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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
13章 千早振る神に臨むと謳いあげ
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第463話 秋の彩

誘いを出せば、聞きたいことも話すべきこともあるからと、実にフットワーク軽く見慣れた顔ぶれが並ぶ。話を聞くためというのもあるが、どちらかと言えば新居の挨拶も兼ねてであるためきっちりと席は分かれているが。


「これは、また。」


そして昼食は簡単な、これまでと変わらない出来合いを買ってきたものに少し手を加え、後は簡単に主菜といった程度だったのだが、招いた相手を迎え入れた頃には随分と華やかな彩が食卓に添えられる。

どうやら厨房の上下関係は早々に決まったようで、こちらに移動して数時間というには長い、その程度だというのに料理の説明にアルノーが顔を出している。


「ティータイムには最低限の用意で、恐縮ではございますが。」


そう謙遜はしているし、事実品目としては少ないのだが。それこそこちらに来てからの時間を考えれば過剰ともいえる物が用意されている。

ティースタンドがない為、ワゴンからサーブする形ではあるが最初にと並べられている焼き菓子、色とりどりのジャム、簡単につまめるサイズに調整されたサンドイッチ、それらが実に可愛らしく盛り付けられ並べられている。


「今後は、カナリアさんの協力が得られれば氷菓等もと思いますが。」

「その辺りは、なかなか難しくはありますが。」


今はオユキの回復のためにと頼んでいるが、そもそもそういった理由がなければもっと優先すべき業務がカナリアにもある。とりあえずと並べられた料理の紹介が終われば、締めくくりに加えられた言葉に対してはオユキの返答も渋い物になる。小さな箱で色々と実験をしているのだが、その報告を見てオユキからも試すべき条件それについて色々と上げていることもある。馬車の箱、それ自体は今回の追加の人員や荷物で十分な量が来たこともあるが、それを使う前にやっておくべきとそう判断しているのだが。


「日に数度でしたら、勿論お受けさせて頂きます。オユキ様の回復にも必要な事ですし、私としましてもずっと小箱に向き合ってというのは流石に気も滅入りますから。」

「ありがとうございます。であれば、手が空いた折に。」

「ありがとうございます、レディ。では、私は次の品の用意に。」


さて、並べられている物だけでも、随分な仕事量だろうにまだ出すものがあると、そうしてアルノーが戻っていく。彼も楽しんでいるようで何よりだ。食材の都合であったり使い勝手であったりはそれこそ別の時間で、異邦人で集まっての場とするしかないと、オユキとしては今は彼を同じ席に誘う事も出来ない。本人もそれを望んでいないようではあるし。


「改めて、本日はお招きに応じていただき。」


では机の準備も終わったからと、オユキから飲み物に口を付けた上でメイに話を向ける。

同席者はメイ、アイリス、カナリア、リュディヴィーヌに加えて、アベルとリヒャルト、そういった顔ぶれになっている。残りの者達は少し離れた場所でこちらが手を付けた事をきっかけに実に賑やかに午後の一時を楽しんでいる。


「口実にはよいものでしたから。ゲラルドに既に。」

「まぁ、それなりに手紙も来ますよね、荷物と一緒に。」

「私の方にも、方々から色々と。」

「リュディヴィーヌ様に、ですか。」


席次としては宛先はクララになるのではとオユキは疑問をそのまま返す。


「オユキ様、どうぞリュディと。本来であれば、お姉さまに充てるべきですし、勤めた経験もあるのでそちらが正当ではあるのですが。」


本来であれば、イマノルとクララも招いているがと、オユキはそのまま視線を年ごろに見合わぬ重たいため息と額を抑える少女から元上司、今もなんとなく監督役を行っているアベルに向ける。


「朝からダンジョンへ向かわせていてな。」


そして、これまでに浮かべたよりも多少は前向きと感じる笑い方でそのまま続ける。


「引継ぎは必須だ。下見も無しに作戦も何もない。移動に時間がかからない事もあって、やらせない理由は無いのでな。」

「となると、そうですか。クララさんも割り切りましたか。」


トモエからおそらくこういった逡巡があったのではないか、そう言った話は聞いている。そしてクララとメイの間で交わされた言葉の概要も。


「私としては、先にとも思うのですが。」

「リュディ様も来られていて、より分かりやすく差し迫った自体もありますから。守られる身としては、頼もしい物です。」


王都で、少女達ですらどちらの道もと言い切ったのだ。クララがそれを望めば止められる物でもない。悩み、後ろ髪を引かれながら新しい事にも気乗りしない、そういった良くない状況からはきっちりと抜け出せたらしい。それもあってのアベルの表情でもあるという事だろう。


「淑女として、戦場に殿方と経つことを逢引きなどと。」


さて、少女のその憤りについてはオユキから特に何か言えるわけでもない。全くだと言わんばかりの視線が寄せられているものだが、それらを全て放って置いて話を進める。


「生憎、私に直接では無くメイ様経由でしたのでまだ確認していませんが。」


用は、そうして領主としての能力を使って混ぜた手紙があるのでしょうと、そうメイに向けて話を進める。


「王家より直接の物があります。そちらは速やかに。私の方にも河沿いの町、あちらに関してリース伯から現在の話の流れは。」

「ふむ。」

「その、私に迄話が回ってきていますのよ。」


どうやら、そちらはそちらでなかなか混迷を極めているらしい。リュディヴィーヌ迄となれば、それは勿論ファルコも含めてという事になるが彼は彼で今後任せるべき事が有る。そこでリヒャルトにと出来ないのは彼が公爵の領を継がなければならないからなのだろうが。


「一時的な物でしょうが、そうですね。王都から適役の方というのも、そこまで難しい状況なのでしょうね。」

「それについては私から話そう。」


オユキの予想、事前にアベルや公爵と話した内容では外交使節をと、そう言った流れになると見込んでいたのだが。


「両国を繋ぐ新たな道、それの建設には相応の資材と時間が共聞いている。それまでの間に、無論彼の国と話決めなければならんことも多くてな。今後そちらに回す物は、一先ずその折衝も兼ねて事前に現在の国境としている場でとなった。」

「ああ、確かにその方が不都合は少ないですね。」

「それもあり、しかしその時までに不足がないようにやはり場は整えねばならん。」


つまり、それまでの間を公爵領でもある以上、公爵がそれをせよとそう言う流れであるらしい。そして本来ならあの町を任せる予定だったレジス侯爵は、当分来れ無い事が決まったともいう。


「それでラスト子爵にという事ですか。」

「そうするほかなくてな。先代のマリーア公も監督として配置されるが、やはり年齢もある。」

「レジス候の家からは。」

「レジス侯は武門で領地を持っているわけでは無いからな。家督と本家、それ以外は残る。」


残さなければならないと、そう言う事でもあるのだろうが。


「当家もやはり領地をすべて空ける訳には行きませんから、大半は、そのまま。」

「一応、新年祭以降と言いますか、これからの事が終われば楽に。いえ、それもあっての事でしょうね。流石に現在のあの町では。」

「最低限の格式、それを整えよと王命もあります。まずはあの町を広げて、こちらと繋ぐとそういった形をとっての事となりますが。」


始まりの町にも門は置かれる。急ぎの事が有るのならとそう言った計画でもあるのだろう。何より河沿いの町と始まりの町は近い。オユキ達が歩いても二日でつく程度の距離なのだから。


「そうなると、こちらにもある程度。」

「ええ。ダンジョン、その奇跡がこの国以外には無いとその言葉もありました。勿論話に聞くだけではとそうなるでしょう。」

「二カ所を急ぎでという事ですか。そうなると私たちも、忙しくなりそうですね。」

「どうかしら。ここまで派手に動いてるんだもの。早々気軽に寄ってこれはしないと思うわよ。魔国に行けば、向こうからも側仕え位の話は出るでしょうし。」

「その辺りは、まぁ。王太子妃様から供回りを一人という話もあるのですが。」


有難い申し出ではあるし、これから魔国に向かう際にも実に心強い人員ではあるのだがオユキからは固辞している。そもそもそういった人員が不足している結果が先の出来事だ。他を増やしたからこれまでの相手を、それもまたおかしな話だからと。


「ユリア殿は流石に難しいが、侍女から一人は流石に移動について来てもらう事にはなる。」

「他の家にもおられるものと考えていましたが。」

「行った先では、それは勿論そういう家もあるのだが。そうか地理関係も疎いのであったな。」

「山を迂回する形で、北に大きく回ってと、それくらいは。」

「凡そ間違いではないが、大河の水源のある山だな、それを回り込んだ先からが魔国の領土になっている。とはいってもお互いに管理にも難儀する拠点でしかないが、それを抜けなければいけないわけだ。」


言われてオユキもようやく以前の事を前提に考えていたことに気が付く。

旅が難しい、文字通り命がけ。十分以上の護衛を付けて移動など、よほどのことが無ければ起こりえないのだ。それこそそういった事をふらふらとするような手合いは、家や国に所属しない根無し草たちだ。公務、外交、そう言った物に組み込めるような者達ではない。


「次の移動の計画は、いよいよ第二の方にお任せしましょうか。さて、今は他にも話すべきことを。」

「まぁ、適任だな。」

「それと、オユキも新年祭に合わせて私たちと王都に。」

「宜しいのですか、領でのものがあるかと思いますが。」

「前任の代官に頼むしかありません。色々と新年の場で改めて陛下より任を頂く事もありますから。」

「ただ、そうであるなら。」


そして次の話題の先はカナリアに。


「箱の大きさに応じて相応に魔術の行使にも、機能の維持にもマナが必要になります。具体的に、どの程度とは現段階で明確にお答えは出来ません。それと、内部に同様の魔術をかけた物ですね、これを格納しようとすれば干渉が発生し、どちらかが壊れます。」


壊れるのは、現在試したものでは内部空間が狭い物になりますが。

そうカナリアが話す。オユキがあれこれとこういった試しを行って欲しい、そう頼んでいるものは順調に消化されて行っているらしい。


「後は、そうですね、新規の物が内部に働く物でしたので、これまで通り外装を使って保護機能をという事もある程度は出来そうです。そちらは重量の軽減がかかりませんが。」

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