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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
14章 穏やかな日々
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第497話 4日目

予感のある事ではあった。アイリスにしても、これを予測して食いだめしていたのだろう。オユキは寝台の上に寝ころんだままそのような事を考える。参加者全員からもれなく平等に、そのように接収された事は予測できるのだが。


「やはり巫女だからでしょうか。他の方よりも負担が大きかったようですね。」


幸い今回の物はオユキとしてもまだ軽い、ちょっとした風邪、その程度の感覚で済んでいる。


「風も冷たかったですしね。」

「オユキさんは氷に親和性が高いようですし、そちらは良い方向に働きそうなものですが、その辺りは人らしいと言えばいいのでしょうか。マルコさんにも、昼から一度足を運んで頂きましょう。」


カナリアはあくまで魔術師であり、治療にしても奇跡の使用が前提となっている。マナに関しては勿論頭抜けた知識を修めているが、では人体の事はと言えばそれは他の物が勝っている。


「せっかくの休日にこうして過ごすというのは、やはり残念に感じてしまいますが仕方ありませんね。」

「ええ。よくあると言えば、よくある事ではありましたが。」

「木々と狩猟の神を始め、多くの神々もお喜び頂けたようですし。」


カナリアの言葉を肯定する分かりやすい物は、トモエとオユキが首から下げている、余剰の功績を確認するための器にはっきりと表れている。今まではそれを主体に活動しているというのに、やけに色の薄かった色と、それを取り巻くようにいくつかの色が強く表れているのだから。


「楽しんでくださった方が多いのであれば、まぁ良しとしましょう。片づけはお任せすることになりそうですが。」

「それについてはお二人が先に戻られた後ですね、ヴィルヘルミナさんとカリンさんから、舞台として残して置きたいとそういった要望が上がったこともありまして。」

「流石に結界の外では、維持も困難かと。」

「カナリアさんに話が回ってきたとなれば、以前の魔術文字もありますし。ああ、そう言えば今回の流れで恐らく新しくもう一つ得られると思いますから。」


カナリアが現在馬車に準備しているものには、魔物避けを魔術として叶えるものがある。それを舞台装置に組み込んでしまえば、そう言った不安は解消で気はするのだ。そして、それを知る物がカナリアに話を回したという事でもあるのだろう。


「魔術としての行使は流石に。いくら私も興味があるとはいえ、陛下への物よりも先にというのが難しいのは理解がありますから。」

「それは、そうでしょうね。」

「それと、新しい魔術ですね。そちらも既に。繋いだ門、その行き先を指定するための物でしたが。」


曰く、魔術によってそれを指定しなければ、そもそも移動のための門が開かないという事らしい。魔術単独だけでなく、それに付随する知識まで得られるのは何とも便利としか言えない物だ。そうして話していれば、やはり薄れた加護が負担をかけオユキから空咳が出る。


「マルコさんを呼ぶまでは、オユキさんは暫くこのままとするしかないでしょう。」

「特に問題という事ではないのですよね。」

「はい。これまでと同じ、いえ、勿論現状が良いという訳ではありませんが、安静にしていれば問題ない範囲ですから。」


一先ずそのように診断が下りたため、オユキはそのままシェリアに任せ、他の物たちが主体となってその日は行動する。とはいってもトモエの方でアベルを始めとした者達に概要を伝えている間に、アイリスを診たカナリアの言葉によれば、アイリスの方も今日はすっかり寝て過ごす構えだという事で、特段何が起こるという訳でも無くなった。


「時間を使うしかない、そう言う事なんだろうが。」

「怪我というのは、そうい物でしょうとも。」

「そう言うトモエさんも、昨日の無理がたたっていますので、この後ちゃんとマルコさんに診てもらってくださいね。」


そして、平気な顔をしているトモエにしても、昨日散々立ち仕事をしたため、少々悪化の兆しがあるのも事実。そう言われてしまえば頷くしかない。

急に大事になったため、方々に相応の負担もあるだろうから今日明日くらいは情報の整理とするのが良いだろうと、そう言った判断をオユキがしたこともある。トモエにしてもその間休むことには勿論同意している。皆伝などと仰々しい肩書きを得たところで、怪我を押して鍛錬をすれば、やはり変な癖がつくという物だ。怪我を庇って、そのせいで意味のない筋力の差などが出来れば、今後それを矯正するために結局さらなる時間を要するところにもなる。元々短い時間という意識があるため、休むべき時に休むそれは流石にトモエも当たり前としている。


「オユキさんとアイリスさんは療養として、来客があれば、私で問題ない物は受けましょうか。」

「まぁ、基本はお前らが下がった後に巫女相手にと、そう言った贈り物も多いだろうからな、基本は使用人任せでいいと思うぞ。」

「そう言えば、あの後は。」


惜しまれて、というほどでもないが祭りの場を中座したのだ。


「後は、まぁ、日が沈んだ時には流石に全員戻して、だな。出入りの記録がどうした所で煩雑だったこともあって、そこで少し手間取ったくらいか。」

「その辺りも含めて、一度情報を纏めてとオユキさんが言っていましたよ。」

「まぁ、そうなるだろうな。昨日の席でもそれぞれにとは言っていたし、こちらでも既に始めちゃいるんだがな。」

「昨夜、面倒が多ければ時系列、祭りの始まりから終わりまで、その投げれに沿って方々から報告を集めて纏めれば、それなりの物が出来上がるだろうと言っていましたが。」


それを受けて、何やらトモエに視線が集まったこともあり、昨夜のうちにオユキから情報を纏める方策として言われたことを共有する。とはいっても前提条件が最も大きいのだが。

今回は急な出来事、それに対して逐次対応を行った。何処まで言ってもその域を出ない。より組織的に、定期的に行うならそもそもそれを前提としたうえで、教会、ロザリア司教から話を聞いたうえで考えなければならないというのが大きい事柄であり、今回の事は統治者、各部門の責任者が大過なく突発的な事態に対応できたのだと、それを示すのが主題となるだろうとそう言う話と合わせて。


「まぁ、そうするしかないか。実際こっちもそのつもりで動いちゃいるからな。」

「ええ、そうなる物でしょう。ただ、採取者ギルド向けには今後の改善案が必要になるだろうとオユキさんも言っていましたが。」

「とはいってもな。知識が主体だ。それに加えて戦闘迄となると。昨日の段階で、今後を考えて定期的な物は言われたが、祭りの場となれば難しいぞ。」


解決策が必要な懸念としては、やはりそちらが残っている。正直な所、オユキも詳しいわけでは無い。トモエに至ってはかつてあったもので手に取った物しか分からない。それすら違うかもしれない知識だ。どうあがいたところで生兵法の域を出ない。


「それは、各ギルドで改めてとするしかないでしょう。」


そして、誰もの頭に浮かんでいる解決策は、カナリアが口に出す。


「先ほどオユキさんからも尋ねられましたが、今回神々より頂いた新たな魔術それが理解できるようになりました。門を繋ぐ先を切り替える、そのような魔術です。さらに研鑽を積めば、空間、それに作用することができる可能性とてある物です。」

「それが無くても、一人しか使えないのでは不都合があまりにもというところだな。」

「はい。門に対して使うための物ですから、今は。」


どうした所で扱いは王都で決める必要もある物だが、それができるのが一人の魔術師だけというのはあまりに不都合が多い。その度に一人を行き来させて、それは現実的ではない。今は流れを作った、そう見えるトモエとオユキがどうした所で目立ち、それが最初に所属した組織からとなっているが勿論それで済むわけもない。


「ただ、採取者ギルドの方がな。」

「アイリスさんに詳細を求める必要はあるでしょうが、五穀豊穣の加護ですから。」

「その言い方だと、大地への物とは違うんですか。」

「伝わっているばかりと思いましたが、穀物に対するものです。日々の生活には勿論十分と言えるものではありません。パンと肉だけでは、やはり不足も多いですからね。」


そう、今回アイリスが勝ち取ったのはあくまで五穀豊穣の加護。大地への働きかけと入っていたが、その流れを受けての神であり、より広範を担当する相手から分けられているなら細分化も行われていると考えるのが自然でもある。

多少は他にも働くだろうが、主体となっているのはそれだ。


「副産物として、家畜の飼料にも大いに流用できるでしょうし、他で難しい所へという話も出て来るでしょうが。」

「肉よりも保存がきくし、有難いのは確かだが、成程。それだけではとなっているか。」

「ええ、権能が分けられているのですから。そればかりは今後の様子を見る必要もあるのでしょうが、何より現状不足するかもしれない物は、集める必要があるのでしょうし。」


これについては、アベルが口にしたことでもある。今後を考えれば、今からとにかく備蓄を作るのだと。


「だが、採取物の多くは。いや、だからこそか。それにしても拠点ごとに変わりそうだな。」


そう、結局のところどこまでダンジョンを考慮するかにもよるが、それ以外の手段というのは常に考えておかなければならない事でもある。既にある程度判明したこととして、採取を行うものにしても経験や知識という物がダンジョン内で影響しているらしいと、そう言った報告もあるのだ。ならば、それを外で積む時間というのは当然必要になる。どうした所で、当面の間ダンジョンに求められるのは拠点の拡張のための素材と、装備の充実に傾いている。その機運は既に作ってしまった事もある。これを覆すには、それこそトモエとオユキ以外の人員が、ある程度以上の影響力を与えられる人員が必要になる。


「オユキがどうした所で目立つが、お前も結構色々考えてるよな。」

「オユキさんが外に向けた事を。私がうちに向けた事を。過去もそうでしたから。」


オユキもそうだが、トモエにしても自分たちが手の届く範囲で誰かが飢えに苦しむというのは最も忌避すべきことであるのだから、その回避は真剣に考える。


「ただ、それにしても採取に向かう機運というのは別で作らねばなりませんね。」


それを作るのが、今度ばかりは神々の助けが無いのが新たな試練だと、そう言われそうなものだと納得は出来るのだが。

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