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天然女子高生のためのそーかつ  作者: 輪島ライ
第4部 天然女子高生のための大そーかつ
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第93話 個人情報保護法

 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)



 ある日の放課後、私はお母さんから専門店に修理を頼んでいた眼鏡の受け取りを頼まれて普段あまり行かないデパートを訪れていた。


 ちょうどキャリアショップの前を通りがかった私は硬式テニス部所属の2年生である平塚(ひらつか)鳴海(なるみ)先輩の姿を見かけ、興味本位で店に入ってみた。


「これで新しいスマホの設定は完了です。お時間を取らせてしまい申し訳ございません」

「全然ええで! これでうちも最先端のデジタル女子や!」

「なるみ先輩、スマホ新調されたんですか? あっ、これAPhone(エーフォン)の最新機種じゃないですか」

「よくご存知ですね。サイズは若干大きめですが、性能は折り紙付きですよ」

「せやでせやで! 明日学校で皆に自慢するねん」


 なるみ先輩はこれまで古い機種のスマホを使っていたが思い切って最新の高級機種を買うことにしたらしく、形だけ見て最新機種だと気づいた私に女性の店員さんは笑顔を浮かべていた。


「それでは古いスマホは処分させて頂きますね。既にアクセサリー類はお外し済みのようですので、こちらでお預かり致します」

「ちょい待ち、処分()うても本当はこっそりデータ抜いて何かに使うんちゃうの? それやったらそれでうちにも対価を貰う権利があるで」

「なるみ先輩、それは邪推しすぎでは……」


 先輩の気持ちも分からなくはないが、流石に今時の企業はそんなあからさまなことはしないだろうと思った。



「お客様、そのご不安はごもっともです。普段はお見せしないのですが、ご不安を取り除くために今からスマホ処分用の機械をお持ちします」


 店員さんは冷静な表情でそう言うと一旦店の奥に行き、巨大なミキサーのようなものを抱えて戻ってきた。


「こちらは我が社が誇るスマホ粉砕機、スマホスパイザーです! 今からこれでスマホを粉砕する所をお見せしますね」

「何かめっちゃすごそうやん! 見して見して!!」


 店員さんは頷くとなるみ先輩の古いスマホをスマホスパイザーの中に放り込み、蓋を閉じると装置のスイッチを入れた。


 スマホスパイザーは轟音を立てて動き始め、数十秒もしないうちに先輩の古いスマホは粉々に粉砕されていた。


「これでお客様のデータが悪用される可能性は無に帰しました。ご満足頂けたでしょうか?」

「うーん、確かに粉々に砕けとるけど、こんなんプロの手にかかったら復元できるんとちゃうん? 復元できへんほど粉々に砕かれてるって証明してくれんと安心できへんで」

「ええ……」

「分かりました、ではその証拠をお見せします。こちらの100円硬貨は白銅と呼ばれる極めて硬い素材でできており、今からこれを砕いて見せましょう。さあご覧ください!!」


 店員さんはお釣り用の100円玉3枚をスマホスパイザーの中に放り込み、スイッチを入れるとやはりあっという間に100円玉は粉砕された。



「ここまでしてくれたら安心できるわ! 個人情報保護法も守られて万々歳やな!!」

「ありがとうございます! 私たちはお客様からの感謝が何よりの支えですから!!」


 2人で大喜びしているなるみ先輩と店員さんを見て、私は個人情報保護法は守られたが何か別の法律に触れているのではないかと思った。



 (続く)

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