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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第5部 天然女子高生のための真そーかつ
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第124話 付加価値

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。



 夏休み真っ最中の8月。私、野掘(のぼり)真奈(まな)は弟の正輝(まさき)がマルクス中学校アメフト部の友達と海水浴に行くというので保護者代わりに付いてきていた。


「まっ、真奈さん、ご指定のかき氷買ってきましたよ! どうぞ召し上がってください!!」

「ありがとー、後で代金と手間賃渡すね」

「いえいえ、俺らは真奈さんが来てくださっただけで本当に満足なんで! 代金だけで結構ですので!!」


 海の家に食べ物を買いに行く係の男子についでにブルーハワイのかき氷を買ってきてとお願いすると彼は全速力で持ってきてくれて、私は水着姿でビーチパラソルの下に寝そべったままかき氷を受け取った。


 正輝とは中1の頃から親しいらしいその男子は若干前かがみの姿勢のまま焼きそばや唐揚げなどを正輝たちのいる砂浜に持っていき、私は真夏の日差しの下でかき氷を食べることにした。


「日焼けはちょっと嫌だけどこんな機会でもないと海水浴なんて来ないもんね。後でナンパされちゃったりして」

『楽しんでいるようだな、地球人の少女よ!』

「ギャーーかき氷の中にフナムシがーーーー!!!」


 ブルーハワイのシロップをかき分けているとかき氷の中からダンゴムシとGを足して2で割ったような姿の甲殻類が出てきて、私は叫びながらかき氷を砂浜へと放り投げた。


『おっと、驚かせてしまったようで申し訳ない。このかき氷とかいう食物は確かに美味だな』

「いやもう食べられないんで好きにしてくださっていいですけど、また何かあったんですか?」


 フナムシに憑依しているのは例によって外宇宙の恒星系から地球を訪れたブラッキ星人らしく、私は先ほどの衝撃に心臓をバクバク言わせながらそう尋ねた。


『ローキ星人との戦争の長期化に伴い宇宙軍もコストカットを強いられているのだが、その中で糧食のコストを大幅に低下させるやり方を考えていてな。この地球という惑星の日本という国には固体の水を砕いて味付きの水をかけて食べるというこのかき氷や、砂糖を膨らませてかじりつくだけの綿あめとかいう食物があると聞き、それで商品として成立する理由を知りたくなったのだ』

「言い方が色々とあれですけど、確かにどっちも原価率がすごく低いらしいですね。でもどっちも露店で安くても300円とかしますよね……」


 かき氷や綿あめが300円や400円で売れる理由はこれまで考えたことがなかったが、私は持っている知識を総動員して考察してみることにした。


「そうですね、どっちも材料費は確かに安いですけど、今時のかき氷は氷の砕き方を工夫したり豪華なトッピングを付けたりすることで1000円でも売れてますし、綿あめだって砂糖の味や品質を工夫することで色んなバリエーションを出せるじゃないですか。要は安い材料でも付加価値を上手に付けるのが大事なんじゃないですか?」

『なるほど、このような庶民の食物でも付加価値という概念が考慮されているのだな。我々が兵士用糧食に与えられる付加価値というと……よし分かった、今から母星に戻って会議を開くとしよう。今回も世話になった!』


 宇宙人はそう言うとフナムシへの憑依を解いて母星に戻り、私は食べられなくなったかき氷を容器ごとごみ捨て場に捨てて海の家で新しくメロン味のかき氷を買った。



 その1か月後……


『地球人の少女よ、兵士用糧食のシチューから肉を抜く代わりにハートマークにカットした根菜ニーンジーンを多めに入れたのだが、兵士たちからふざけるなと苦情が殺到しているんだ。どうか肉なしシチューで満足させる方法を教えてうわなにをするやめくぁwせdrftgyふじこlp;@:』

「知らんっ!!」


 庭先にいたダンゴムシに憑依して助けを求めてきた宇宙人に、私はその辺にあったレンガを真上に落としたのだった。



 (続く)

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