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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第3部 天然女子高生のための超そーかつ
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第86話 デジタルディバイド

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)



「『おおありくい たおしかた』で検索してみますと……うーむ、何も出ませんね」

「円城寺君、珍しくスマホいじってるね。何か調べてるの?」


 ある日の昼休み、住職見習いで同じクラスの男友達である円城寺(えんじょうじ)網人(あみと)君が熱心にスマホを操作しているのを見かけた私は興味本位で声をかけてみた。


「おや、野掘殿。実は先日(わたくし)めのめーるあどれすに見知らぬ女性からめーるが届きまして、このような内容の恋文(こいぶみ)だったのです」

「そ、そうなの? これは……」


 嫌な予感しかしない状態で彼のスマホの画面を見ると、



>いきなりのメール失礼します。

>明和くめる、23歳の未亡人です。

>お互いのニーズに合致しそうだと思い、連絡してみました。

>自分のことを少し語ります。

>昨年の夏、アルゼンチンで夫をオオアリクイに殺されました。

>家計を助けるため、夫が私に内緒であんな危険な出稼ぎをしていたなんて……



「このようなめーるで、私めをおおありくいに勝てる男と見込んで交際を申し込まれているのです。くめる殿のご期待に沿えるよう、おおありくいに勝つ方法を調べて」

「いやいやいや、これ完全に迷惑メールだよ!? 信じるにしてもオオアリクイと勝負するつもりなの!?」


 円城寺君は実家がお寺なこともあり若者にしてはデジタル関係を苦手としているが、それにしてもツッコミ所しかないと思った。


「円城寺君、それなら私のお兄ちゃんに頼んであげよっか? お兄ちゃんならオオアリクイに勝つぐらいできそうだし」

「そういえばいたねえプロボクサーのお兄さん!」

「それは何よりの吉報です! ぜひ兄君(あにぎみ)と連絡先を交換させて頂けませんでしょうか?」


 横から話しかけてきた新聞部員の朝日(あさひ)千春(ちはる)さんのお兄さんである朝日(あさひ)(うしお)さんは新人プロボクサーであり、円城寺君は朝日さんのスマホから潮さんの連絡先を送って貰うと自主鍛錬に行くと言って校庭へと走っていった。


「朝日さん、お兄さんなら鍛えてくれそうだけど流石に今回はちょっと……」

「私だって面白がってるだけだよー、だって日本人がオオアリクイと戦うなんて現実的にあり得ないでしょ?」

「まあ確かに。円城寺君も運動になっていいかもね」


 その時は100%冗談だと思っていたのだが……



『ついにやりました!! 日本ボクシング界初のイベント、新人アマチュアボクサー円城寺網人VSオオアリクイの全力勝負は円城寺の圧勝です! リングを降りた円城寺と彼のトレーナーを務めたプロボクサー朝日のもとに女性ファンが詰めかけています!!』

『皆様落ち着いて、私めには心に決めた人がのわああああぁぁぁぁ』


「流石私のお兄ちゃん! 円城寺君もこれで女の子に困らないね♪」

「は、ははは……」


 ラーメン屋のテレビで流れている試合中継を見て快哉(かいさい)を叫んだ朝日さんに、私はまあ誰も困ってないからいいかと思った。



 (続く)

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