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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
14章 穏やかな日々
505/1233

第505話 次に向けて

休暇明け、前日に一先ずの指針であったりは、使用人を統括する立場にあるカレンとゲラルドに伝えていたが、朝食の席で改めてそれをオユキが簡単に纏めて伝える。


「祈願祭が終われば、そこを目途として第二騎士団の方が主導したうえで、領都までの旅程を組んでください。」


傭兵ギルドに任せないのは、流石に今度ばかりは十分な戦力があるため、そちらに護衛を主として頼む必要がないからだ。


「しかし、今後を考えたときに情報の確認や共有が必要な相手も多いでしょう。私から改めて許可を得ますが、各ギルドからそれぞれ人を出させるように。」

「畏まりました。一先ずは、そのような考えがあると、それで構いませんか。」

「いえ、許可がない場合は、依頼として私の裁量で行います。裁可で変わるのは、この町に戻る方法です。」


離れた場所を繋ぐ門。そのうち固有名詞も決まるのだろうが、それの利用にはただでさえ不足が分かり切っている魔石が求められる。流石にそこを一存で、戻る時は楽だからなどとオユキから言える訳もない。


「同行は、隣国迄は考えていません。それこそ必要があれば王都にて、陛下のご判断があるでしょう。」

「ご下命承りました。」

「ただ、傭兵ギルドは、アベル。」


各ギルドとはいう物の、傭兵ギルドからは、そこの長であるアベルが当然のように同行する構えを取っているのだ。ならばこちらに配慮が必要かと言われれば、疑問もある。メイと他のギルド、そこの調整次第では盛大に人手が足りないと、そう言った事にもなる。


「私と、後二人選びましょう。」

「では、そのように。魔術師ギルドは、そうですねカナリアさんから推薦があれば。」

「私からは、メリルを。」

「メリル、ですか。一度挨拶の機会は持ちましょう。」


今回の移動に同行する相手は、馬車、それに使われる新しい魔術を目にすることになる。そちらに対して、王に献上するまでの間、最低限そこまでは口止めをする必要がある。


「オユキ様も、以前顔だけは見た事がおありかと。」

「となると、伺ったときに受付にいた者ですね。長旅です。道行の安全は騎士団によって保障されていますが。」

「はい、私から確かに伝えさせて頂きます。」


これで、一先ず二つ。残った物は多いが、そちらの判断ができる相手がこの場に居合わせていないため、話を振る先は、それらを任せる相手になる。


「トモエさんには、後程狩猟者ギルドに宛てた物をお渡しします。後の場所は、カレン、貴方が差配を。」


一先ず、外向きの指示はこれで終わりと、そこでオユキも一息とばかりにお茶に口を付ける。

一先ずの物として、オユキが自発的に動くつもりのある部分、それに必要な手紙は休日の間に用意が終わっている。後はそれをばらまき、戻ってきた返事を元にまずは日程の調整を行えばいいだけだ。そして、そこにある空き時間で、後回しにしていた厄介な手紙をオユキは片づけていくことになる。


「それとゲラルド、私たちが休んでいる間、リース伯爵子女との間を一任していました。休みが明けてから、そう言われていることもあるでしょう。この後聞きます。」

「畏まりました。」

「オユキ様、回復は日々の事には十分ですが、くれぐれも。」

「ええ。流石に、許可が頂けるまでは狩猟まではしませんとも。」


休日の間、日々の時間としてトモエとオユキで体を動かすことも多かったのだが、やはり疲労が早い。集中して、怪我を受け入れてしまえば無視してしばらく動けるだろうが、前回のこともありしっかりと監視がついていた。それもあって、あくまで最低限としている。今は流石に包帯のお世話になってはいないが、やはり派手に動けば手のひらや喉に違和感を覚える、その程度には怪我人であるのだ。無理に治療ができないのかと、一度食事時にそういった話が出はしたが、選択肢がある状況ではやらない方が良いと、そうはっきりと言われたこともあり受け入れている。


「アイリスさんは、どうしましょうか。」

「私は、祖霊様の社を改めて用意するのと、後の管理を任せる物を頼むのが先ね。部族の物だから、知っている相手なんていないもの。」

「似たような特徴を持った方は、降臨祭の折に目にしましたが。」

「毛色が違ったでしょ。そうなると別物よ。」


アイリスの方でも、しっかりと今後移動までの間に行うべき予定は組んでいるらしい。ならば各々が動きながら、それこそ今のように適宜情報共有で十分ではある。


「必要な物の用意は、そうですね。カレン、アベルに便宜を図るように。」

「すまないな。私も私財をこちらには多く置いていない。改めて王都で。」

「同じ神より、同じ位を頂いていますから。あまり気になさらず。」


一応、色々とお互いにあったのだ。その程度を思う程には、仲間意識というのも芽生えている。


「アイリスさんも、まだ回復にはかかりそうですが。」


そして今話しを向けているアイリスにしても、ここしばらくの休息でそれなりに回復してきているようには見える。あれていた毛並みも、時期に合わせて生え変わりが進んだのだろう。冬毛と一目でわかる状態で、ボリュームがしっかりと出ている。基本の部分、服から覗いている部分としては、精々耳と尾位しか獣としての部分は無いが、その部分も、髪も、随分と。しかし、そうなっていたとしてもくたびれた印象がやはりある。


「オユキよりはまし、その程度ね。ここ数日は、いい肉もたくさんあったからこれまでに比べれば、多少は戻りも早くなっていたけれど。」

「となると、私たちは次の移動までに体調を改めて整えるのが大きな仕事になりますか。」


仕方のないこととはいえ、最低限持ち直す為、そのために一週を休んだと。それが分かっていたところでオユキとしては、やはり思うところはある。合間に仕事があったとはいえ、それにしても軽いものだったのだ。自覚のない、かつて似合ったようなより明確な肉体的な物では無い部分が治っていない、それでも休まなければならないとなると、忸怩たる思いというのは拭えない。

医師から休めと言われている以上、それに従う事には基本的に否は無いのは、そうなのだが。


「一先ず、私としての予定は現状そのような物です。後はやはり事務仕事、書類の作成。そういったものを主体とします。」

「畏まりました。私たちもそのように。」

「これまでお断りさせて頂いた面会ですが、そちらは少し緩めはします。基本はリース伯爵子女か、公爵様の紹介を受けた方に限りますが。」


それと、改めて止めていた来客を認める旨を伝えて、それでオユキからは終わりと一先ず話を締める。

特にこの町で暮らす者達には、恩恵の大きい事がオユキとアイリスから齎されているのだ。見舞いにしても、色々と届いている。それらの返事も後に回していたため、返していけば一度と、そう望む相手も出てくるだろう。そちらにばかり対応していれば、今度は過度に時間が取られることは予測できているため、別の制限を付ける事は忘れはしないが。


「河沿いの町は、どうする。」

「水と癒しです、管轄が違いますから。橋についても、私よりもミズキリの方が良いでしょう。」

「そのミズキリから、魔国での調整を行っている相手に、渡してほしいものがあると。」

「過去の私の知り合いでしょう。そちらは受け取りますよ。魔国の方でも、恐らくは橋を受ける側に新しく教会をとなるでしょうし。」


そちらも準備がいる。世界として、神職の者達の間では共通の認識もあるだろう。そうなれば、橋の完成がいつ見込まれているのかもわかる。そして、それを如何にして作るのかも。

恐らく基本的な設計図、強度として、神が奇跡を行使するにふさわしいだけの橋、その設計は行わなければならないのだろうが、それさえ用意出来ればという物でもある。

これまでのやり口、ミズキリが忙しなく動いているさまを見れば、それが随分と前倒しになっていることも、予想は出来る物だ。今回では無く、次の新年祭、そこで新たに奇跡が行使され二国を結ぶ橋ができるのだろう。それまでの間には、カナリアにしても今は馬車に使う物としてまとめられている魔術から、魔物を避ける物を選び、それを如何に橋に組み込むのかも考えて貰わなければならない。

勿論、カナリアだけという訳では無く、魔術ギルド全体でとなるだろうが。


「オユキさん。」

「失礼しました、また少々考え事を。」


そのような事を頭の中でつらつらと考えていると、トモエに呼ばれたため悪い癖がまたと一先ず謝って置く。

寄せられる視線が随分と剣呑ではあるのだが。


「まだ先の事ですから、今は置いておきましょうか。」

「事前に伝える事に不都合でも。」

「いえ、流動的と言いましょうか。そうですね、こればかりはアイリスさんとの予定の兼ね合いもあって、少し難しいのですが。」


大掛かりな奇跡を願う、そうなれば巫女というのはいた方が良い。


「私としても、魔国の次は月と安息の神殿、そちらに向かうつもりなのです。」


ただ、それについては、先に述べた理由があって難しいとしたものではある。実際に、この場にいる者達も揃って困惑顔だ。魔国は己の目的よりも優先し、他はそうしないのかと。


「理由は、正直私としてはありませんが、どうにもそのような流れを望まれている気がしますので。」


そもそもトモエにしても、話に聞いている周囲の環境もあって、あまり気が進んでいない。それこそ他の国にと予定を決めれば、そちらを喜ぶ。ただ、ここまでお膳立てがあると、また随分と時間をかけて移動するよりも先にと、そう言った思惑があるようにオユキには感じられる。


「橋は神々の奇跡でとなるでしょう、そして、あの大河に住まう魔物から守られれねばなりません。ならば求めるべき加護というのは分かりやすいでしょう。」

「オユキは、それほど早く、そこまで巨大な物の建築が終わると。」

「いえ、橋自体は、神々によって用意されるでしょう。恐らく、その中程、そこにミズキリが拠点を構える事にもなると思いますよ。」


橋に必要な資材は、最低限は人が集める事になるだろうが、それでも大部分は奇跡によって賄われる。そして、そこには実に都合の良い他の予定という物が存在している。

予定を組み、それを進めるためにこちらに来ているミズキリという男、それが求めた使命の対価が。

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