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第1話 私と彼の事情

 それは初夏の太陽が眩しい季節―。



恋人同士が人目を偲んで愛を語り合っていた。



「僕が心から愛しているのはビクトリア…君だけだよ?」


アルトがアッシュブロンドヘアの美しい女性を抱きしめ、愛を囁いている。彼女は私とアルトが通っている学院のマドンナのビクトリアさんだ。


「アルト様…私も貴方を愛しています」


「すまない、ビクトリア。君を悲しませてしまって…。でも安心してくれ。僕は今日婚約式でエイミーとの婚約破棄を発表するよ。世間から非難は浴びるかもしれないけれど大丈夫だ。僕の方が爵位が上だからカイゼル家に文句は言わせないよ。両親だって説得してみせる。だから僕を信じてくれるかい?」


アルトは愛し気にビクトリアさんの髪の毛を撫でた。


「ええ、アルト様。信じて待っております。誰も愛する私達を引き離すことなど出来ません」


そして2人は固く抱き合い、熱烈なキスを始めた―。




「そ、そんな…嘘よね…?アルト…」


私は目に涙を浮かべながら、2人の様子を茂みの中から隠れて見ていた。すると、すぐ側で怒りの混ざった男性の声が聞こえてきた。


「くっそ〜…ビクトリア…。俺というものがありながら、よりにもよって婚約者がいる男と恋仲になるなんて…!」


「え?」


驚いて声の聞こえた方角を見ると、そこにいたのはつり目だけどもなかなかハンサムな青みがかった黒髪の男性がアルトとビクトリアの様子を嫉妬にまみれた目で見つめていた。


「あ、あの…」


恐る恐る声をかけると、男性はこちらを振り向き、凄んできた。


「何だよ?お前。覗き見なんて趣味の悪い女だな?」


「!」


その声に思わず言葉を無くす。


それが、私と彼…トビー・ジェラルドとの出会いだった―。




****


今を遡ること10分程前―


 今日は私、エイミー・カイゼルとアルト・クライスの婚約式の日だった。

婚約式の会場に選ばれたのは湖のほとりにあるクライス家の別荘で、ガーデニング形式で行われることになっていた。ガーデン会場には既に大勢の来賓客たちがで溢れかえっている。


 私はこの日の為に新調した水色のドレスに身を包み、婚約者のアルトをパーティー会場の入り口で今か今かと待っているのに、少しも彼は現れない。


「どうしたのかしら…アルト…。後1時間で婚約式が始まるのに…」


不安な気持ちで1人、輪の中心から外れて待っていると、まるで人目を避けるようにアルトが湖へ向かって歩いていく姿が目に入った。


「アルト?何故あんな所に…?後1時間で婚約式が始まるのに…?」


湖に何かあるのだろうか?もうあまり時間が無いのにアルトは一体何所へ行くと言うのだろう。

私も急いで後を追うと、あるとは湖のほとりにある1本の巨木の側で立ち止まった。


「ビクトリア…そこにいるのだろう?」


え…?ビクトリア…?


「アルト様…」


すると巨木の陰からビクトリア・マーロウ…私たちが通う学院のマドンナ的存在の女性が姿を現したのだった―。


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