第二話
「知らない天井だ……」
目が覚めると視界に映るのは、白い天井に白いカーテン。
これを見て俺はここが何処なのかを察した。
「あっ、起きたみたいね!結構長い間寝てたから心配してたんだぞ」
シャっ!とカーテンが開き紫色の髪肩より短いくらいまでの伸ばし横髪は巻かれている童顔の美女が入ってきた。
服装茶色のセーターとジーパンの上に白衣を着ており、とつてもない胸部装甲を持っている。
彼女が少し動くだけでたゆんたゆんと揺れている様は圧巻である。
そんな凶器を持っているにも関わらず、彼女の腰は俺よりも腰が細く尻がでかい。
まさに、男の夢を詰め込んだ理想の保健室の先生。
この先生と俺は摩耶同様に知っている。
(この人は!ヒロインの一人である 㮈村 香澄先生。俺が何周もエンディングを見たヒロインのうちの一人だ。うわぁ、揺れる揺れるエロ!)
「どうしたのまだ起きててぼーっとしてるのかな?それとも脳に異常があるのかしら。さっきの少年は戦闘系って聞いたけど君は非戦闘系らしいからありえるわね〜。ちょっとごめんね〜」
そう言って香澄は俺の返事を聞きもせず、俺の手を握り何か呟く。
するとわ俺の身体全体が柔らかな白い光に包まれた。数秒後、身体にあった気だるさや頰にあった微妙な違和感が消えた。
「はい、これで大丈夫。起き上がってみて?」
「はい…うわぁっ、凄。香澄先生の治癒魔法って凄腕だとは知ってましたけど、初級でこんなにも身体の調子が良くなるとは思いませんでした」
まさか、初級の魔法で普段感じている気怠さだけでなく、体の調子まで整えられるとは思っていなかった。
調合していたせいで凝り気味だった肩が羽のように軽い。
「それはよかったわ。ついでにそっちの眼帯をつけている目も治してあげるね」
肩を回しながら治癒魔法の効き目に感心している俺を見て香澄先生は気分を良くしたのか、俺に近づき眼帯を優しく取った。
「あっ…鑑定眼」
「……すいません。返してもらっていいですか?酔いそうです」
突然の出来事で俺は右目を瞑ることが出来ず、保健室にある物全てを鑑定し、凄い勢いで焦点がブレる。
それにより気分が悪くなり俺はすぐに眼帯を返してもらうよう先生に頼む。
「ごめん。すぐに返すね」
「ありがとうございます」
右目を瞑りながら礼を言い眼帯を先生から返してもらい装着。
「その鑑定眼どうしたの?そんなに発達してるの私初めて見たよ」
先生は俺の目が異常なことを知り心配そうに聞いてきた。
「子供の頃にちょっと調子乗って使ってたら、自分の意思で止められなくなったんですよ。だから、こんな目になったって感じです」
「……そうなんだ。うん、決めた。今の私じゃ君のことは治せないけど何とか君がこの学園に居るうちに治すよ」
「いやいや、別にそんなことをわざわざしてもらわなくても大丈夫ですよ。今日は入学式だけで授業は無いから俺ともう一人の生徒しか居ませんでしたけど、明日から戦闘訓練が始まって忙しくなるでしょう?俺は別に今のままで不便することは殆どないですし気にしなくても全然大丈ぶ「ううん、治すよ絶対」いやその「治すから」はいぃぃぃーーーー!!分かりました。よろしくお願いします」
俺が断ろうとしたが、それを香澄先生は有無を言わさず瞬殺。ズイッと真剣な顔で迫ってくる。
それでも何とか断ろうとしたが、俺の胸に先生の大きな胸の感触が当たったところで、息子が反応してしまった。
先生にバレたら幻滅される!
そう思い、俺は即座に白旗を上げた。
ストーリーのシナリオでは、彼女は過去に自分の力不足で何人もの人を死なせてしまったことを、未だに悔やんでいることが分かっている。
だから、目の前で苦しんでいる人が見たら治療せずにはいられない。自分の力で救ってみせるという、聖女のような素晴らしい信念の持ち主だ。
香澄先生はゲーム内最強の治癒魔法の使い手なので、その先生でも治せない鑑定酔いって意外と難病なんだな。
病院の先生はよくあることって言ってたから、そんな重く捉えてなかったけど認識を改めないとやばそうだ。
「うん、それでよろしい。じゃあ、毎週何処か空いているタイミングで私の元を訪ねて。色々やってみるから」
「分かりました。毎週必ず来ます」
(そのおっぱいを見るために。好感度を上げるために必ず来ます)
そう心の中で決意して俺は香澄先生から見送られながら保健室を後にした。