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第66話 ミズキリたちの帰還

「ダリオさん、少し宜しいですか。」


そう女性が声をかけると、傭兵ギルドの受付に座っていた、岩の塊のような、そんな男にも引けを取らない、筋骨隆々とした、壮年の男性が振り返り、声を上げる。


「おう、どうしたミリアム。悪いが、あと一回、いや二回は外に出ないと回収しきれないぞ。」

「そこまでですが。流石はイマノルさんですね。

 その、今回の件、それで意思を決定される方が、今回の報酬分配をギルドに預けるとのことですから。」


そう、女性、ミリアムが伝えると、ダリオと呼ばれた男性は、顎を撫でながら、口にする。


「俺たちは、それこそ荷運びだけだが。」

「俺たちだけじゃ、放っておくしかないからな。

 イマノルさんへの配慮は求めるが、何なら頭割りでもいいさ。」


ダリオの言葉には、トラノスケが応える。


「おう、トラノスケの坊。そうか、基本はイマノルか。

 にしても、いいのか。ギルドに任せても、俺らの取り分が増えるぞ。」

「なに、俺はさっきも言ったが、頭割りでもいいさ。

 ほとんどイマノルさんがやったしな。まぁ、ギルドが決めたことに、こっちから文句はつけないさ。

 そっちも、それで問題ないか。」


トラノスケから振られると、オユキ達三人もそれに頷く。

ただ、そこにミリアムが少し難しい顔をしながら口をはさむ。


「イマノルさんですか。護衛として雇っている状況ですから、少し難しそうですね。」

「いや、それこそ、そこで過小評価すりゃ、護衛を連れて危険地帯に突っ込む馬鹿が増えるだけだろうよ。

 まぁ、うまい具合にやんな。俺からはそうとしか言えんな。

 なんにせよ、俺らの仕事は、回収だけだ。多少魔物も相手しちゃいるが、そう変わらんんさ。」

「ん。そうですね。それでは先に、シグルド君。お話を聞かせてもらいますね。

 そうですね、シグルド君のパーティーから、後二人残っておいてください。

 それで、話を聞いている間に、またダリオさんも戻ってきているでしょうから。」


オユキが見る前は分からないが、何処か暗い顔をしたシグルドが、そうして二回に連れていかれる。


「じゃぁ、俺らはまた外に行ってくるか。」


ダリオ達が荷袋から中身を出すこともなく、そのまま預けると、それを受け取ったギルドの職員が、替わりの袋を彼らに渡している。

ミリアムに言われて、荷物持ちという事もあるのだろう、少年二人がダリオ達についてギルドから出ていき、少女二人がギルドに残る。

その二人は、さぞかし疲れているのだろう、何を言うこともなく、ギルドの壁を背もたれに、座り込んでいる。

その姿を見ながら、四人で集まり話を始める。


「にしても、本当に良かったのかい。」

「ああ。俺は問題ない。そっちだって、荷物を全部捨ててるんだ。

 先立つものはあったほうが、いいだろう。」

「そうですね。私たちにしても、まぁ、怪我で動けない間、その分くらいはと思いはしますが。

 逆を言えば、それだけあれば十分ですから。今のところは。」


そう、トモエが言えば、イリアは肩をすくめる。


「ありがたくはあるけどね。欲のないこった。」

「足るを知っているだけですよ。まだこちらに来て日も浅く、直ぐに物入りになるわけでもありませんから。」

「まぁ、借りと思っておくさ。何かあったらいいな。

 それにしても。」


そういって、イリアは未だに座ったまま、ぐったりとした様子の二人の少女に視線を向ける。


「あんたら、狩猟者になるなら、高々あの程度動いただけでそんなんじゃ、今後やってけないよ。」


そう言われて、少女たちがのろのろと顔をあげる。


「まぁ、大変なことにはなりましたから。緊張もあるのでしょう。」

「そうかもしれないけどね。町から離れれば、半日以上動きっぱなしになるからね。

 他の三人もそうだけど、もっと体力つけなきゃ、やってけないよ。

 あんたらよりちっこい、このオユキだって息一つ乱しちゃいないからね。」


そう、イリアが言えば、のろのろと視線をオユキに向けて、また俯く。

かなり小柄なオユキが、曲がりになりも戦闘を行えたこと、それと自分達を比べているのだろう。

疲れだけではない曇りが、表情にさす。

その時に、オユキ達に比べれば、随分と早く、シグルドと呼ばれた少年が二階から降りてきて、次の少女へと声をかける。

そして、二人はそのまま場所を入れ替えるようにして、少年が座り込み、少女がゆっくりと二階へと向かっていく。


そんな様子を見ながら、さて、これからどうしたものかと、オユキとトモエが視線をかわしていると、少年からうめくような声が聞こえる。


「なんでだよ。」


オユキ達は、その声が聞こえたが、それだけでは、流石に何もわからないと、それに応えることはなかった。

そんなときに、入口に見慣れた姿が見える。

どうやら、ミズキリたちが戻ってきたようだ。

オユキが手を挙げて軽く振ると、それに気が付いたのか、ラルフがミズキリの肩をたたくと、三人連れ立って、側にやってくる。

そんな三人、ラルフに対して、トラノスケが声をかける。


「悪かったな。変わってもらって。」

「まぁ、俺も気になっていたからな。それに斥候としては、種族差がある。こっちが適役さ。」


そういえば、最初はトラノスケはミズキリについていく予定といっていたな、そんなことをオユキが考えていると、ルーリエラがオユキに声をかける。


「薬草の匂いがしますね。どなたか、怪我を?」

「ええ、私と、そちらのイリアさんが。」


そう答えると、ミズキリが眉を上げながら、イリアに尋ねる。


「それでその有様か。それにしてもイリア、お前が今更こんなところで怪我をするなんて、何があった。」

「ロボグリスの率いる群れに絡まれてね。カナリアもいたから、一人で逃げることもできずに、この様さ。」

「森が騒がしいとは思っていましたが、走りマッシュルームだけではありませんでしたか。」

「まぁ、三人じゃ森全体までは難しいからな。仕方ないさ。それにしても、これはほぼ確定か。」

「ミズキリたちも、変異種に遭遇しましたか。」


走りマッシュルーム。ゲームでその名前を始めてみたときは、翻訳の間違えかと笑ったりもしたが、実物はそうとしか言えない見た目をしている。勿論、大きさについてはかなりのものではあるが。

オユキがそう声をかければ、ミズキリも一つ頷きながらそれに応える。


「ああ。それで、怪我は大丈夫か。」

「今日明日は、安静にとのことです。」

「大事が無ければよかった。それで、ここで何を?」

「群れを討伐したので、その報酬の分配にギルドの知恵を借りていることです。

 門のあたりを通ったなら、遠目に見えたかもしれませんが、未だに回収を行っていただいている有様で。」

「ああ、外の匂いはそれか。まぁ、ロボグリスは群れが大きいからな。

 そういや、旦那、うちはどうする。」


ラルフが少し嫌そうな、鼻のいい彼の種族にしてみれば、そこら一体から生肉の匂いがする、その状況は何事かと、そう思うようなものなのだろう、そう納得して、ミズキリに声をかける。


「頭割りでいいだろ。面倒だしな。

 俺たちは、一度報告と、納品を済ませてくる。またあとでな。」

「ええ、後程。」


そう答えて、ミズキリたちが離れていくと、イリアがオユキに声をかける。


「ミズキリとも知り合いかい。」

「ああ、私達も異邦人ですから。その縁で。」


オユキがそう言って、トモエを見れば、頷いて答える。


「それでかい。見た目にしちゃ落ち着いてると思っていたが。」

「まぁ、見た目通り、そうではないことは確かですね。」


オユキがそう苦笑いを返していると、木をたたく音が聞こえ、俺に意識を向ければ、こぶしを震わせた少年、シグルドが震える声で、訴えた。

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