第一話
宜しくお願いします!
「ここ何処だよ?」
そう言ってマギア(携帯魔導通信機)を片手に道端で黄昏れている俺の名前は、金城 蓮。右目に眼帯をつけていること以外は特徴がない普通黒髪黒目の男の子だ。
眼帯を付けている理由は眼帯を付けていないと鑑定酔いをするからだ。
俺の右目は生まれ付き物の値段や材質、品質、人のステータスなどを見ることができる鑑定眼だった。そして俺はそれを転生チートだと勘違いし鑑定眼を使用しまくった。
あっ、言ってなかったけど俺転生者です。
前世は大学生で趣味はラノベ、マンガ、ギャルゲーという典型的なオタクでした。
死亡理由は分からないが不摂生な生活を送っていたので何かしらの病気にかかり死んだのだと思う。
自室にいて視界が突然暗転し気付いたら赤子だったし間違いないだろう。
異世界転生で赤子になったらすることといえばただ一つスタートダッシュだ。目を開けた瞬間目の前に親のステータスが出た瞬間これだ!と思ったね。
調子に乗ってずっと鑑定を使用していた。だが、それがいけなかった。ずっと鑑定眼を使っていたせいで鑑定を止めることが出来なくなったのだ。
そのせいで鑑定眼が異常発達し視界に写るもの全てを鑑定してしまう様になり、目の焦点が合わなくなって酔う鑑定酔い持ちになってしまったって訳ですよ。
調子に乗ってはいけないと目に染みて分かったね。
さて、自分語りはこれくらいにしておいてこの状況から脱する方法を考えなくては。現在俺は絶賛迷子中。私立リスタ学園の入学式に間に合うよう家を出て念のためマギアでマップを表示しながら向かっていたのだが到着したのは住宅街。学園のがの字も見えない場所だった。
マギアは最新の物をリスタ学園への進学が決まった際に買ったものなのでマップに表示されているのが大昔のものとかいうことないはず。
故障しているのかと思い、眼帯を少しだけずらしマギアだけを視界に捉え鑑定する。
マギア アークティス13
耐久値500
状態 正常
品質 高品質
材質
魔導強化ガラス
魔導合金
魔導回路 ノース型
三級魔石
が、結果はご覧の通り故障している訳ではなく正常なようだ。
俺はそれが分かった瞬間やりたくねぇなと思いつつマギアから視線を外し周囲を見渡した。
電柱 (幻)
耐久値0
状態 正常
材質
ハクの霧
家(幻)
耐久値0
状態正常
材質
ハクの霧
家(幻)
耐久値0
状態正常
材質
ハクの霧
大量の情報が表示され、焦点がブレる。
俺は気持ち悪くなるのを何とか堪えていくつかの情報を読み取る。
知りたかったことは知れたので右目を閉じ眼帯を元に戻す。
「魔物の仕業ってことは、向かう途中に学園の生徒の誰かがテイムしている奴に幻影状態に掛けられたのか。ったく、ちゃんと躾とけよ」
俺は名前も知らない奴に愚痴を言いつつ、幻影状態を解除すべくポッケに手を突っ込み一つの青い液体が入っている瓶を取り出した。
これは状態異常回復のポーションで飲むと、麻痺や幻影、毒、などを解除してくれるものでダンジョン探索に必須のアイテムだ。
「突発的なダンジョン発生に巻き込まれた時のために用意しておいたのが役に立つとは」
何事も備えておくことに損はないなと思いつつ瓶の蓋を開けてポーションを飲む。
すると、目の前に広がっていた住宅街が消えと見覚えのある大きな校舎が現れた。
「ぷはっ、想定外のことはあったから集合時間ギリギリに教室に着きそうだな」
入学式早々に遅刻した奴というレッテルを貼られるのを回避できたことに俺は安心し胸を撫で下ろした。
「確かクラス発表は校舎の一階に貼り出されているって書いてた…「うわぁ!遅刻するーー!」」
俺が校舎に向かおうとしたところで後ろからドタバタと大きな足音が聞こえ、後ろを振り向むくと俺と同じ制服に身を包んだ男子がこちらに向かって全力疾走していた。
(俺以外にもまだ居たんだな)
自分以外にもギリギリに来ている奴がいるんだなぁと思いつつ、俺は走ってきている人物を凝視した。
そして近づいてきている男子の顔がはっきり見える距離になって既視感を覚えた。
人懐っこそうな童顔の黒髪の少年。その容姿はどこにでもいるようなありふれたものなのに蓮は自分を抜き去っていく少年を知っているような気がした。
(何でだ?)
理由を探すも思い当たる節がなく俺は歩きながら首を傾げ、その違和感の正体が何のかを考える。
そんな時、上空から声が聞こえた。
「間に合ったーーーーーーーーー!」
この声を聞いた瞬間、蓮は違和感の正体に気づいた。
(さっきの少年は『君は誰が好きですか?私は君が好きです』の主人公 龍本 勇じゃねぇか!ってことは、今上から聞こえた声の主は!最速パンチラヒロインの 摩耶 燈)
摩耶のパンツを見たい!
という純粋な思いからこの時視線を上げた。
だが、そのせいで俺はこれから先沢山の事件に巻き込まれて主人公同様に好かれるなんてこの時は思いもしなかった。
空からもの凄いスピードで降りてくる摩耶。
それを見上げる俺と龍本。
そして、俺達が見たのはゲームのシナリオ通り水色と白の縞々のパンツだった。
「きゃあーーーーーーーーーーー!」
摩耶はシナリオ通り下に人がいることを完全に失念しており見上げる俺たちを見て悲鳴を上げる。
その僅か数秒後、俺の意識は深い闇に沈んでいく。
意識が完全に沈む前にみんなに伝えたいことがあるそれは、
(縞々のパンツ最高!)
であると。