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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第2部 天然女子高生のための再そーかつ
42/181

第39話 三店方式

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)



『皆こんにちは! 現役女子高生Vtuberのフラッグだよ!!』

『うちはフェミニズム系Vtuberのサンダーや! 今日からよろしゅうな!!』

『わたくしは没落令嬢Vtuberのホリディと申します。他の2人に負けないよう頑張りますわよ』



「……で、これが先輩方がやってるVtuber? なんですか?」


 ある日の放課後、私は硬式テニス部の先輩方が新しく始めたというVtuber(バーチャルYoutuber)の動画を見せられていた。

 スマホの画面には3Dモデルにデフォルメされた3人の姿が並んでいて、動画にある情報のみでは個人を特定できないようになっているがどのVtuberも元となった先輩によく似ていた。


「来年度に備えてラケットとかボールを新調していきたいから、隙間時間でアルバイトをするんだよ! Youtuber自体初めてだけど結構楽しいよ!!」

「うちもゆきに誘われてやってみてんけど、極端なこと言うてもVtuberなら許されるん最高やな! 明日も収録するで!!」

「は、ははは……」


 硬式テニス部所属の2年生である赤城(あかぎ)旗子(はたこ)先輩と平塚(ひらつか)鳴海(なるみ)先輩は始めたばかりのVtuber活動にノリノリらしく、私はこの人たちはいつもご機嫌でいいなあと思った。



「確かに3人でVtuberやれば、広告収入は結構入りそうですね。流石はゆき先輩です」

「いえ、わたくしたちはまだ無名のVtuberですし、更新頻度もそう高くありませんから大した金額にはなりませんわ。そこでこうするのです」


 同じく2年生の堀江(ほりえ)有紀(ゆき)先輩は私にそう言うと自分のスマホを差し出し、そこにはソーシャルゲームのような画面が表示されていた。

 そこには「人気予想チケット1枚:100円」「人気予想チケット10枚:800円」といった商品とその金額が表示されていて、まさしく課金要素のあるソーシャルゲームのようだった。



「これは一体?」

「わたくしたちは視聴者参加型の取り組みとして、既に多数のファンがいる有名Vtuberの人気予想をしておりますの。例えば同じぐらいの人気がある有名Vtuber5名にわたくしたちの動画の視聴者が順位付けをして、彼女らの1か月後の動画の再生数ランキングを予想します。1枚のチケットで1つの組み合わせに投票できて、見事当たればポイントを獲得。ポイントが貯まったら賞品と交換できるという訳ですわ」

「それ問題にならないんですか……?」


 先輩方は既に人気のあるVtuberを題材に競馬やトトカルチョのようなことをしているらしく、Youtubeにそこまで詳しくない私でもこれは問題になりそうだと思った。



「大丈夫ですわ、賞品はあくまでわたくしたちのVtuberのグッズで、直接お金を賭けている訳ではありませんから」

「なるほど、それなら大きな問題はなさそうですね。でも、グッズっていうのは?」

「こういうのだよ、まなちゃん」

「どう見てもガラクタじゃないですか! というかテニス部の備品でしょう!!」


 はたこ先輩がスマホの画面で見せてくれたのは「歴戦のネット(経年劣化で破れたネット)」「発酵ボール(物置の隅で長年放置されていたテニスボール)」といったガラクタの数々で、果たしてこれを欲しがる人がいるのだろうかと私は疑問に思った。



 その日は色々驚きつつも練習を終えて帰宅し、翌朝起床した私は興味本位でYoutubeを開いてみた。



「どれどれ、先輩方のチャンネルは……あれ、何このリンク」


 先輩方のVtuberの動画にはよく見ると小さくURLが記されており、そこをクリックした私は



>アンティークショップあさひ 破れたネットや古びたテニスボールなどを高価で買い取ります



 と書かれたウェブサイトを見てスマホの画面をそっと閉じた。



『ごめんマナちゃん! テニス部の先輩方と一緒に職員室に呼び出されちゃったんだけど、今からそっちの部室に行って証拠を消してくれない!?』

「今忙しいから切るね!!」


 登校前に電話をかけてきた朝日千春さんに、私は今回ばかりはもう知らないと思った。



 (続く)

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