表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第3部 天然女子高生のための超そーかつ
73/181

第65話 不正指令電磁的記録供用罪

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)



「これがパケモン大投票のページなのですよ。野掘さんもぜひステントンに一票をお願いします」

「へえー、国靖さんはこのキャラクターが好きなんだ。ちょっと変わったデザインだけど」


 ある日の放課後、私は同じクラスの女友達であり柔道部員の国靖(くにやす)まひるさんに連れられてパソコン室に来ていた。


 この高校はセキュリティが甘いのでパソコン室に並んでいる旧型のデスクトップパソコンはインターネットに常時接続されており、生徒なら授業時間外はいつでも利用できるようになっていた。



「パケモンにはペケチューとかヨンチャマとか人気キャラクターが多くて、ステントンは10位以内に入れるかも分からないのです。ちょっとした対策は行っているのですが……」

「確かに、普通は主人公のキャラクターとかに人気が集まりそうだよね。でも現在16位って結構健闘してない?」


 国靖さんは激しい性格の一方で以前からマスコット的なかわいいキャラクターを愛好しており、現在私に見せてくれているのは国民的キャラクター作品「パケットモンスター」のインターネット人気投票ページだった。


 このウェブサイトでは新作映画の公開を記念して全パケモンの人気投票が行われていて、メールアドレスを登録すれば1人につき1日1回好きなキャラクターに投票できるようになっていた。


 国靖さんはステントンという金属の筒のようなキャラクターを応援しているらしく、奇抜すぎるデザインにも関わらず600種類以上いるパケモンの中で16位とかなり健闘しているようだった。



「ええ、実はプログラミングを少し勉強しまして、自動投票プログラムを作ってインターネット上で公開しているのです。このプログラムは名目上あらゆるパケモンに投票できるのですが、実はどのパケモンを選んでもステントンに投票されるようになっています。これはオフレコでお願いしますね」

「は、ははは……」


 国靖さんは無駄に高度かつ危険なやり方でステントンを応援していたが、単なるキャラクターの人気投票なので許される範囲内だろうと思った。



「でも、そこまでして16位となるとグランプリは難しそうだよね。いっそのこと、この高校の全生徒が毎日投票してくれればいいんだけど……」

「そうですね……あっ、それなら何とかなりそうです! このパソコンを通じて全生徒のメールアドレスを……おっと、野掘さんはもうお帰り頂いて大丈夫ですよ。時間もかかりますので」


 国靖さんはそう言うとパソコンでプログラミングの画面を立ち上げ始め、私は一体何をするつもりなのだろうと思いながらパソコン室を後にした。



 その翌週……


『本日未明、警視庁は不正(ふせい)指令(しれい)電磁的(でんじてき)記録(きろく)供用罪(きょうようざい)の疑いで千代田区在住の女子高校生を逮捕しました。この女子生徒は高校のパソコンを通じて全生徒のメールアドレスを不正に入手し、それらのアドレスに偽メールを送りつけてコンピュータウイルスを使用させたとみられています。取り調べに対し、女子生徒はステントンを1位にしてあげたかったと泣きながら供述しており……』


「マナちゃん、今回の事件の影響でステントンは投票対象外になるんだって! 私も投票してあげてたからちょっと残念かも」

「は、ははは……」


 友達が逮捕されたにも関わらずけろりとしている新聞部員の朝日(あさひ)千春(ちはる)さんに、私は自分が余計な提案をしなければよかったのかなあと思った。



 (続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ