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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
13章 千早振る神に臨むと謳いあげ
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第444話 足引きの

お茶会の成否、それについてはトモエとオユキの判断の及ぶところではない。そもそも、どういった意味合いを持つものなのか、その理解にしても未だに遠いものでしかないのだから。

文化、それがあまりにも違い、それを一から習うほど時間に余裕があるわけでも、状況に余裕があるわけでもない。

ただ、結果としては、クララが何処か明るい表情で振舞うようになり、それをイマノルとアベルが喜んだ。一方でメイと侍女たち、ゲラルドが苦い顔をしていた。その事実を結果として受け取るだけではある。


「こういった分担ですか。」


茶会の中で約束したこと、教会への手紙の用意であったり、他の報告書であったり。そう言った諸々を用意しながらもカナリアの指導の下、トモエとオユキが並んで魔術、その初歩以前。それを習ってみれば、一日等直ぐに終わる。

そして、夜半。

約束よりは早いが、時間をとそう言決めた事もあり、寝室に早い時間からトモエとオユキで揃って侍女の二人と席を同じくしている。

未だに慣れぬ気配が部屋の外にはあるが、アベルがアイリスにつかざるを得ない以上、やむを得ない事ではある。


「はい。私がトモエ様に。」

「それから、私はオユキ様に。」


部屋の中には、話をしようと、これまで頼むべきことがあまりに多く時間が取れなかった二人も。

公私を分ける、そう言った機転が利く者が付けられていることもあり、気安い雰囲気で公爵から届けられたワインを思い思いに傾けながらの席となっている。

勿論、そう言った時間だからこそ、難色を最初示されはしたが。


「改めて、シェリア様とタルヤ様には、侍女もいない中過度な仕事をお願いすることとなり。」

「いえ、承知の上ですから。それに貴族家の出ではありますが、騎士の任を得たからには、個で立つものです。」


そう、なんだかんだと側についてくれていることが多いシェリアが、オユキに返す。

就寝の前、勿論護衛の二人は酔えば仕事は出来ないこともあり、タルヤには固辞されてしまったが、各々グラスを傾けつつ領都で纏めて買い込んだチーズに手を伸ばしながらと、気楽な席ではある。

それぞれの装いにしても、実に楽な物ではあるのだから。

互いに武器を直ぐに手が届くところに置いているのは、それこそご愛嬌というしかないのだが。


「何かと、気を揉ませているかとは思います。どうした所で異邦からの流れ者。色々とご教示いただいてはおりますが。」

「移動に時間を使っておられますし、私たちはそれこそ物心のあるころからですので。」

「習ったのは、一月に満たないと聞いています。それを考えれば、十分以上でしょう。そう言ったところを補佐するために、側に人を置くものでもありますから。」


立ち居振る舞い、それについてはこうして気楽な場であるからこそ実に分かりやすい差がある。

シェリアにしても、タルヤにしても。

トモエとオユキから見ても思わず称賛が思考を作るほどに洗練されている。私的な場、それこそ慣れぬ二人は気を抜き雑な部分が出ているのに比べて、気を抜いていると、それが分かるというのに美しい振る舞いを常としている。


「武の道であれば、負けぬと言えるのですが。」


それこそトモエが意識をしなくとも、最も合理的で無駄のない一刀を繰り出せるように。彼女たちはそれが常となる程の研鑽を積んだのだと、まざまざと見せつけられるという物だ。


「近衛、貴き方々の側仕えとして侍ることが常ですから。守るための心得以前に、こちらを。」

「屋内という事であれば、研鑽も十分に分かるものですとも。」


屋外であれば、それこそ今のアイリスであれば有利を得られる物だろうが、屋内であれば、アイリスでは勝てない。それが実によくわかる。


「そうお褒め頂けるのは嬉しい物ですね。どうにも、あまり機会もありませんから。」

「私たちも基本は道場、屋内での訓練ですから。」

「改めて、自己紹介というのも良いものでしょう。私は、異邦から間もなく一年でしょうか。今の名前はオユキ。戦と武技の神から、役を得ては居りますが、それにしてもかつての両親が使徒、その流れを持つものです。

 こちらでは、両親の遺したもの、それを探すことを新たな目的としています。勿論、トモエの望むかつては見る事も叶わなかった景色、そこに案内するだけでなく。」


そう言った事については、既に情報が共有されているものであるらしい。特に二人から驚いた様子もない。


「私の方では、いよいよ観光と、かつての道、あたら良いものも含めてその先を望むだけです。我ながら俗な願いとは分かっていますが。」


そう言って、トモエが珍しい食材、新しい料理も楽しんでいるのだと楽しげに話す。

気楽な場、そう言った建前はあるが、当然これを用意した思惑というのがあるものだ。二人、少なくともそう思えるだけの時間を削ってまで。


「改めて、シェリア・ファン・レイン。近衛騎士として勤めておりますので、どうぞ今はただのシェリアと。主にオユキ様の身の回り、それを陛下より直々に頼まれております。」

「タルヤ・サーラン・アロンド・ブラファング・ウンディーナ・クレロデンドルム。人種の方には、長い名前のようですので、どうぞタルヤと。」


シェリアはともかく、タルヤについては、流石に一度聞いたと心で覚えられる気もしない。


「その、タルヤ様は。」

「どうぞ、敬称などは省いていただけますと。はい、人種では無く、花精となります。生憎と、それらしい特徴は備えていませんが、これでもシェリアの3倍は優に生きているんですよ。」

「私が侍女として初めて城に上がった時からですもの。」

「当時は女傑レイン家の跳ねっ返りがと、それはもう賑やかな事でしたから。」

「もう、昔の話を。」


そうして二人がくすくすと笑い声をあげる。

能力、それも踏まえてだろうが少ない人数で、それも考慮しての人選なのだろう。


「どうぞ、これからも何かとご迷惑をするとは思いますが。」

「シェリアさんは、一度で頭に入りますが、タルヤさんは、正しくお呼びさせて頂く機会では、またお伺いするやもしれませんが。」

「お気になさらず。私としましても一々口にするのも疲れますもの。」

「また、そのような事を。以前も申し上げたかと思いますが、得る物も多い機会を頂けていますから。それは私だけではなく、神国そのものも。」


そうして、互いに一度頭を下げた上で話を進める。


「お目付け役、そう言ったお仕事もあるのでしょうし、私どもも公爵様に配慮する必要がある場面もありますが。」

「私としては、陛下を最上位においてほしいものではあるのですが。」

「申し訳ありませんが、公爵様を通してとなるでしょう。」


言われることに理解はある。封建制として、最高位は間違い用が無いのだから。ただ、一度顔を合わせただけの相手に対して、無条件に何かができるかと言われれば、それもまた難しい。


「そうですね。こうして監視の目が多い、それを考えれば望まれることはわかるのですが。」


近衛は、あくまで個人に仕える存在だ。そして、今は王家から借り受けている。先の発言の通り、今身の回りにいる人物は、アベルも含めて忠誠の対象は王家だ。

それは会話の節々にも、あまりに明確に現れている。


「誤解があるようですが、私とタルヤは王妃様からです。」

「おや、失礼いたしました。」


王家と、頭の中でオユキは括っていたため、そこで齟齬が多少あるという事らしい。


「立ち居振る舞い、これについては公爵夫人の責任となるのですが、それ以外ですね。外との連絡、それを常に報告することと、問題があれば。」

「ええ、有難い事です。手紙は王太子妃様からくれぐれもとのことでしたが、王妃様にも必要なのでしょうか。」

「折に触れて、挨拶以上の物をお願いできるのであれば。」


オユキから、改めて近衛として与えられた役割、このあたりは理解しているとそう伝えれば先方からもそれならばと情報が開示される。公爵がファルコに求めはしたが失敗し、結果としてゲラルドが付けられたように、王家からも未だによくわからぬ相手には、目が付けられるという物だ。

そのゲラルドにしても、今は部屋の扉、そこで待っている。

対外的に、家宰として用聞きの為、そう言った言い訳が立つ状況でもあるのだから。


「ゲラルドさんの前で書くことになりますが。」

「構いませんとも。それにしても、王妃様よりお伺いしていた異邦の方々というのは、こういった事に気が付くと、嫌気を覚えるとか。」

「慣れの問題でしょう。私は過去の経験から、職務に対して他人の目が入るという事に理解も慣れもありますから。」


そう、オユキにとっては特別な事ではない。

秘書、部下、法務、他の部署の責任者。ちょっとした書類のやり取りでも、実に多くの眼が入るものだ。そこに他の思惑が乗る、それ自体に慣れは無いが、提案した先で回し読みされている。そう考えれば特段不思議もない。


「それに、トモエさんとの時間は守って頂けていますし。」

「お二人の会話、それは聞き取れないのですよね。」


ここまで疑われる、目が置かれる。その理由についてもいい加減に理解が及ぶという物だ。

功績、それは何某かの効果を持っているという事が有る、そう言った理解も生まれた。ならば、戦と武技、それともう一つが持つ効果というのも想像がつくものだ。

どうにも、人前で有れトモエとオユキ、二人の会話と考えているものが上手く伝わっていないこともある。


「まぁ、このような席です。以前、王都で設けたこともあります。」


その時には乱入者もあり、落ち着いた時間という訳でも無かったが。


「そうですね。私はまぁ分かりやすいほうだと思いますが、何かあればお応えしますよ。それこそ神に誓って、嘘は無いように。」


トモエも、オユキの考えは分かっている、そのように言葉を続ける。

ただし、流派の事、それについてお話しできることはあまりに少ないですが、そう続けることを忘れる物では無かったが。

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