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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第3部 天然女子高生のための超そーかつ

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第66話 内部ゲバルト

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)



「皆さんおはようございます。私、金原真希はこの度マルクス高校の綱紀(こうき)委員長に就任させて頂く運びとなりました。健康で文化的な高校生活を保障するため、綱紀委員は『必ずや名を正さんか』をモットーに活動して参りたいと思います」


 月に1回の全体朝礼で、体育館の壇上に立った2年生の金原(かねはら)真希(まき)先輩は自分が委員長に就任した綱紀委員の活動について説明していた。


「例えば敬語についてですが、仕事を終えた先生に向かって『ご苦労様です』と声をかけたり、『おっしゃられる』といった二重尊敬語を使ったりするのはかえって礼儀を損ねてしまいます。生徒の皆さんが正しい言葉遣いを保てるように、私たち綱紀委員は様々な啓発(けいはつ)を行って参りたいと思います」


 まだ社会に出ていない高校生はどうしても誤った敬語などを使ってしまいがちなので、私は演説を聞きながらこの活動の趣旨には大いに賛成できると思った。



 思ったのだが……



「治定度先輩、また女の子にツィターのアカウントをブロックされたんですか? 一体何やられたんですか」

「いつの間にか女の子のフォローが外れてたから『フォローし直しといたよ(^_^)また外れてたら教えてね(*´ω`*)』ってリプライ送ったんだけど、それで怒らせちゃったみたいで。コミニュケーションのどこに問題があったのかな?」


 ある日の昼休み、私は2年生で金髪天然パーマの治定度(じじょうど)(りょく)先輩から道端でナンパして知り合った女の子にツィターで断絶されたという話を聞かされていた。


「ピピー! 野掘さんと治定度君、先ほどのあなたたちの会話は綱紀が乱れているわ!」

「金原先輩、乱れているというと……?」


 ホイッスルを吹きながら廊下を走ってきたのは綱紀委員の腕章を身に着けた金原先輩で、私はどの辺が問題なのか分からず尋ねた。



「まず野掘さん、『何やられたんですか』という表現は受動態と考えると意味が通らないし、尊敬語と考えると先輩相手では不適切よ! 『何されたんですか』と言うべきでしょうね。次に治定度君、『女の子のフォロー』という表現ではどちらからどちらへのフォローか分からないし、今時『コミニュケーション』という言い間違いはあり得ないわ! 違反点数を加算するから2人とも生徒手帳を渡してちょうだい」


「ええ……」


 金原先輩はいつもながら残念な方向に向かっているらしく、私は1点、治定度先輩は2点の綱紀違反スタンプを生徒手帳に()されてしまった。



 そして1か月後……



「ちょっと由自! 応援団の声援で『アメフト部の弥栄(いやさかえ)』って言うのは良くないわ! ちゃんと弥栄(いやさか)って言いなさい!!」

「何だよ真希、別にいやさかえでも間違ってないからいいじゃないか」

「パソコンの変換で出ないような読み方は一般的とは言えないわ! 委員長の私に逆らうならもっと理論武装しなさいよ」

「あのなあ、言葉っていうのは相手に正しく意図を伝えるためにあるんだから、それこそ『訂正云々(うんぬん)』を『訂正でんでん』って読んだって相手が分かればいいだろう! 綱紀を守るために空気を悪くしてどうする!!」

「そんなこと言ってたらIT(アイティー)革命をイット革命って読んでも笑えればいいってことになるでしょう!? あんたとは意見の相違しかないようね!!」


 綱紀委員の事務室の前で、金原先輩とその従兄(いとこ)である応援団長の裏羽田(りばた)由自(ゆうじ)先輩は激しく言い争っていた。



「何かすっごく内部ゲパルトって感じがするね!!」

「朝日さん、それ内部ゲ『バ』ルトらしいよ」


 綱紀委員の(うち)ゲバに目を輝かせている朝日千春さんに、私はあの人たちだと未曾有(みぞうゆう)の事態でもないなあと思った。



 (続く)

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