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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
12章 大仕事の後には
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第423話 人を使う

「まぁ、今回は事前に聞いちゃいたが。」

「予想の範疇ではありましたが、こちらの結果はそれの外でしたね。」

「メイの嬢ちゃんと同じだ。大任を果たしたんだ、一先ずゆっくりと。」


今後の事を考えて、アベルとしても苦い顔は浮かべている。それでもねぎらいの言葉を掛けはするが、それも直ぐに止まる。そして、動作を伴う溜息を一つ。


「そうしたいが、教会に運ぶんだったな、それの同行だけはしてもらわなきゃならん。」

「アベル様。」

「神授の品だ、所有権を移すにはどうしても本人がいる。」

「オユキ様については、カナリア様からも見立てを頂いています。こちらにお招きしてというのは。」

「無理だな。教会に納める必要があるのだろう。」


シェリアがアベルに色々と意見を言ってくれるものだが、それが叶わない。巫女二人、その辺りは納得済みだ。そもそもそれができるなら、大会とて専念できたという物だ。


「まぁ、そうなるでしょう。最低限、そうなるようには望みますが。」

「ああ、それは流石にな。そうなるとこの度の頂き物、流石に俺も見覚えが無いが、俺らで運べるもんかね。」

「使用人、いえ、近衛の方々は運べましたよね。」


オユキがそう確認するが、だからと言って、他で試したわけでもない。


「なら、まずはそれもか。第二は周辺警戒、近衛は護衛。となると、どうしても試さなければ無理だな。そっちの手配は。」

「リオール様に、まずは教会に話を伺いに行ってもらっています。」

「最悪、坊主たちで行けるか。」

「持祭の少女達では、どうでしょうか。かなりの重量がありますが。」


言われた言葉に、オユキは触れただけ、それを思い出す。軽々と運んではいたが、それこそ近衛。要は見た目通りの重さがある品であるらしい。


「あいつらで無理なら、教会の奴らも難しいだろうな。イマノルとクララも後から来る、一先ずあいつらに試させるか。」

「ここであれば、護衛の必要も薄いですから、第二の方々にと言うのも。」

「護衛と先導が無きゃ、囲まれて身動きとれんぞ。」

「まぁ、どうした所で目立つでしょうしね。」


トモエの背丈の優に倍、それほどの物なのだ。実際に中がどうなってるかは分からないが、それこそダンジョン、それに向かうために現れる門。恐らく似た物ではあるのだろう。


「オユキとアイリスはとりあえず馬車だな。トモエは、どうする。」

「私に選択肢が有りますか。」

「護衛の指揮を執ってもいいぞ。」

「流石に経験が有りませんから。」


トモエも戦と武技の神、その覚えはめでたい。それこそオユキとアイリス以上に。確たる位を頂いていないというだけなのだ。創造神に認められた人物でもあるため、神事であれば不足はない。


「トモエさんは、流石に私とアイリスさんが使うとなると、馬車は別となりますから。」

「そうですね。ついでにお土産も積んで、そうしましょうか。」

「まぁ、納めるには変わりない。問題は無いだろうな。」

「この場合、リース伯爵子女は。」

「教会側だな。お前の事だから、もう人はやってるんだろ。なら今頃大慌てで人を用意して、それが終われば教会で待機してるだろうよ。」


そういった慣習は分からないため、オユキは大枠として丸投げしたのだが。その辺りも今後学ばねばならぬ事ではあるが、それこそ、そういった部分を補佐するために、ゲラルドが預けられているということもある。


「また、何かと言われてしまいそうですね。」

「今回の事は予測があったわけだから、そうでもないが、まぁメイの嬢ちゃんからすりゃ、一言二言言いたくはなるわな。」

「それと、アベルさんにお渡しすれば。」

「そうだな。マリーア公には、メイの嬢ちゃんからになるが。」


アベルの返答に、オユキはとりあえずなる程と頷き、シェリアを見る。


「お手数をおかけいたしますが。」

「理解はしています。用意は、流石に司教様に話を聞いてからになりますが。」

「私も、いるのかしら。」

「当たり前だ。お前はお前で、国許に報告がいるだろうが。」


アベルが釘を刺せば、さも面倒とばかりにアイリスはため息をつく。


「皆さま、くれぐれも体調へのご配慮を。お二方とも、現在は加護を受ける事が出来ませんから。」


カナリアが横から、この後に行うべき業務を確認している者達に、釘をさす。そして、その言葉にトモエが直ぐに尋ね返す。オユキにしても、カナリアの言葉は気にかかる物だが、今後の事に意識を割いているために、反応が遅れた結果として。


「狩りは暫く様子を見てから、そうなりますが。」

「いえ、新たに得る物では無く、既に得ているものもです。」

「それは。」


カナリアの言わんとすることは、トモエにもわかる。だが、あまりに意外な言葉に二の句が継げない。そして、アイリス以外の誰も彼も、実に不思議と、何を言っているのか分からぬと、そういった様相だ。

そして、いち早くそれから抜けたシェリアが、疑問を代表してシェリアに尋ねる。


「カナリア様。既に得たはず、その加護が働かないというのは。」

「やはり、ご存知では無いのですね。」

「私も、当たり前と思っていたけれど、種族の差かしら。でも、食事と休憩の重要性は分かっているようだったけれど。」


人はわからぬことを、獣人と翼人が得心を得たと頷く。


「いや、それは定着に必要だからな。にしても、その口ぶりだと。」

「ええ、基礎の加護、それを常に働かせているんだもの。マナ、使うわよ、日常で。」

「はい。人によって割合も変わりますし、定量化も出来ませんが。そもそもマナの枯渇で命を失う、それが起こるのも、これが原因ですよ。」

「オユキは、日が浅いかしらでしょうね。あまり差を感じないのは。」


常に働く、意識せずとも。それが弱く、無くてもほとんど問題が無いからこそ、今もこうして歩くのすらだるいと、その程度で収まっている。そう二人に言われて、周囲、それを当たり前としていない種族から、次の疑問が上がる。


「そっちじゃ、当たり前のようだが。」

「そうね。祖霊の特徴、それを顕すのにマナがいるもの。」

「私たち翼人種は、加護が無ければあまりに骨がもろいですし。」


何なら、加護無く翼を広げれば、自重で付け根にひびが入りますよと。そんな事を笑いながら告げられる。


「だが、アイリスにしても、指輪があるだろ。」

「その辺りは、加減して頂けてるみたいね。」

「カナリア様、アイリス様。今の話は、改めて広く伝えさせて頂いても。」

「問題ないわよ。」

「はい。私たちにとっては、当たり前すぎる知識ですから。」


種族差、それはこちらでも、国交を結んで日が浅いからこそ、しっかりと横たわっているらしい。寧ろ、こうして同じ場で馴染んで暮らす相手は、互いに気になる部分、そこに注目して避けていたのだろう。

以前、イリア、今はこの場にいないその人物も言っていた。こちらでは、群れを育てる方法が違うのだと、そう納得して気にしなかったと。つまり、彼我の違いを、そのまま違いとして受け入れ、そこ以外で関係を積み上げていくのだろう。トモエとオユキも、そうしているように。


「他にも、色々ありそうですね。」

「それは、お互い様でしょうけど。そうね、時間もありそうだし、聞かれれば答えるわよ。私も気になることはあるもの。」

「私は、その。皆さまと違って、あまり時間が。」


オユキとアイリスは、祭りの準備がある物の、手の空く時間と言うのは、なんだかんだと多い。そもそもオユキはこちらの祭り、それに合わせて言われたことを。アイリスにしても、メイ、代官と話を詰めた後は、待つことの方が多いだろう。しかし、申し訳なさそうにするカナリアは違う。


「まぁ、そっちも重要だ。周囲が急かせば、そうだな、俺かオユキに。」

「そちらも手伝えるならと思いますが、まぁ、御覧の有様ですから。」

「私は、そもそも触って何も得られなかった以上、手伝えることは魔石集めくらいかしら。」


そして、リオールを待つ間、せっかくだからと事情を知る者達の間で、簡単に確認を行う。


「つまり、カナリアさん個人では。」

「得られた魔術文字、それを刻む為の短杖、銀板等は十分ご用意いただけていると伺っていますが、馬車の籠と、それを並べる場所が、ですね。」

「オユキの予想だと、空間を広げるとか、そんな話だったからな。」

「まぁ、それは私の落ち度でもありますが、よもや車を一つに重ねる等とは。ダンジョン、あちらのように別の空間に繋がる扉がなどと考えていましたから。」


改めて聞けば、色々と制限はあるが、今オユキ達の利用する馬車、それで有れば車の部分を6つ用意し、得られた魔術で重ねる者らしい。それで内側が6倍にならず3倍であるとのことだが。


「実際に比べて、少ないのは。」

「そもそも、魔術と言うのは、そういう物ですから。」


そう言う事であるらしい。


「にしても、今回の魔術は随分と融通が利くな。」

「いえ、他の物も色々と手を入れられますよ。文字を学び、理解を深めれば、これまでは難しかった文字とも繋げますから。」


そういって、カナリアが大きくため息をつく。魔術、その学問が軽視されている現状に。


「優秀なのは、隣国に行くからな。」

「それは、そうなんですけど。」

「試作はまず陛下に、そうなっていますが。」

「カナリア、それは後から外装の変更が利くものか。」

「難しいですね。外装まで含めて、一つの魔道具としての回路を組みますので。旅の間も気を付けてくださいね、壊れれば、ばらけますよ。」


便利な道具、それにはしっかりとした不便が与えられる物らしい。

通常の馬車以上に荷物を詰める、それに甘えて対策を疎かにすれば。そこでばらけて乗り切らない、引く馬がいない車が大量に増えると、そういう物であるらしい。


「一応、簡単な修復、調整は魔道具ですからできますが。」

「その辺りも一度調べなきゃならんか。」


オユキにとっても馴染みのある破壊検査を行う事になるらしい。


「馬車の車、6台分ですか。」

「陛下にまずお渡しする以上、避けられない物でしょう。」

「場所をどうするかが、まぁ、問題だな。」

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