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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第5部 天然女子高生のための真そーかつ
150/181

第133話 CEROレーティング

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。



「野掘さん、ヨンテンドージョイッチの『ビーストハンターアライズ』って知ってる? その件でちょっとお願いがあるんだけど……」

「どういうゲームかは知ってますよ。お願いとは一体……?」


 ケインズ女子高校硬式テニス部との練習試合の日、私、野掘(のぼり)真奈(まな)はあちらの2年生である宇津田(うつだ)志乃(しの)さんに呼ばれて部室で頼み事をされていた。


「私の弟の真嗣(しんじ)は小学3年生なんだけど、学校で流行ってるからってビーストハンターアライズを買って貰って遊んでるの。ただ、あのゲームってCERO(セロ)レーティングで15歳以上対象らしくて、買ってあげた後だけどお母さんが心配してるのよね。児童誌でも特集組まれたりするぐらいだから心配ないとは思うけど、周りに遊んでる人がいたら真嗣とこっそり通信プレイして問題を起こしてないか確認して欲しいの……」

「なるほど、確かにああいう通信プレイがメインのゲームって小学生がよくマナー関連で問題起こしてますよね」


 ビーストハンターアライズは同じクラスの梅畑(うめはた)伝治(でんじ)君がよく遊んでいるので私もある程度知っていたが、宇津田さんは女子校の生徒なので友達に遊んでいる人はおらず、彼氏はそもそもヨンテンドージョイッチを持っていないので共学の知人である私に頼んできたらしかった。


 今日の食事会の費用をおごって貰うことをお礼に私は依頼を引き受け、翌週の始業前に早速梅畑君に話を持っていった。


 そしてその日の放課後……



「まなちゃんまなちゃん、今日は私がスーパープレイを見せるよ! エアリアルガンスピアー使いのはたことしてインターネット上でも有名なんだよ!」

「へえー、はたこ先輩ってビーハン得意だったんですね。楽しみにしときます」


 高校生プロゲーマーである梅畑君は界隈では有名すぎるため通信プレイには協力できないと依頼をあっさり断られ、梅畑君はその代わりにとビーストハンターアライズをいつも遊んでいる赤城(あかぎ)旗子(はたこ)先輩を紹介してくれたのだった。


 言うまでもなく同じ硬式テニス部員なので宇津田さんははたこ先輩に直接頼んだ方が早かったのではと思いつつ、私は制服姿のままはたこ先輩の自宅にお邪魔し、先輩の部屋で通信プレイのセッティングを始めた。


「よし、シンジ君と同じ部屋に入れたよ! 今から2人で通信するからシンジ君が問題起こさないか見ててよ!!」

「分かりました。何も問題がないといいですけど……」


 宇津田さんが教えてくれた暗証番号をゲームに入力するとはたこ先輩のアバターは真嗣君と同じ部屋に入り、これからお互い武器を持ち防具を身にまとって強大なモンスターを狩猟しに行くようだった。


 私はゲーム画面とチャット欄を注視し……



>はたこ:よろしく

>SHIN:よろしくお願いします


>はたこ:くしゃるのくえてつだつて

>SHIN:分かりました。超風圧無効の防具に着替えてくるので少しお待ちください


>はたこ:はちみつください

>SHIN:沢山ストックしてあるので10個どうぞ

>はたこ:ひやくもいい?


>はたこ:ふんじんはやくして!

>SHIN:どうぞ

>はたこ:でんわかかつてきた

>SHIN:ドンマイ!


>はたこ:ほうぎょくがでない!! ふざきんな!!

>SHIN:下位クエストだと逆鱗(げきりん)しか出ないですよ。一緒に上位クエスト行きませんか?



>野掘さん、どうかしら? 何か真嗣がひらがなばっかりで変なチャットしてるように見えたけど……


>真嗣君は何一つ問題のない優良プレイヤーでした。ご安心ください。


 はたこ先輩と真嗣君が通信プレイに興じている間、メッセージアプリで私にゲーム画面の解釈について尋ねてきた宇津田さんに、私はどっちが小学生かこれもう分かんないなと思った。



 (続く)

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