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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第6部 天然女子高生のための重そーかつ
179/181

第161話 児童ポルノ禁止法

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)



「さぁ~て今日もYouたちに化学基礎の授業を始めちゃうぞぉ~、その前に僕の双生児(そうせいじ)を見ろ! タクちゃんもシンちゃんもかわゆいでしょぉ~」

「そうですねー、いつ見てもかわいいですよねー……」


 私のクラスで木曜日の一時間目の化学基礎の授業を担当している喜多山(きたやま)先生は昨年奥さんとの間に双子の男の子が生まれたばかりで、それから現在まで毎日のように子供たちの写真をスライドショーで生徒に見せびらかしていた。


 初めは喜んでいた生徒たちも延々続くと飽きてくるもので、小さなビニールプールで遊んでいる双子の写真を白スクリーンに投影して喜んでいる喜多山先生に朝日千春さんだけが愛想笑いを返していた。


「ストーップ! そのようなプレゼンテーションは許されマセン! 今すぐフォトグラフのデータをデリートしてクダさい!!」

「スノハート先生、今は化学基礎の時間ですが……」

「そんなコトを言っている場合ではありマセン、スウィムスーツ姿のチルドレンのフォトグラフをパブリックに見せびらかすのは児童ポルノ禁止法違反デス! 自分でデリートしナイというならワタシがデリートしマス!!」

「えっ!? うわーやめてくれー、どうかそれだけはー!!」


 英語科AET(英語指導助手)のガラー・スノハート先生はいきなり教室に乱入すると喜多山先生のパソコンを勝手に操作して写真を削除し始め、西洋人だけあってか児童ポルノ問題に厳しすぎるようだったがこれで喜多山先生が反省してくれるならそれでいいかなと思った。


 その翌週……


「皆、今日は一緒に絵本を読もうねー。まだ自分で読めない子には私たちが読み聞かせてあげるからね」

「はーい!」


 マルクス高校では地域貢献活動の一環として有志の女子生徒が地元の子供たちと一緒に絵本を読むイベントを開催しており、今日はお隣さんの6歳児である村田(むらた)(れん)くんが通っている幼稚園の4歳児たちが来るということで私もボランティアで参加していた。


「おねえちゃん、わたしきんたろうのえほんよみたい! おねえちゃんのおひざのうえでよんでいい?」

「もちろんいいよ、どうぞ座ってー」


 女の子が『金太郎』の絵本を持ってやって来たので、私は希望通り膝の上に座らせて絵本を読んであげることにした。


「ミズ野掘、そのような児童ポルノを幼児に読ませるのはチャイルドアビューズデス! 今すぐその本をスローアウェイしてクダさい!」

「うわっスノハート先生! いやいや、金太郎は昔話なのに児童ポルノな訳ないじゃないですか」

「何を言うのデス! ほとんどネイキッドのような姿のボーイがベアーにまたがりオウマのケイコをするなど児童ポルノに他なりマセン! 読むならせめてこの花咲かエルダリィマンの絵本にしなサイ!!」

「おねえちゃん、よくわからないけどわたしこっちのほんがいい! なんかこっちのほうがはなしがおもしろそうだし!!」

「ええ……」


 図書室に乱入してきたスノハート先生は勝手に騒ぐと金太郎の絵本を持ち去ってしまい、私は学校の蔵書を捨てるのは流石にまずいのではと思った。



 その1か月後……


『昨日夕方、警視庁は都内のアニメ会社に乗り込んで意味不明な発言を繰り返していた自称英語講師の女性を不法侵入と業務妨害の疑いで逮捕しました。容疑者は最終話で死亡した主人公と愛犬を全裸の天使たちが迎えに来るアニメの再放送は児童ポルノ禁止法に違反しているなどと主張しており……』


「冷静に考えると西洋の天使ってなぜか全裸ですよね。あれには宗教的な意味合いがあるのでしょうか?」

「は、ははは……」


 スノハート先生が逮捕されたニュースに素朴な疑問を呈している国靖(くにやす)まひるさんに、私は児童ポルノの定義って時代によってどんどん変わってるなあと思った。



 (続く)

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