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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第1部 天然女子高生のためのそーかつ
27/181

第26話 表現の自由

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)



「マナちゃん、今から体育館の展示を見に行かない?」

「別にいいけど、私たちが見に行って面白いものってあるの?」


 オープンスクール当日。硬式テニス部の部活見学が終わって部室前で一息ついていた私は、新聞部の朝日あさひ千春ちはるさんに声をかけられた。


「2年生の先輩が『表現の自由展』っていう展示をやってて、古今東西の表現の自由について色んな資料を展示してるんだって! 放送禁止用語連発の政見放送で有名な政治家さんもゲストで来てくれるらしいよ」

「うちの高校らしいと言えばらしいかなー……」


 朝日さんはハイテンションのまま私を体育館まで連れていき、そこでは有名お笑い芸人がトルコの競技場で全裸になった時の新聞記事や地上波で近親(自粛)を描いたアニメの原作映像などが展示されていてそれなりに面白かった。



 私と朝日さんが展示を隅々まで見学していると、体育館の入り口から学ランを身にまとった大柄な男性が歩いてきた。


「やあ、君たちも表現の自由に興味があるのかい?」

「こんにちは、裏羽田りばた先輩。マナちゃん、裏羽田先輩は金原先輩の従兄いとこなんだよ」

「へえ、そうなんだ。初めまして、硬式テニス部の野掘真奈です」


 直接お会いするのはこれが初めてだが、2年生の裏羽田りばた由自ゆうじ先輩はマルクス高校の応援団のリーダーを務めていて、アメフト部やサッカー部の試合ではいつも応援に駆けつけていると聞いていた。


「僕は表現の自由は人類に認められた最も尊い権利だと思っていてね。今日は中学受験生にもその素晴らしさを教えたくて展示を任せて貰ったんだ」

「流石は裏羽田先輩です! この展示は新聞部でも取り上げさせて頂きますね」


 朝日さんがそう言って展示されている資料をデジタルカメラで撮影していると、体育館の入り口から誰かがダッシュしてきた。



「待ちなさい由自! あんた、公共の体育館でこんないかがわしい展示をしていいと思ってるの!?」

「何だよ真希、僕は高校の許可を得て展示をしているんだぞ」


 走ってきたのは元生徒会長にして裏羽田先輩の従妹いとこだったらしい金原かねはら真希まき先輩で、金原先輩は優等生だけあって全裸や近親(自粛)の展示を止めに来たらしかった。



「いくら元生徒会長だからって、表現の自由を侵害するのは許されない!」

「そっちがその気なら、私にだって表現の自由に反対する表現の自由があるわ!!」

「何だと? それなら僕には表現の自由に反対する表現の自由に抗議する表現の自由がある!!!」

「黙りなさい! 表現の自由に反対する表現の自由に抗議する表現の自由を否定する表現の自由を行使するわ!!!!」

「甘いっ! 何を言われようと表現の自由に反対する表現の自由に抗議する表現の自由を否定する表現の自由を拒絶する自ゆっ……」


 裏羽田先輩はそこまで言うと頭から体育館の床に倒れ、舌を思いきり噛んだのか先輩の口元からは血が流れていた。



「キャー! 由自が死んじゃった!!」

「マナちゃん、裏羽田先輩は表現の自由を守るために殉死じゅんししたんだね……」

「いや勝手に殺さないであげて」


 半狂乱になってわめく金原先輩と感動に打ち震えている朝日さんに一言ツッコミを入れると、私はスマホで救急車を呼んだ。



 (続く)

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