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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
12章 大仕事の後には
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第415話 予定は未定

公爵との時間。その前にオユキとアイリスは勿論やるべき事が有る。


「急な変更ではありますが。」

「は。しかし。」

「ご懸念は分かります。」


要は第二騎士団。元々半分は予定外の戦力。それに対して教会を建てるための道具、それが置かれている場の護衛を改めて頼まねばならない。

場所は当たり前のように町の外。新たに生まれた支流の側だ。

公爵の方でも、現在計画を立てている最中ではあるが。この支流も河沿いの町に組み込まれる。そして新たに用水路、利用した物の浄水施設、そういった物を作らなければならない。急ぎ計画しなければならない物だが、当然後任との相談もあり、直ぐに手を付けられるわけもない。結果として、暫くは魔物と他の者からこの場を守る、その必要があるわけだ。

追加の戦力も追々派遣されるだろうが、それにしても差が大きい。信頼できる相手に任せたいものではあるのだ。万が一、それが起こってしまえば、それこそ冗談で済む物では無いのだから。


「陛下には、公爵様から間違いなく。」

「難しいとは分かりますが、それが決まってからという訳には。」


そして騎士達にも理解はある。しかし今は王命との板挟みとなるため、オユキの話にそう返すしかない。その理解はある。


「こちらについては、手を願った方からご想像頂けると思います。」


本来であれば、そちらの人員にも説得を手伝ってほしくはあるのだが、今はそれこそ仕事の真っ最中だ。そちらを放って置いてと、そう願えるものでもない。


「私からも、言葉は添えさせて頂きます。」

「畏まりました。しかし、一部として頂きたい。」


彼らとしても、そうするより他はない。勝手に全てを反故にしてしまう、そんな事は許されない。王制という仕組みである以上。彼らの矜持に懸けても。


「はい。そこまでを望むことはありません。実際の調整は、陛下と公爵様の間で確かに行われるでしょう。そして、公爵様から新年祭迄には、そうお言葉もいただいています。」

「畏まりました。では、こちらでも改めて人員の再編を行いたく。公爵様の麾下では、どなたが。」


やらなければならない。王とて神に保証を願っている。その前提があるのだから否は無い。あくまでも、このやり取りは様式という物だ。騎士たちは確かに王命を尊重した。巫女としてオユキが、その庇護者たる公爵が、無理を願った。故に彼らはかろうじて言い訳が通る。板挟みではあったが、王も尊重する神を優先した。その苦渋の決断を行ったのだと。

後で改めて王から追認、併せて発した王命の解釈、その正統を保証する書簡が届く事だろう。


「ええ、ご紹介させて頂きます。」


そして、事前に公爵から話を聞いていた相手を紹介する。領都、今となっては随分と昔の事に感じるが、そこで初めて顔を合わせ、以降も道中なんだかんだと話をした相手だ。公爵の護衛、それを任される人物、それほどの者がこの場の警護、その指揮をとる事になる。

流石に、そこからの話し合いにオユキがなにを口出せるわけもなく、その場を任せて公爵の元へと戻る。

アイリスからも、別れ際に改めて後は任せると、そう残して。

少年と子供たちは、実に慣れた様子で今も教会側の手伝いに奔走しており、王都からの土産。その予定であった布、装飾、そういった物を寄付するための手続きをしたりとそちらもなかなか忙しい。ここを明日には離れなければならないのだから、色々と時間が無い。そちらの様子も気になりはするが、公爵の前に連れて行かれたカナリア、まずは巻き込んだ彼女をどうにかしなければならないのだから。


「お待たせしてしまいましたか。」


持ち込んだものが持ち込んだものでもあるため、どうにも周囲の目を集める。それこそついてくれている騎士達や、近衛の手によって道が塞がれることは無いが、慌ただしく移動という訳にもいかない。教会の設置場所、そちらは町の外。魔物のいる場に出られる物ばかりではなく、町の中にそれを持ちこんだ一味が戻ってくれば、らしい振る舞いと言うのも求められるものだ。

オユキとアイリス、トモエから直接言葉は返すことは無かったが、色々と上がる質問の声、それに対しても対応しながらとなるため、相応の時間をかけて公爵の屋敷に訪れる。

そして通された先では、すっかりと憔悴したカナリアとイリアが長椅子にそれぞれ伸びていた。何があったかは、聞くまでもない。機密情報、その取扱いに対してきっちりと釘を刺されたのだろう。


「全く、随分と色々あったようだね。」


そして、イリアから慣れた言葉がかけられる。


「シェリア様。どうぞこの場では。」


そして、それを許さない相手から、威圧が行われるためオユキがそれを止める。二人で森を、それも一人を守りながら、それができる相手ではあるが、毛が逆立ったのが見て取れる。トモエとも話しはしたが、やはり加護込みではこちらもどうにもならない相手だ。屋内戦、その想定が強く何故大会に出なかったのか分からない、それほどに人を想定した動きを行う相手だ。総合で見てしまえば、第二騎士団よりも数段上、そのような人物なのだから。

道すがら、少年たちが興味を示したこともあり、トモエが暗器の説明を行っている時に、不作法にならない程度にこちらに注意を向けていたのだから。


「オユキ様がそう言われるのでしたら。しかし、くれぐれも公の場では。」

「ああ、そのすまないね。今は巫女様なんだったね。」

「私にしても、あまり自覚は無いのですが。公私、その区別は今後もせねばなりませんから。」

「アタシの方も、いやって程言い含められたさ。」


会話に入ってこないカナリアに、イリアも視線を向ける。彼女の方は仲のいい相手、良く護衛をしている、そういった者としてだろうが、カナリアは既に魔術を得た。扱いは大幅に変わる。

成果を急ぐ、その理由もありしっかりと圧を受けただろう。始まりの町では、まず無いではあろう類の。


「カナリアさんは、魔術ギルドを抜ける形になりますか。」

「らしいね。ギルドの方じゃ、変わらず魔石の仕事が多い。で、籍を入れてりゃ、手伝わなきゃいけないって事らしい。」


ダンジョン、そちらも手を抜けない。特に河沿いの町、その拡張のためには必須でもある。


「オユキさん。」


そんな話をしていれば、話題の当人がのろのろと身体を起こして、じっとりとした視線を投げかけて来る。


「どうぞご不満があれば、神々へ。」

「それが出来ないから、オユキさんに言いたい事が有るんです。」

「流石に今は難しいですから、始まりの町に戻ってから改めて伺わせて頂きますね。お土産もありますし、言いたいことがある人は、多いでしょうから。」


そう。一言二言、それで済まないだろうことはオユキとて覚悟している。


「ただ、そうですね。シェリア様。」

「ええ、周囲に耳はありません。ただ。」

「いえ、構いません。早速で申し訳ありませんが、カナリアさんが得られて魔術、恐らく馬車に使う魔道具。いえ、馬車を魔道具にするのでしたか。」


近衛の気遣いはあるが、そちらは問題ない。王に報告するだうが、その先は無い。そもそもそんな人物が、その肩書きを得られることは無いのだから。


「はい。未だ分からない物もありますが、刻めば得られる効果は、馬車への物です。複数の籠を一つに纏める魔術。結果として、外観は同じですが、内部の空間は大幅に広げる事が出来ます。また重量の軽減、それをこれまで以上の物とする魔術と、簡易の魔物避け、短杖の補助も要りますが、それを可能とするものの二つです。」

「そちらは、想像通りですね。恐らくあと二つか三つ、あるかと思いますが。」

「オユキさん、魔術が使えないのによくお分かりですね。はい、私の研鑽が足りず、分からない物が未だに三つ。」


色々とヒントは得ている。それを考えれば、想像もつくという物だ。

随分と過保護な、そう思う反面、それだけ色々とやらなければならない事が有るのだと、オユキは気が重くなりはするが。そればかりは仕方がない。それと、カナリアの勘違いについても、言及する必要がある。公爵、そこから連絡が行くだろう相手も含めて。


「足りないのは、カナリアさんの研鑽という訳でもありませんから。」


そもそも、この功績自体はトモエとオユキに与えられた物だ。つまり足りていないのは、それを授かった者。そういう事だ。


「そう、なのですか。」

「はい。それに、そのうちの一つは降臨祭、それを無事に務めれば得られますよ。」


それを感じさせる会話の流れは、すでにあった。

そして、その為に必要な物を運ぶ、その体裁でトモエの目的を果たすことになる。道行は仰々しくなるが、安全度は一気に跳ね上がる。

魔術として得られていないのに、なぜわかるのか。そう怪訝な視線が注がれる中、オユキはそれをさっさと口に出す。実際にどのような物かは分からないが、今後は為政者たちはそれも計画に組み込む必要がある。

国内の力関係、それを大いに乱すことにはなるが、そこはまぁ、アベルと、散々恩を売った次代の王に任せるしかない。


「教会に置くことになるでしょう。その辺りはロザリア様に確認も要りますが、都市間を直接移動する、その術を頂けるようですから。」


だから、オユキもカナリアを選んだ。魔術師であり、奇跡の使いてでもある彼女を。

色々と合わせてと、そういった話はいつぞやにアイリスからも聞いている。ならばそこから思い至る物もあるという物だ。癒しの奇跡、由来は水、しかし種族としてみれば、翼を持つものに風の加護が無い、その様な事もないだろう。流れ巡る物、その最たる二つ。その加護を得ているというのは、実に都合が良い。

そして、恐らくこれにしても前倒しになったものだろう。本来であれば彼女は、既にいないはずの人員なのだから。元の予定、既に表に出て、認識している物、それを基本とするならミズキリも話せるだろうと、オユキはそのように考えている。だから今この段階で改めて、それを目論んでもいるのだから。

気軽に放り投げた発言は、驚きをもって迎えられたようで、その場は暫く誰も口を開かない。

さて、かつての世界。結局ゲーム内の設定と、誰もが、何処かで信じ切る事が出来なかった。だから多くの事が停滞した。そして、だからこそ何度も開発陣は繰り返したのだろう。もう一つの世界、そこで遊んでいるのだと。

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