第21話 素敵な誘い
「す、すみませ〜んっ！！」
チビな私は必死になって人混みで混雑している注文カウンターへと近付き、ようやく注文口へと到着した。するとコック服を着た男性店員さんが私を見て目を丸くした。
「おや？お嬢ちゃん。どうしてこんなところに来ているんだい？ひょっとして初等部から迷子になってここへ来てしまったのかい？」
「しょ…？初等部ですって？！ち、違いますっ！私はここのれっきとした学生です！なんなら学生証をお見せしましょうかっ？！」
首から下げていた学生証を掴んで、グイッと男性店員さんに突き出した。
「あっ！ほ、本当だ…！どうもすみませんっ！では何になさいますか？」
途端に頭を下げて謝って来た。
「それじゃぁ、Aランチ下さい」
「はい、Aランチですね！」
店員さんは素早く後ろを振り向くと、手際よく厨房の人たちからスープやパン、サラダ等をトレーで受け取っていく。
「はい、お待ちどう様でしたぁっ！」
店員さんが差し出したトレーの上には湯気の立つスープにサラダ、ホットサンドにグラスに入ったカフェオレが乗っている。
うわぁ…重そう…。
「あ、ありがとうございます…」
「大丈夫ですか？持てますか？」
店員さんが心配そうに尋ねてくる。
「は、はい。持ちますっ！」
店員さんからトレーを受け取ると、途端に両腕にズシッとトレーの重みがのしかかってくる。
「うっ！」
重くて思わず呻く私。
「気をつけてお持ち下さいね〜」
「は、はい…」
心配そうな店員さんの声に見送られ、私は何とか人にぶつからないように慎重にテーブル席に運んでいく。
そう言えばアルトはいつも私の為に料理を運んでくれていたっけ…。
アルトから離れて、これまで自分がどれだけ彼に甘えていたかを痛切に感じる。
そうだ、アルトに捨てられる可能性のほうが圧倒的に高いのだから、なるべくこれからは自立した女性を目指さなければ…。
重いトレーを持ち、ふらつきながら歩いているとテーブル席に向かって歩いていると突然背後から声を掛けられた。
「まぁ！エイミーさんっ！大丈夫ですかっ？！」
振り向くと大勢の学生たちに紛れて立っていたのはジュリアさんとリリーさんだった。
「あ、先程はどうも…」
当たり障りのない挨拶をすると、リリーさんが言った。
「エイミーさんに、そんな重いトレーを持つなんて無理ですよ。私が持ってあげますので、よろしければ一緒のテーブルで食べませんか？」
「えっ？！いいんですかっ？！」
何て素敵なお誘いなのだろう。まだ席も決まっていない状態で、適当に空いている席を探して一人ぼっちで食事を取ろうと思っていただけに、このお誘いはまさに願ったり叶ったりだった。
「誘って頂けて嬉しいですっ！」
改めて2人に頭を下げた。すると…。
「か、可愛い…」
「エイミーさん…連れて帰りたいわ…」
何やらジュリアさんが物騒な台詞を口にしているけれども、そこは聞こえないふりをする。
「本当にありがとうございます。是非、昼食をご一緒させて下さい！」
「ええ、勿論です」
「此方こそご一緒出来て嬉しいです。さ、まずは私達のテーブル席に行きましょう」
そして私はリリーさんとジュリアさんに連れらて彼女たちの席へと向かった。
勿論私の食事のトレーをリリーさんが運んでくれたのは言うまでも無かったー。
