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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第5部 天然女子高生のための真そーかつ
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第148話 物質主義

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。



 冬休み中の12月24日の昼過ぎ、私、野掘(のぼり)真奈(まな)と弟の正輝(まさき)はお隣さんの6歳児である村田(むらた)(れん)くんを連れてクリスマスシーズン真っ只中の繁華街を歩いていた。


「やったー、かえったらこのあるてぃめっとすぺーすだいおーのおもちゃであそべるぞー!」

「よかったね蓮くん。お父さんとお母さんチキンとクリスマスケーキ買って待ってるって」


 今日は蓮くんの両親は朝から昼過ぎまで久しぶりの夫婦デートに出かけていて、私と正輝はご両親から費用と手間賃を貰ってデパートのレストランで蓮くんに昼食を食べさせ、おもちゃ屋で少し前まで放映されていたスペースレンジャーの最強ロボのプラモデルを買ってあげてから帰途に就いていた。


「それにしても周りはカップルだらけだね。姉ちゃんと蓮くんと並んでたら親子みたいに見えるのかな?」

「まさきおにいちゃん、そんなのだめだよ! まなおねえちゃんはしょうらいぼくとけっこんするんだから!!」

「あはは、蓮くんがそう言ってくれて嬉しいけど女の子の方が10歳も上だと色々苦労するからやめといた方がいいよ」

「姉ちゃん、6歳児にそういうこと言わない……」


 うっかり蓮くんの夢を壊しそうになりつつ歩いていると、私たちは通りの向こうで謎の団体がデモ行進をしている所に遭遇した。


「アニバーサリー反対ー! クリスマスなどという物質主義に反する文化を今すぐ廃止せよー!!」

「そうだそうだ、アニバーサリーなんてぶっ潰せー!!」

「うわっ、治定度先輩何されてるんですか。クリぼっちが悔しいからってデモしたって何も解決しないですよ」

「ミス野掘、話をいきなり結論に持っていくんじゃない!!」


 デモ行進を率いていたのは例によって2年生で軽音部員の治定度(じじょうど)(りょく)先輩で、大体の事情を察した私は話を早めに切り上げようとした。


「クリスマスに限らず誕生日なんていうのは生まれた日から何周年という意味合いしかない訳で、それをわざわざ毎年祝うのは資源の無駄に他ならない! 俺たち『アニバーサリーを許さない市民の会』はクリスマスや(自粛)誕生日の廃止を全国民に訴える!!」

「誕生日に限定しなくても、例えば有名なゲームがシリーズ30周年記念作品を出すとか言ってそれまで何年間も新作が出なかったりするのも理不尽だ! 新作を出せるならすぐに出すのが一番ファンのためになるんだから、アニバーサリーなんて文化は百害あって一利なしだ!!」

「梅畑君まで参加してるの!? まあそれはちょっと分からなくもないけど……」


 同じクラスの高校生プロゲーマーである梅畑(うめはた)伝治(でんじ)君はクリぼっちとは別の理由で「アニバーサリーを許さない市民の会」に参加しているらしく、私はアニバーサリーは確かに誰もが喜ぶ行事ではないのかも知れないと少し思った。


「よくわからないけど、みんなでこうしんしてたのしそう! ところでおにいちゃんたち、きょうはいえすきりすとがうまれてから736695にちめなんだよ! このまえぱそこんでしらべたの!!」

「なっ、何だって!? その理屈だと今日は俺が生まれてから6467日目だから、俺は自分の生誕6467日記念日をデモ行進で祝っていたということなのか!? こんな自己矛盾に満ちた自分は総括だああああああ!!」

「ちょっ、治定度会長!? そんなことしてたらお巡りさんが来ますって!!」


「帰ろっか」

「うん!」


 蓮くんの話にショックを受けて地面に頭をガンガンぶつけ始めた治定度先輩を無視して帰りつつ、私はクリスマスの熱気って結構人をおかしくするなあと思った。



 (続く)

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