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第7話 誰にも言わないで

 私が帰って来た姿を見て多くの使用人たちが驚いた様子で駆け寄って来た。


「エイミー様!何故戻って来られたのですか?!」

「今日はアルト様との婚約式ではありませんか」

「まさかもう終わったのですか?」

「旦那様と奥様はどちらですか?」


その場にいた全員が矢継ぎ早に質問してきた。


「皆待って、落ち着いて頂戴。実はね…婚約式を抜け出してしまったのよ。何だか具合が悪くて…」


「それは大変です!すぐにお休みにならないと!」

「言われて見れば確かにお顔の色が優れませんね」


使用人たちが心配そうな顔で声を掛けて来る。うん、確かに顔色は悪いかもしれない。何しろあんな大それた嘘をついて、アルトから逃げてしまったのだから。もし私の仮病がばれた時の事を考えると怖くなってくる。


「それじゃ私は部屋で休んでいるから…。もし万一、そんな事は恐らく無いとは思うけれども…アルト様が私を訪ねにいらしたらお帰りになって貰う様に伝えてくれる?具合が悪いので、休ませて下さいと話していたと言ってくれればいいから」


「はい、かしこまりました」


一番年長者の男性使用人が返事をした。


「そう、ありがとう。それじゃ部屋に戻って休むわ」


するとアネッサが言った。


「お部屋までお供致します」


「ありがとう…アネッサ」


そして私はアネッサを連れて部屋へと戻った―。




****


 私の部屋はこの屋敷の2階、南向きで日差しが良く差し込む部屋だった。室内は白と淡いピンクを基調としたインテリアでまとめられた落ち付いた雰囲気の漂う部屋だった。うん、やっぱり自分の部屋が一番落ち着く。


「ふぅ…」


自室のカウチソファに横たわると、私はアネッサに声を掛けた。


「ねぇ…アネッサ。今からする話…誰にも言わないと約束してくれる?」


「ええ。勿論です。エイミー様が誰にも言わないで欲しいと仰るなら墓場まで持っていきます」


アネッサは大まじめに返事をする。


「何も墓場まで持っていく事は無いわ。ただ。お父様にもお母さまにも話せない事なの。他でもない、貴女だからこそできる話なのよ?いい?」


「は、はい。わかりました」


真剣な顔で頷くアネッサに言った。


「実はね…私、婚約式に出たくなくて…それで仮病を使って帰ってきてしまったのよ」


「え?そうなのですか?あれほどまでにアルト様との婚約式待ち望んでいらしたのに?」


「ええ…待ち望んでいたのは本当よ。だけど…彼が別の女性と浮気している場面を見てしまって…その時、アルトが女性に話していたのよ。今日の婚約式で私との婚約破棄を発表するって…」


言いながら、再び私の目に大粒の涙が浮かんだ―。


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