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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第3部 天然女子高生のための超そーかつ
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第63話 無防備都市宣言

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)



 ある日の放課後、いつものように硬式テニス部で練習に励んでいるとコートから少し離れた場所から騒ぎ声が聞こえてきた。


「どうしたの正輝、集団で男の人を押さえつけて……」

「姉ちゃん、こいつ盗撮犯なんだよ! さっきから清掃員さんのふりしてテニス部の練習をカメラで撮ってたんだ!!」

「ぐえー助けてくれーー」


 私の弟である正輝(まさき)は私たちの練習を盗撮している不審者を見つけてアメリカンフットボール部の仲間たちと共に拘束したらしく、5人もの重量級アメフト部員にのしかかられた盗撮犯は悲鳴を上げていた。


 観念した盗撮犯はカメラを手放して命乞いをしていて、はたこ先輩が先生を呼びに行ってゆき先輩がスマホで警察に通報した後はアメフト部員2人だけで押さえつけておくことになった。



「ごめんなさいごめんなさい、昔から女子テニス選手に憧れてて、スカートからのぞくアンダースコートをどうしても撮りたかっただけなんです! 決していやらしい気持ちはなかったんです!!」

「いや十分いやらしいですよ! まあ続きはお巡りさんに語ってください……」

「まなちゃんまなちゃん、そいつが盗撮犯か!? 一回変態にインタビューしてみたかってん」


 意味不明な弁明をしている盗撮犯の姿を見て、先ほどまでトイレに行っていた2年生の平塚(ひらつか)鳴海(なるみ)先輩は嬉々として歩み寄ってきた。


 なるみ先輩は拘束されたままの盗撮犯から少し離れた位置にしゃがみ込むと、笑顔で盗撮犯に話しかけ始めた。


「なあなあおっちゃん、盗撮犯とか露出魔の人って見ず知らずの他人を相手にするから捕まる訳やけど、そういうお店の娘はんにお金払ってやって(もろ)うたらあかんの? それなら捕まらへんのに」

「そのご意見はもっともなのですが、私たちは合法的に見られないものを撮るから楽しいし、撮られたくない相手を撮るから快感なのです。例えて言えば、その辺の高い山ではなく命の危険を伴ってでも名山に登ろうとする登山家のようなものです」


 登山家に謝ってくださいと率直に思ったのはともかく、盗撮犯の話したポリシーになるみ先輩は感銘を受けていた。



「そうなんか。確かに、自分から下着見せてくる女を撮っても面白(おもろ)くはないわな。せやったら、こういう変態から身を守るには……よっしゃ、無防備や! ハーグ陸戦条約の無防備都市宣言を応用するんや!!」


 なるみ先輩はそう叫ぶと部室に向けて走り出していき、そうこうしている間に盗撮犯はパトカーで到着したお巡りさんに逮捕されていた。



 後日警察署から感謝状と表彰を授与されることになったアメフト部員たちが去っていくと、部室の方から驚くべき姿になったなるみ先輩が帰ってきた。


「これでどうや、超ミニスカートとビニール傘が素材のアンダースコート! これぐらい無防備やったら盗撮犯も撮る気にならへんやろ!!」

「公然猥褻(わいせつ)罪で逮捕する!!」

「ちょっ、かよわい乙女に何すんねん、うちは自衛のためににぎゃあああああぁぁぁぁ」


 テレビで放映できなさそうな衣装のなるみ先輩は事情聴取のために1人残っていたお巡りさんに連行されていき、あれは無防備というより敵を道連れにした自爆だと私は思った。



 (続く)

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