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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第6部 天然女子高生のための重そーかつ
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第163話 プラグマティズム

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。



「真奈さん、ちょっと聞きたいのですがチョコレートって手作りしたことありますか?」

「バレンタインデーにってこと? 小学校低学年の時に見よう見まねでやってみたことあるけどまともに作ったことはないかな。宝来さんも誰かに贈るの?」


 バレンタインデーを翌週に控えたある日の昼休み、私、野掘(のぼり)真奈(まな)は教室で漫研部員の宝来(ほうらい)(じゅん)さんにチョコレートの手作りについて質問されていた。


「一応漫研唯一の女子部員なので部活仲間全員にあげたいんですが最近はザンタムシードフリーランスの映画を何回も観てしまってお小遣いが足りないんです。ちゃんとしたチョコを買えそうにないので手作りしようかなと……」

「なるほどねー。お菓子作りなら2年生の金原先輩が得意だから聞いてみてもいいと思うけど、宝来さんが先輩の家にお邪魔するとなるとちょっと時間的猶予がないかも。とりあえず私から聞いてみるね」

「ちょっと待った2人とも。その姿勢はカール・マルクス大先生の名前を冠した高校の女子生徒としては不適切じゃないかな?」


 私がメッセージアプリで2年生の金原(かねはら)真希(まき)先輩に連絡を取ろうとしていると、近くで話を聞いていたらしい石北(いしきた)香衣(かい)さんが話しかけてきた。


「香衣さん、マルクス高校と手作りチョコの関係とはどういうことでありますか?」

「あの鄧小平(とうしょうへい)副首相の有名なお言葉に『黒い猫でも白い猫でもねずみを捕るのがよい猫だ』というものがあるけど、ボクはバレンタインデーにおいてもこのような実用主義(プラグマティズム)の思想が重要だと思うんだよ。宝来さんが男子たちに贈るのが手作りチョコでもそうでなくても、一番大事なのは宝来さんがその贈り物をして男子が喜ぶかということじゃないかな」

「なるほど、その視点はなかったです。プラグマティズムの観点に基づいてチョコを買い占めてくるであります!!」


 宝来さんはそう言うとスマホで何やら検索を始め、私はプラグマティズムとバレンタインデーの関係って何なんだろうと思った。



 そしてバレンタインデー当日……


「今日は私が漫研のみんなにチョコをプレゼントします! いつもお世話になっている部長にはチ○ルチョコのきなこ味と抹茶味とおしるこ味でありますー!!」

「ヒャッホー!! 女子部員から3つもチョコを貰えるなんて夢みたいだぁ……」


 漫研の部室の前で1個23円の小型チョコを3つずつ男子部員にあげている宝来さんを見て、私はかわいい女の子が配れば確かに何でもいいような気がした。



 (続く)

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