクラブもあったそうなのだが、活動内容が危ないからと、兄様に根絶やしにされていた。

なぜ危ないのかは教えてくれなかったから、未だにどんな活動をしていたのかは謎のままだ。


閑話休題。


「外見は髪を黒く染めて、目も瞳の色を変化させる魔術で

黒くして、この伊達メガネをかけるの。」

そう言って、私は少しフレームが大きな丸い黒縁メガネを取り出して掛けて見せる。

「きゃー、メガネ美少女!めちゃくちゃ新鮮で可愛いです!……ん、やっぱり意味ないのでは?」

シーナさん、顔が興奮で赤くなってます……。

え、意味ない?

メガネ掛けたら普通変わらない?

「で、でも一目では分からなくない?毎日髪型も地味にしたりして、もっと工夫するし!」

「うーん、そうですねえ。だったらウィッグはどうですか?アリス様は、金髪のふわふわロングウェーブの髪

というイメージですから、黒髪の肩くらいまでのボブのウィッグを被るとか!」

「それ良いわね!ウィッグ早速用意してもらえる?」

「かしこまりました!ほかにも学校でご入用の文房具なども一緒に手配しますね。」

そう言って、シーナが部屋を出て行く。


入れ替わりで、ノックの音が響き、セイ兄様とカイが部屋に入ってきた。

別の侍女がすかさずワゴンに兄様用のコーヒーと、私とカイのお茶、お菓子を机に用意してくれる。

「今日も相変わらずの可愛さだね、アリス。学校の準備は進んでいる?」

セイ兄様は、わたしを抱っこして、ソファに腰掛けた。

「はい。今色々荷物を詰めているところですよ。」

主にシーナがだけど。

「そう。じゃあ来週にはもう行けるかな?」

「大丈夫と思いますよ。入学式まであんまり時間がないんですよね?」

「そうなんだ。みんなが入寮し始めているから、あまりギリギリになっても、目立ってしまうからね。」

私の頭を撫でながら、兄様はにっこり微笑む。

兄様も今日も絶好調に美形だ。


「それなんだけどさー、学校に俺も一緒に行っちゃダメなの?」

カイが向かいの1人掛けの椅子に座り、紅茶を飲みながら不貞腐れた様子で聞く。

「ダメ!すぐバレるし、大体カイが側にいたら、恋ができないじゃない!」

「えー、だってさ、アリスと三ヶ月も離れるなんて、俺耐えれる気がしない。しかも変な野郎に捕まってたらとか思ったら、気が気じゃない。」

おおっと、カイもシスコンが重度なことを忘れていたわ。

「まあまあ、カイ。今回は我慢して。」

セイ兄様も私を抱っこしながら、器用にコーヒーを取ると優雅に一口飲み、騒ぐカイを宥める。


「兄様は気にならないんですか?」

「カイ、僕が気にならない訳ないだろう。あれから考えたんだけど、ハヤテも一緒に通ったらどうかな?」

「え?」

ぎくーん。

未だにセイ兄様からハヤテの名前を聞くと焦ってしまう、私とカイ。

「な、なんでハヤテを?」

カイは声が上擦って、紅茶のカップを落としそうになる。

誤魔化すの下手すぎか!

「今まで黙ってたけど、ハヤテはカイじゃなく、アリスの影でしょう?」

ビクッと私とカイは同時に肩を揺らす。

「な、な、なんで?なんでそんな……」

兄様と接している背中が凍りつく感覚がする。

「ハヤテの姿をたまに見かけるんだけど、アリスしか見てないからね。しかも明らかに異常ともいえる熱の籠った目で。」


ハーヤーテ!

だからだから気をつけてって!

なるべく!出来るだけ!

影らしく忍んでって言ったのに!

「もう誤魔化さなくていいよ。核心はあるし。アリス、彼を呼んで。」

兄様の反論は許さないという目を見た私とカイは、顔を見合わせて観念した。


「ごめんなさい。兄様を騙すつもりはなかったの…。ハヤテ、出てきて!」

シュタッとハヤテはすぐに天井から姿を現した。

「姫様ー。呼んでくれたー!」

すぐさまいつものように私に抱きつこうとすると

「痛っ!」

あと数センチのところで、バチっと静電気のような音が発生し、ハヤテが思いっきり手を弾かれる。

あ、セイ兄様の魔法が発動してる!

軽く雷の攻撃魔法を一瞬で繰り出したような……。


「アリスに意味なく触らないでくれるかな?」

兄様は私をぎゅっと抱え直し、強烈に恐ろしく低い声を出す。

兄様から絶対零度の最強魔力が放出される。

降りたい、この膝から。今すぐに!


「あー、第一王子か、どうもー。バレたようで、改めまして、姫様の影でっす!」

そんな恐ろしげな兄様に、ハヤテは軽ーくに挨拶して、また私に懲りずに抱きつこうとし、魔法で弾かれる。

いや、図太いな。

兄様のこのオーラを無視できるなんて、ハヤテって本当にある意味凄いかも。

は!これがセイラン家の力か?


なんて私が頭の中でハヤテに感心してる間に

「ハヤテ、ばか、ちょっと下がれって。アリスから離れろよ」

カイが焦って、ハヤテを遠ざけようとする。

「やーだー。俺は姫様の影だから常に側にいるんだもん。」

当然というか何というか、カイの命令ではハヤテは動かない。

はあ、仕方ない。

「ハヤテ、ややこしくなるから離れて。」

「はい!」

私の一言で、ハヤテはカイの横に膝をつく。

よし、今日も私の命令だけはちゃんと聞くようね。


「とりあえず色々と問題はあるようだけど、ハヤテはセイラン家だから、護衛としての力は申し分がない。だから、学校にハヤテを連れていきなさい。」

そんな様子を見たセイ兄様はキッパリとそう告げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ