表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第3部 天然女子高生のための超そーかつ
83/181

第75話 非代替性トークン

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)



 ある日の昼休み、高校の中庭を通りがかった私は野ざらしのベンチで2年生の金原(かねはら)真希(まき)先輩がカラフルな表紙の本を読んでいるのを見かけた。


「お疲れ様です。先輩、それお菓子作りの本ですか?」

「あら、野掘さん。もうすぐバレンタインデーだから、今年は手作りしてみようかなって考えてるの」

「ということは、プレゼントしたい相手がいらっしゃるんですね? 裏羽田先輩とかですか?」


 金原先輩には現在彼氏がいないはずなのでチョコレートなどを贈る相手は従兄(いとこ)裏羽田(りばた)由自(ゆうじ)先輩ぐらいだろうと思い、私はそう尋ねた。


「由自にもあげるつもりだけど、実は本命の男の子がいるの。宇都木(うつぎ)君っていう他校の2年生なんだけど……」

「へえー、いいじゃないですか」


 先輩の話によると現在通っている大学受験予備校の同じクラスに気になる他校の男子生徒がいるらしく、普段はあまり話しかけられていないのでこの機会に仲良くなりたいらしい。



「チョコレートは放課後までに融けちゃいそうだから代わりにクッキーを贈りたいんだけど、宇都木君はいつも男子生徒のグループにいて、彼だけにあげると気まずくなりそうだからグループ全員に渡すつもり。ただ、それだと全員義理チョコみたいになるから、本当は宇都木君だけにあげたいんだけどね」

「なるほど……あっ、いいやり方がありますよ。今朝の新聞で読んだNFT(非代替性トークン)の概念に近いんですけど、ハートマークを2つに分けたような形の2つのクッキーを作って、宇都木さんにあげたクッキーだけ金原先輩の持ってるクッキーとつながるようにするんです。その場でつなげてみせたら受けるんじゃないですか?」

勘合(かんごう)貿易みたいで面白いわね。よかったら今度私の家で一緒に作ってくれない? お礼にご飯おごるから」

「私もバレンタインデーは誰かにあげますし、お礼はなくていいですよ。ではよろしくお願いします!」


 話が弾んだ勢いで私は金原先輩の自宅で一緒にクッキーを作ることになり、バレンタインデー前日の2月13日は放課後そのまま彼女の自宅を訪れた。



「心配だったけど綺麗にできてよかったわ。味も申し分ないし」

「本当ですね。これで明日宇都木さんにクッキーを渡せますよ」


 夕方19時ぐらいまでかかってクッキーは完成し、私と金原先輩は明日に備えてクッキーを冷蔵庫に保管していた。


「ところで壁のカレンダーに明日は休講って書いてますけど、あれ大丈夫ですか?」

「あああああああああ!! 忘れてたああああ!」


 その日作ったクッキーは友チョコにして、宇都木さんには後日市販品のクッキーを渡したらしい。



 (続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ