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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第3部 天然女子高生のための超そーかつ
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第67話 タックスヘイブン

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。



 ある朝登校した私、野掘(のぼり)真奈(まな)は、同じクラスの男友達である梅畑(うめはた)伝治(でんじ)君がスマホを開いて何やら検索しているのを見かけた。


 この高校ではスマートフォンは校内への持ち込みも校内での使用(授業時間外のみ)も認められているが、梅畑君は暇だからといってすぐにスマホをいじる人ではないので理由を聞いてみることにした。



「梅畑君、またゲームの攻略情報でも調べてるの? 」

「ああ、野掘さん。それに近いんだけど、実は○川県に住んでる中学生のいとこが困ってるんだ。この前発売された『ビーストハンターアライズ』を通信プレイで一緒に遊びたいんだけど、○川県では条例で子供は1日60分までしかゲームをしちゃいけなくて……」

「その条例テレビで見たことある。でも、別に破っても罰則がある訳じゃないんでしょ?」


 子供のゲーム習慣を規制する○川県の条例は今の時代に即していないと各方面から批判されているが、罰則を伴う条例ではないので事実上は問題ないはずだった。



「もちろんそうなんだけど、今時のゲームには保護者が子供の遊び方を制限する機能があって、いとこが持ってるヨンテンドージョイッチも1日の使用時間を60分までに設定されちゃったんだ。制限を解除するやり方を検索してるけど、中々いいのが見つからなくて……」

「それは大変だね……」


 梅畑君は矜持(きょうじ)のあるプロゲーマーなので中学生のいとこを長時間ゲームに付き合わせて迷惑をかけたりするとは思えず、私はいとこと遊ぶ時間が減って悲しむ彼を率直に気の毒だと思った。



「タックスヘイブンじゃないけど、ゲームの使用時間だけよその県の基準になればいいのにね。いとこさんが他県の中学校に通ってたりすればできるかもだけど」

「なるほど、確かに基準を○川県に合わせる必要はないな。ちょっといとこに提案してみるよ」


 梅畑君はそう言うとスマホのメッセージアプリを起動し、私は一体何をするつもりなのだろうと不思議に思った。



 その翌週……


『ここ○川県では現在、子供たちの間で本籍地を変更する運動が起こっています。元々はゲーム規制条例への反発により生じた運動とのことですが、本籍地を×閣諸島や△島に変更したいと役場を訪れる子供たちの続出に大人たちは困惑を隠せず……』


「これで誰にも邪魔されずにゲームし放題ですわね。電気が通ってるかは分かりませんけど」

「ゆき先輩、本籍地は実際に住んでる場所じゃないです……」


 練習の帰りに立ち寄ったうどん屋でニュース番組を見ながら言った堀江(ほりえ)有紀(ゆき)先輩に、私はどうしてこうなったと思った。



 (続く)

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