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第13話 友人ジャスティン

「あぁ…気が重いわ…」


結局、私はアカデミーに登校してきた。今日欠席してしまえば絶対にアルトが放課後我が家にやって来て、愛しいビクトリアさんの為に「婚約破棄」宣言を告げてくる気がしたからだ。そうなれば私は拒否出来る自信が無い。かと言って受け入れでもしようものなら私はトビーに酷い目に遭わされそうな気がする。そう…今朝見た夢のように。


「ウウ…そ、それだけは絶対にいやよ…」


両肩を抱きしめ、ブルリと身震いすると周囲に気を配りながら私は本日第1時限目の講義が開かれる教室を目指した―。




「…」


 教室の入口で中を覗き込み、アルトがどこに座っているか探してみると、案の定いつもと同じ窓際の前から3番目の席に着席している姿が目に入った。ここで従来通りなら私は迷わずアルトの所へ行き、「おはようございます、アルト様」と笑顔で挨拶し、そのまま彼の隣の席に座るのだが…それは昨日までの私。

今日からは出来るだけアルトと距離を取り、彼に婚約破棄を告げさせる機会を与えない…。

それが本日、馬車の中で考えた私のとっておきの秘策とも言えない秘策だった。


そ、それじゃ…今日はここに座ることにしましょう…。


私は廊下側の一番後ろの席に着席すると、教科書やノート、筆記具を出していく。


すると…。


「あれ?珍しいね。エイミーがアルトの隣に座らないなんて」


突然話しかけられて、顔を上げるとアルトの親友のジャスティンが立っていた。彼もアルトと同じ伯爵家だ。


「あ、おはようございます、ジャスティン様」


「うん、おはよう。エイミーは相変わらず小さくて可愛いね」


言いながらジャスティンは私の頭を撫でて来る。


「うう…また、そうやってジャスティン様は私の事を子供扱いして…。これでも私は19歳、もう大人なんですよ?」


「そんなの当然知ってる。同じ学年なんだから。それで?もう大人のエイミーはこんな後ろの席で何をしているんだ?ただでさえ背が小さいんだから、こんな後ろの席だと何も見えないんじゃないか?」


「失礼ですね。階段教室になっているのですから見えるに決まっているじゃありませんか」


頬を膨らませて、抗議する。


「アハハハ…だから、そう言うところが子供なんだよな~」


おかしくてたまらないと言わんばかりにジャスティンはお腹を抱えて笑う。すると周囲の学生達が私達に注目する。


いけない!このままではアルトに私の存在が気付かれてしまう!


「もうお願いですから静かにして下さい。私の事はどうか構わないで下さい。先程の質問ですが…何故アルト様の隣に座らないのかは、ある事情で暫く距離を置こうとしているからです。でも後生です。どうかこの事はアルト様には絶対に内緒にして下さいね?もし約束を破ったら、私はもう一生ジャスティン様とは口を聞きませんから。いいですか?」


「ふ~ん…そうなのか。何があってアルトと距離を置こうとしているか知らないけど、エイミーが口を聞いてくれなくなるのは困るからなぁ…」


ちっとも困った素振りを見せないジャスティン様。


「と、とにかく絶対、ぜーったいに言っては駄目ですからねっ!」


「分ったよ。それじゃ俺が代わりにアルトの隣に行って座ってくるよ。それならあいつもエイミーの事に気付かないんじゃないか?」


「ええ。それでお願いします」


「ああ、じゃあな」


そしてジャスティンは私に手を振ると、アルトの席へと向かった―。



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