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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第3部 天然女子高生のための超そーかつ
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第88話 クールビズ

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。



「あー暑い……最近季節感がバラバラな気がするけどとにかく暑い……」


 夏真っ盛りの7月中旬、私、野掘(のぼり)真奈(まな)は屋内にいても耐えられないほどの暑さに苦しみながら校舎1階の廊下を歩いていた。


「それにしても困ったことを仰いましたね。いくら冗談でも教員の発言として不適切ですよ」

「本当にごめんなさい。生徒の皆さんにやる気を出して貰おうと思って……」

「教頭先生、それに路堂先生、何かあったんですか?」


 冷房を求めて職員室に併設された会議室に足を踏み入れた私は、マルクス高校教頭の琴名(ことな)枯之助(かれのすけ)先生と社会科の路堂(ろどう)久美子(くみこ)先生が厳しい表情で話しているのを見かけた。



「おっと野掘さん。君も聞いていたはずだから話すけど、路堂先生がクールビズを扱った授業の際に期末試験で1年の全生徒が80点以上だったらご褒美に先生が水着で授業をすると言ってしまって、試験が終わってみると問題が簡単だったせいで全員80点以上だったらしいんだよ。流石に学校として認める訳にはいかなくてね」

「あー、確かに仰ってましたね……」


 1年生の政治・経済の期末試験の答案はまだ返却されていないが、路堂先生はその結果を見て慌てて教頭先生に善後策を相談したようだった。


「まさか本当に全員80点以上取るなんて思ってなかったから、私どうしたらいいか分からないの。生徒の皆さんに謝るしかないとは思うけど、平気で嘘をつく先生だと思われるのも辛くて……」

「うーん、難しい問題ですね。……あれ? でも路堂先生は『先生が水着で授業をする』としか言ってませんでしたよね? だったら誰か男性の先生が水着で授業をすれば解決するのでは?」

「野掘さん、それは素晴らしいアイディアだ! そういうオチなら生徒も笑って許してくれるだろうから、ぜひ採用させて貰うよ。答案返却の時まで他の人には秘密にしておいてね」


 私は分かりました! と答えるとそのまま会議室を後にして、ともかく路堂先生が傷つかずに済みそうでよかったと思った。



 その2日後……


「今回の答案返却はこの私、教頭の琴名が行います。海パン姿はご褒美なのでぜひ喜んでください」

「教頭先生、そりゃないっすよー!」

「はははは、許してチョンマゲ! 皆さんが高得点を取って教頭の私もマサイ族も大満足! 暴走族もゾクゾク満足! これでドーテムポール?」

「…………」

「おっと、私のジョークは高度すぎたかな? では答案を返却しマウス! 自分の番まで寝ず見(ネズミ)てね! 答案を受け取ったらラット安心できマウス!! はははははは!!」

「………………………………」


 路堂先生の失言の後始末は教頭先生の好感度がガタ落ちしただけで済んだのだった。



 (続く)

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