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ある女性サイコパスの半生  作者: 三苫 水雲 (みとまもずく)
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〜第二章〜 生まれながらにしてサイコパスだったある女性の半生を記したノンフィクション物語

都内にあるホテルニューオータニでは、平日だと言うのに多くの上流な大人たちが行き交っていた。1階にあるカフェラウンジでは、老夫婦がゆったりとした時間を過ごしていたり、スーツをキチっと着たビジネスマンが商談を行っていたりしていた。


そんな中、ニューオータニの名物である立派な日本庭園が見える窓際の席に、少し場違いな少女が1人、たっぷりのミルクとシュガーを入れたコーヒーを口に含みながら、その庭園を神妙な面持ちで眺めていた。


「はじめまして、待ったかな?」


親子くらい歳が離れた男性がそう言いながら、少女の真向かいの席に座った。


「あっ、いや、、、全然。はじめまして、、、」


18歳になったばかりのエイミーは、ぎこちない笑顔を浮かべ、そう言った。


〜〜〜〜〜〜




特に目立つことなく大人しく過ごしていたエイミーは、いつの間にか18歳になろうとしていた。


中学、高校と私立の女子校に通った。成績は常にトップクラスだった。勉強を頑張っているわけではなかったが、授業を聞いているだけで高得点がとれた。


私立の女子校ということもあって、周りはお嬢様だらけ。周りから見たら、きっと自分もそう見えているのだろう。


高校3年生になったエイミーは、自分の誕生日が来ることが待ち遠しかった。


たしかに、自分の誕生日というものは待ち遠しいものだ。年に一回の誕生日、家族や友人から祝われる特別な日。だがエイミーは、そういう理由で待ち遠しくなっているわけではなかった。


今までの誕生日に、興味はそれほどなかった。どうでもいいとさえ、思っていた。


ただ、高校3年生の時は違った。早く来ないかなーと、心から思っていた。


「18歳」


この18歳というのが、エイミーにとって重要だった。


毎年行われる、家族での誕生日会。ついに18歳になったエイミーを、両親は温かく祝った。


エイミーは嬉しかった。祝われたことではなく、18歳になったという事実に対して、嬉しく思った。


「これで、いろいろと行動が出来る」


18歳になると、出来ることがたくさんある。親の許可の有無に関わらずクレジットカードやパスポートが作れ、ローンも組める。アルバイトや仕事も自由に出来るし、運転免許も取れる。深夜に徘徊してても、ある程度は大丈夫だろう。


エイミーは18歳になり、法令などの呪縛から、解き放たれた。


たしかに、普通の人も18歳になると多少の高揚感が生まれることだろう。車を運転したり、夜遊びをしたり。


しかし、エイミーの行動は、予想を超えてきた。そして、理解しにくいものだった。


エイミーは、女子校で育った。そのため、同年代の男性とは、ほぼ会話をしたことがなかった。男性と話すのは、父か先生、あとは会話とは呼べない、コンビニの店員などとのコミュニケーションのみだった。


高校生ともなると、将来子供を産む時などに備えてか、保健の授業で「性」について学ぶ。


初めて聞く、男性と女性の、体の交わり。エイミーは、「性」について、次第に興味を持つようになった。


普通とは、少し違う興味だった。普通の女子高生などは、好きになったり、告白をされたりして恋愛をし、「初めては大好きな彼と」といった感じで、処女を失うことだろう。


しかしエイミーは違った。エイミーは、


「わたしの処女は、いくらで売れるんだろう?」


と考えていた。


恋愛して処女を失うなんて勿体ない。恋愛をして処女を失うということは「無料」ということだ。そんなことは、あり得ない。果たして自分は、いくらで売れるのだろう。どのくらいの値がつくのだろう。それを知りたかった。恋愛などには、一切興味がなかった。


18歳の誕生日を迎えたエイミーは、インターネットでいろいろと調べ、18歳になる前から計画していたことを、実行に移すことになる。




高級交際倶楽部といったニュアンスのサイトがあった。今で言うマッチングアプリのようなサービスをしているものだ。


男性は高額な会費を支払い、そのサイトで出会った若い女性とご飯を食べたりデートをしたりして、お礼にその女性にお金を支払う。表向きはそこまでだが、もちろんベッドの上でのこともあるだろう。そこにさらに多額のお金を支払い、夜の営みを行う。女性は一回のデートや性行為で、お小遣いとは呼べないとても高額のお金を受け取れる。法律的にグレーゾーンだが、男性も女性も、それを理解して会っていることがほとんどだ。


つまり、「パパ活」というものだ。


18歳になると、学校にさえバレなければある程度は法令的に問題はなく、学校にバレたところで厳重注意くらいで済まされるし、おそらくバレるリスクはほぼないだろう。


エイミーはそのサイトに登録し、そのサイトを運営している会社に面接へ行く。


登録している男性は高額な会費を支払っている。しかし女性は無料で登録する。つまり、ある程度レベルの高い女性のみを集めないといけないため、女性には面接があるのだろう。


面接室に入ったエイミーを見て、面接官は少し驚いた。明らかに幼いその女性が、パパ活をしにやってきたのだ。


エイミーは、容姿端麗で可愛く、小柄な見た目だった。身長は低いわけではないが、とてつもなく小さな顔と細い身体のせいで、小さく見えた。パパ活などに登録している「ロリコン」好きな男性には、うってつけだろう。


エイミーは、雑談も早々に「処女」ということを打ち明けた。


面接官は、多少驚いた様子だったが、疑うことなく話を進めた。おそらく、その佇まいや喋り方などで「本当のこと」だろうと考えた。


エイミーは、「本物の18歳の処女」として、リストに掲載された。


エイミーは、行為自体がしたいとか、お金が欲しいとか、そんなことは考えてなかった。一体自分がいくらで、どのくらい高い値がつくのか、ワクワクしていた。


そして、男という生き物は、どんなことを考えて生きているのだろうと、興味があった。


そんなエイミーの元には、多くの男性からメッセージが届いた。


届いたメッセージの中から、日程が合う人やお金持ちそうな人を選んで、実際に会う約束をし、高級ホテルのカフェなどで会った。


最初の何人かは、ただコーヒーを飲むだけで、それだけで終わった。男性とはどんな生き物なのか知らないエイミーは、どんな会話をすればいいかわからず、自分からなかなか「行為」の話は出来なかった。男性も男性で口説き下手なのか、ハッキリとした誘いがなく、「いくらか知りたいだけ」のエイミーにとっては、退屈だった。


そんなある日、内科医をしている小林という男からメッセージが届き、会うことになった。


小林は40代くらいの男で、今まで会った男性とは違い、ハッキリとした物言いだった。


待ち合わせ場所は、最初から高級ホテルの一室。


部屋に入ると小林はすぐにベッドに腰掛け、無駄な世間話はあまりせずに、「君とこういうことがしたい。こんな風にしたい」とエイミーに説明した。


小林が言った行為自体は、今思うと、とてもノーマルなものだった。


しかしエイミーは、ある程度興味があったのだが、具体的には想像出来ていなかった。


そのため、小林が言うその内容に心底驚き、拒絶した。いざとなったら、身体が動かなかった。男性というものを、全く理解出来ていなかった。


「すみません、やっぱり無理です」


エイミーは荷物を取り、急いで部屋を出た。小林は、不思議そうな顔をしながらも、優しく見送った。


エイミーは経験がなかったため、男性に触られたりすることを拒絶した。男性というものが、わからなかった。


そもそもだが、エイミーに聞いた。


なぜそのような行動に出たのか。なぜ自分を売り出したのか。


エイミーは答えた。「性行為」は、早くクリアしておかないといけないミッションのようなもの。これを済ませておかないと、手段として使えない、利用出来ない、と考えていた。


つまり、エイミーにとって「武器」のひとつなのだ。使い方がわからないと使えない。いざとなった時に困る。なるべく早く使い方を熟知しておきたい。


そして、初めての自分はいくらで売れるのか、知りたかった。


パパ活のサイトでは失敗したが、エイミーは諦めずに、またすぐに、行動に出た。




エイミーは、男性に触られることが、嫌だなと思った。そう思いながら、男性を知れる機会はないだろうか。というか、まずは男性に慣れないといけない。そう感じていた。


内科医の小林の部屋を出た日から1週間も経たずに、インターネットで「女王様になれば男性に触れられずにそういった体験が出来る」ということを知った。


18歳の高校生が、何も経験のない女子高生が、女王様に目をつけた。


すぐさまSMサイトに登録した。パパ活の時と同様に、すぐさまMな男性からメッセージが多数届き、とある男性と会った。


これは、処女を捨てるとかそういうことではなく、男性を知るためのもの。慣れるためのもの。世間話も早々に、値段の確認をし、男性がどのような行為をしたいのか、どのようにされたいのか、どのようにしてほしいのかを、エイミーに説いた。


エイミーは、それを聞いているうちに、「それはそれで無理だな」と思った。


いきなりアブノーマルすぎる男性に当たってしまった。何を言っているのか、理解出来なかった。


エイミーは、ホテルに入らずに断りを入れて、帰路についた。


エイミーは、少し焦っていた。なぜうまくいかないのだろうと。


しかし、普通の人からすると、それはそうだろうと思う。初心者がいきなりアブノーマルな世界は難しいし、引く要素が大きい。


エイミーは焦っていてもしょうがないと感じ、すぐに「Mな男性を相手にする風俗」に面接へ行くが、さすがに全然経験のない、しかも女子高生を働かせるところはなかった。


エイミーは、もうここは割り切ってパパ活に戻り、とにかく値段を知ろう。そう思った。


パパ活を改めてするため、最初とは別のサイトで登録し直し、面接へ行った。


本物の処女で18歳というのを武器にし、連絡を待った。


たくさんのメッセージが届き、その中から、なんとなく会った男性が「月に50万」で定期的に遊びたいと言ってきた。そして、すぐに性行為はしない、ということだった。


50万。エイミーは、その値段をネットで調べた。バカ高くはないけども、安くはない。そして、いきなりそんな行為はしないということも、安心出来た。エイミーは納得し、その男性と定期的に会い、そして、1ヶ月後、ついに処女を捨てた。


嬉しくとも、悲しくともない。ただ、値段を知れて、行為を「経験」出来た。エイミーは、ミッションをクリアしたのだ。ミッションクリアに関しては、充実感があった。


サイコパスは男性に多く見られる傾向にありますが、女性もマイノリティではありますが、もちろん存在します。


女性サイコパスの特徴として、自分をか弱くみせて油断させたり、容姿や身体で魅了して取り込み、上手く「利用」するということがわかっています。


エイミーにとっての今回の話も「武器として使うためのミッション、練習」だったのだろう。


普通の少女の恋愛とは程遠い、初めての夜だった。


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