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1 もしかして

2023・8・9 編集しました


初投稿。不定期更新です。

いろんな矛盾や拙い文章は、無視していただければ幸いです。

「もしかしてだけど、兄様って、ヤンデレってやつなんじゃないの?」


午後の家庭教師による授業が終わった昼下がり。

自室で兄とお茶をしながら、恋愛小説を読んでいた私は怖い事実に気がついてしまった。


「ヤンデレって何?」

私の膝を枕にしながら、まったりと同じく読書をしていた兄のカイが、本から目を離して聞く。

ちなみにカイは、兄といえど誕生月が離れているだけの同じ15歳だ。

私にとっては兄ではなく、弟のような親友のような1番身近な家族。

今問題となっている二つ上のお兄様、セイ兄様とは違う。


「この本に出てくるヒロインに想いを寄せる王子様が、ちょっと特殊で。なんて言うかとても恋が重いんだけど。ただ重いだけじゃなく度を越してると言うか、もはや病的と言うか‥ヤバすぎると言うか。なんかそういう人を指していう言葉らしいよ。」

カイが体を起こして、私が読んでいる本を覗く。

「これシーナに借りた小説だっけ?『ヤンデレ王子様の執着が酷すぎます!』って、すげータイトルだな!面白いの?」


そう。今読んでいるのは侍女のシーナに借りた王都の女子に大人気の恋愛小説『ヤンデレ王子様の執着が酷すぎます!』だ。

街で可愛いと評判のパン屋の一人娘のレナちゃんが、視察中の王子様と偶然出会い、一目惚れされてしまう。

王子様は美形で優秀。よく街に視察に出向き、気さくなこともあり、城下の民からも慕われている。

ただレナちゃんは、身分の違いなどで恋愛対象には考えられず、求婚を受けるも断ってしまい、王子も初恋を拗らせて、執着を強めていくというラブストーリー。


私は、中のページをパラパラめくりながら、

「この挿絵を描いている人が、最近王都で大人気の画家で、出てくるキャラクターがみんな美男美女だからとっても人気があるんだって!」と、挿絵をカイに見せる。

「ふーん。でもこの絵のヒロインよりも、アリスの方が何倍も可愛いけどな」

カイは、私の頭をポンポン撫でながら、安定のシスコンを発揮する。

「ありがとう。って今はそこじゃなくて、性格の問題!この王子様の。」

「具体的に何がヤバいわけ?」

「とにかくヒロインと結ばれる為なら手段を選ばない。王子には幼馴染の婚約者がいたのに、主人公と結婚するために裏で手を回して、幼馴染の家を没落させて婚約者候補から外したり。」

いや、ひどいな王子。幼馴染なんにも悪くないのに。

もぐ。

カイが、いきなり口にチョコレートを突っ込んでくるから、溶かしながら説明する。

「ああ。そういやうちの兄様も、北の国の姫と婚約させられたのが嫌で、自分の影たちに、国際的にバレたらヤバい北の国の王様の取引を探らせて脅して、婚約破棄させてたよな」

ん?初めて聞いたな、その話。

確かになぜか急に婚約破棄になって、落ち込んでるかなと思って兄様に理由を聞いたら

「アリスは知らなくていいことだよ。それにこれでアリスと結婚できるよね?」と

冗談かシスコンか分からないセリフを放たれて、兄様の眩しさに圧倒されて、今の今まで有耶無耶になっていたような・・。

しかしそうだとすると、小説より兄様の方がスケールがちょっ、ちょっと大きいようなしないでもない。


「あと、ヒロインにとにかく甘いの。ヒロインが食べたいと言った、行列のできるケーキ屋さんの店ごと買い占めたり。ヒロインが泊りたいと言った何年待ちかわからない、有名キャラクターのいるテーマパークのオフィシャルホテルのスイートルームに似せた部屋を自分の城に作ったり…」

「ああ。そういえば、アリス専属のパティシエって、アリスが一度食べて気に入った城下の行列ができるカフェのパティシエを、わざわざ店を閉めさせて雇ったよな?兄様が破格の給金ちらつかせて…。」

あーそうだったそうだった。

あまりの美味しさに、これ食べに城下に通いたいって兄様に言ったら

「危ないから、そんなに頻繁には行けないよ。」ってやんわり諦めさせられて、まあそうだよね、流石にそんなに城下に行くのは無理だよねって納得した次の日のティータイム。

いきなり例のカフェのパティシエが現れて、本当にびっくりしたのを覚えてる。

どうやって呼んだの?って聞いたら、例によって「アリスは知らなくていいことだよ。それよりもケーキを食べよう。」って兄様があーんして食べさせてくれたから、まあいいや、ケーキ美味しいしって、有耶無耶になってたんだった。

しかしそうだとすると、やっぱり兄様の方が上回ってる?!

うーんと思案する私の口にもう一個チョコを放り込んで、カイが続ける。


「でも、兄様のプレゼントって言えば、あれの方が凄くなかった?2年前の兄様からのアリスへの誕生日プレゼント!行きたがってたテーマパークと同じやつを城の裏に作るとか、流石に俺もびっくりしたわー。まああれは、父様を説得しないと無理だったし、父様もアリスが喜ぶならってノリノリで出資して、裏の森の開拓許可出してってのがあったから、兄様だけの力じゃなかったけど。」

そうそう、あれは本当にびっくりした!

ずっと城の後ろの森で何かしてるなと思ってたんだけど、目眩しの魔法がかかって見えなかったから、

砦か何か国家機密に関わるものでも作っているのかなと思ってたのよね。

ところが、誕生日当日の朝、ニコニコしたセイ兄様に手を引かれて、でっかい花火が上がったと同時に、目眩しの魔法が解かれて、あのテーマパークが現れたんだもん!

なんでも兄様は一年以上前から計画を立てて、国中の優秀な魔導士達に、誕生日に間に合うように作らせたって言うから、唖然としたわ。

いくらコピーテーマパークとはいえ、本家よりアトラクションやショー、パレードが凝っていて、兄様の優秀な頭脳が遺憾無く発揮されているのよね。

私専用と言われたけど、あんなすごいの持て余すだけだし、私が遊びたい時だけ事前に貸切にして、あとは一般公開するようにしたら、連日行列が絶えなくて、もはや本家を凌ぐ人気なんじゃないかと噂されてるし。

莫大な建設費用が掛かってるから、流石に国民からブーイングがくるんじゃあと心配したけど、相乗効果で王都も観光で潤って、関連事業やら何やらで、王都のみんなも収入が安定したらしい。

兄様は、私の優しさで一般開放したからこそだって笑っていたけど、優しさとは?

そして税金をやばい方向に使い過ぎでは?


「あと、ヒロインへの独占欲は凄まじいのよ。異性は、話しかけるどころか見つめるだけで、王子の側近に排除されるし、ヒロインの親友でさえも、自分よりも心の距離が近いって嫌がって、手を回して遠いところに引越しさせられるの。」

流石にカイも何かに気付きだしてきたらしく、ごくごくコーヒーを飲みながら、斜め上を見て、何かを思い出すように絞り出した。

「ああー…。アリスの周りは、変な男が寄ってこないように徹底されてるからなあ。縁談とかも兄様が握り潰してるし。城に来る客人リストも毎日兄様のチェックが入ってるしな。ま、それは俺や父様もやってるけど。でも流石に女の子の友達は、制限してなくない?」

なんか今怖い情報足されなかった?!

「制限はされていないけど、そもそも友達が出来る気がしないというか…。学校も初等部は途中まで通えたけど、兄様が中等部に上がる時に、家庭教師の方が良いって兄様がパパに言って、兄様だけじゃなく、私やカイたちも城内で学習になったし。お茶会や夜会はもちろんのこと、外交でさえも出なくて良いって、パパからも言われるし。交流があるのって、専属侍女のシーナや、魔導師のレノア先生くらいなんだけど。」


シーナは、私がお城で暮らし始めた5歳の時からついてくれている専属侍女だ。

私より10歳年が離れている頼れるお姉さんな位置付けで、もう家族同然だと思っている。

レノア先生は、王国魔導士団の副団長。シーナの一つ上のお姉さんで、一緒に王城の魔導士団寮に住んでいる。

王都の警備をしながら、カイと私の魔法の練習に付き合ってくれている。


「確かにな。まあよくわかんないけど、そのヤンデレってやつまでは行かないんじゃない?シスコンがちょっと酷いくらい。そもそも言い出したら、うちの家族全員アリスにデレッデレだし。」

カイは、ぎゅーと私に抱きつく。

確かにカイもかなりのシスコンだと思う。

そしてカイの言う通り、私が言うのもなんだけど、家族全員私を溺愛している。

それはもうどろっどろに。

 


そう。

全ては私が王妃様と初めてこの城で出会った。

あの瞬間から始まったのだ。

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