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第三話

 

「学園には時間通りに着いてたから、たぶん初日に欠席した奴ってレッテルはないだろう。先生が何かしらフォローしてくれているはず。シナリオ通りなら先生は生徒思いの軽井沢先生だし、うん大丈夫だ」


 俺は保健室を出てから本来教室で受け取る予定だった教科書を教務課の人達から受け取った後ベンチに座り学園生活が上手くいくかを心配していた。

 入学してすぐにグループが決まる訳ではないが、やはりスタートダッシュは大事。

 入学式初日一人くらい話せる人間を作っておきたかった。


「「はぁ…」」


 思わず吐いた溜息が誰かの溜息と重なる。

 俺の不安から来たものとは違い、疲労からくる溜息のように感じられた。


「お疲れみたいですね」


と、俺が声を掛けると


「……はい。慣れないことをしたせいでかなり精神的にまいってます」


後ろから女性の声が返ってきた。


「あぁ、分かります。慣れないことをするのって疲れますよね。緊張しちゃって変に力んじゃうっていうか」


「そうですよね!笑顔でって言われてもあんなに大勢に見られたら緊張しちゃって出来るはずないですよね?」


「アイドルや芸能人だったら出来るかもしれませんが…普通の人は大勢の前で笑顔とか無理ですよそれ。あっ、ポーション飲みます?俺が作った奴なんですけどちょっとは楽になるかもしれません」


 そう言って、俺はポッケから体力回復のポーションを取り出し、後ろの人物に渡すべく振り向いた。


(なっ!何でこんなところに生徒会長兼ヒロインの 白蝶はくちょう 上羽あげはが!)


 濡羽色の長く艶やかな髪、人形のような端正な顔立ちにパッチリとした二重で切れ長の目。香澄先生は可愛い系の顔をしているのに対して、白蝶先輩は美人で綺麗な顔をしている。

 スタイルはスラットしていて女性にしては背が高く170の俺よりも少しだけ高く戦闘職であるにも関わらず足がとてつもなく細い。胸は香澄先生のスイカサイズよりは小さいがメロンサイズと学生にしてはけしからん発育をしてらっしゃる。


「綺麗なポーションです。とても丁寧に作業されたのでしょうね、ここまで綺麗なポーションは初めて見たかもしれません。こんな素晴らしい物を私なんかには勿体ない」

  

「いや、これまだまだ予備が沢山あるんで気にしなくて良いですよ。それにこれ明後日までに使わないとただの水になっちゃうんで先輩が飲まなかったら廃棄ですから気にしないで飲んでください」


「失礼。…毒無し、効果 体力回復高、品質 高、使用期限二日。確かに二日後廃棄というのは本当のようですね。確認なんですが使用期限が二日のポーションは後いくつありますか?」


「20本くらいです。ほら使いきれないくらいあるでしょう。だから一本くらい渡しても問題ありません」


 手持ちのポーションを全てポッケから取り出しベンチの上に置くと、先輩は鑑定を発動して全てを見ていき、最後のポーションを鑑定し終えるとふっ、と微笑んだ。


「確かに貴方の言う通りこれらのポーションは明後日には廃棄するみたいですね。では、その好意に甘えて一本頂きます」


 先輩は俺が最初に渡したポーションの蓋を開け、コクコクと可愛らしく喉を鳴らしながらポーションを飲んでいく。


「…凄い。効果が高いのは分かっていましたが飲んだ瞬間疲れが吹き飛びました。それに凄く飲みやすいです。薬草の苦味が全くしないどころか果実水のように甘い。こんなポーションは初めて飲みました」


 目を大きき見開き、ポーションの味を絶賛する先輩。


「はは、先輩みたいな美人さんにそんなに褒めて頂けると嬉しいです。何年も苦労した甲斐がありました」


 俺は軽い口調で何年も研究したと言っているが、本当これ作るのには苦労した。

 瞬間回復はじいちゃんが作り方を知ってたから、それを教わって出来たけど、それをしたら味が激苦だった。

 こんなもの誰が飲むんだと思ったが、戦闘系の友人達はそれでも飲んで少しずつ効果がでるポーションより、即効果が出るポーションの方が良いと言って、不味いポーションを顔を顰めながら飲んでいた。

 それをどうにかしようと思い、俺はこの鑑定眼を使いながら近くにある山や商店街を歩き回り、三年という年月をかけてようやくポーションの苦味を消すことの出来るザンボの実を山の中で見つけたのだ。

 あの時の、達成感は言葉じゃ言い表せない。

 見つけた瞬間眼帯を付けることも忘れ暫く間走り回った。

 もちろん、その後気分が悪くなって吐いたけど。


「あの、このポーション私に売ってくれませんか?」



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