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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
12章 大仕事の後には
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第410話 一先ず

「さて、改めて今後の方針であるが。」


食事が始まってから少しの間、どうにもならない空気が流れたが。どうにか持ち直して公爵が口を開く。

今後の方針、それについては今後メイから更新されることもあるだろうが、一先ずはここで正式に、出立前に所感として受け取りもするが、聞いておかなければならない。勿論、内容によってはオユキから意見を伝えることもあるだろう。なんにせよ、公爵とはここで少しの間別行動となるのだから。


「大筋は想定の物と変わってはおらん。ダンジョンを使う。それであるな。」

「ええ。それは変えようもないものでしょう。」


そして、起点がなにになるか、そこに変更はない。


「ああ、シグルド、リース伯を超えて、そう感じるかもしれぬが、そこも話はついておる。所属としては、その方らはまとめてファルコの下。そういう形になる。」

「あー、メイのねーちゃんの所ってのは変わらずって事だよな。」

「うむ。そこは動かぬ。安心せよ。つまるところ、其方らにもダンジョンに入ってもらう事になる。そして、狩猟者としてだけ動くのであれば、やはり魔石。それを狩猟者ギルドと協議する必要がある。

 今回は素地ができておる故、無用な事は避けられるが今後は違う故な。」

「えっと。」


省略している内容も多く、ここまでの流れを汲んでの言葉だ。少年たちは流石に理解が及んでいない。そもそも重要な前提条件などは、やはり彼らがいないところで話したのだから。

シグルドは食事の手を止め考え込み、他の者達もどうにか咀嚼しようとしている。トモエとオユキにしても、せっかくだからとそれを待つ。もしくは補助をするにしても、メイかファルコがこの場であれば良いだろうと。


「あー。あれだ。前に聞いたけど、要は用途が違うから分けるんだよな。その方が分かりやすいから。だけど、狩猟者やめんのはなぁ。」

「ああ、その必要はありません。一先ずはどちらにも所属してもらいます。」

「いや、流石にそれだと収集品の分類が面倒じゃね。日毎で変えりゃいいのか。」


シグルドなりの理解ではあるが、凡そ正解だ。不足している部分も問題になるような物では無い。それこそ、その形態が今後折を見て変わる、それに過ぎないのだから。

ミズキリが以前話し、その場で協議が行われいくつかの組織図が選択されている。今後そのどれが最もよく回るか。それを試すのだ。今後の変化、それを見極めながら。ここもやはり同じ。場当たりでもやらなければいけない事が有る。そして作った時間で別を。


「えっと、それだと、トロフィーとかも。」

「いや、基本は狩猟者ギルドだ。魔石の分配が主だな、今の所は。」

「おー、そんなもんか。」

「後は、変わらずダンジョン、そこから得た物は領主の物になる。一先ずはそう覚えておいてくれ。」

「つっても、俺らだけじゃダンジョン、無理だぞ。変異種が出るらしいし。」

「どちらかと言えば、道中だな。露払い、と言うと気を悪くするかもしれないが。」


公爵では無く、ファルコがシグルドの質問に応える。年も近い。同じ相手に習っている。その気安さがあって、他の子供たちからも矢継ぎ早に声が上がる。

そして、それに対し的確にファルコが応えていく。時に彼の範疇を超える物はリヒャルトが口を挟みはするが。

こちらにしても、次に王都に向かう時。それを想定して、早速とばかりに、練習の場を用意されているらしい。ただ、そちらについては時期がずれたこともある。次に向かう時まで、この計画のままかどうかは、といったところではあるが。

ファルコが学び舎を止めた。その事実を受け止めた上で、他の家にしても相応の手を打つ。そして、気の早いものはついでとばかりにそこで作った派閥、それ毎になるだろう。それにしても、ファルコがすでに二人を引き抜いた事が有る。


「でも、やっぱり色々と手間が要りますね。」

「そればかりは諦めてくれ。」

「ま、それが良いと思っての事だろ。やってみてこうしたほうが良いんじゃね、そう思った時には、俺らもまた言えばいいだけだし。」

「でも、ジーク。」

「いや、それでいい。勿論他にもダンジョンに入る人員、その用意はある。どうかそれぞれ気兼ねなく報告をしてくれ。その為に私も人を頼んだ。リース伯爵子女にしてもな。」


そうして、ファルコがメイに視線を投げれば、彼女もそれに頷いて答える。


「皆様の作法もあります。私の方でもそれなりの人数を。」

「あー、それもあんのか。ま、やらなきゃ忘れるしな。」

「まぁ、そういう訳でな。後は、そうだな。始まりの町に着いたら、改めて教会で話そう。」

「ってことは、あっちでもガキどもに手伝わせんのか。ただなぁ。」

「うん。少しの間は大丈夫だけど。」


そうして子供たちが言葉を濁す。ただ、それも勿論織り込み済みではある。そもそもこちらの貴族、その大きな仕事だ。配慮しなければいけない。そして、その時期に仕事が増えるのだ。その手伝いも含めて、新しく貴族家の5人が中心となる。結局代官であった人物とは、オユキは面識を得ることは無かったが。


「それに、降臨祭、ですね。そちらについては、私も手伝えることがあるでしょうから。」

「オユキは、そうよね。私も今回は遠慮させて頂くけれど。」


その話が出た場には、アイリスもいたのだ。


「えっと、アイリスさんは、無理なんですか。」

「私たちにとっての降臨祭は、祖霊になるのよ。気にしない物は参加するでしょうけれど、そうでない物はそれぞれに行っているでしょうね。」


こんな事なら、仮面をあの時買ってくればよかった、そう呟く。


「あー、そういやあんま見ねーもんな、降臨祭の時は。」

「巫女アイリス、要望と言う事であれば。」

「あら、いいのかしら。まぁ、一度話してみて、望むものが多ければそうしようかしら。私の部族の物は少ないでしょうけれど。」

「祖霊、その種類によって変わりますか。」

「何も一つの種族で集まるところばかりでもないし、それでも気にするなら、変わらずそれぞれで行うでしょ。」


困ったことに、トモエとしては、どちらの祭りも興味がある。しかし身は一つ。であれば同じ場所でと、そう望むものではあるが、口ぶりからそうもいかないのだろう。そして、悩んでいるからという訳でも無いのだろうが、アイリスからトモエに誘いがある。


「トモエは、こちらに参加するのかしら。」


以前アイリスに獣人の血、それを示唆されたこともある。ならば、確かにその選択もあるのだろうが。


「今回は、教会でお世話になるかと。オユキさんのこともありますから。」

「まぁ、貴女ならそうでしょうね。」

「ふむ、話が逸れておるな。そちらも重要ではある。始まりの町で、それぞれにしっかりと話し合うといい。それについては各町の統治者、その権限で行えるものであるからな。」


脱線を始めた会話を、そう公爵が止めて元の流れに戻す。


「その方らにとっては、これまでと大きく変わることは少ない。無論報告の義務は増える。それを手伝おうと、そう思ってくれるのであれば、誰もが喜ぶだろうが。」

「あー、報告か。報告書ってなると。」

「学ぶ意思があるのなら、私から教える物を貸しましょう。」


そうメイが切り出すが、少年たちの反応が揃って鈍い。唯一興味が有りそうなのはアドリアーナくらいだ。その様子に一部から苦笑いが漏れる物ではあるが。

どうにもこれまで見た事もないものだからと、そう気後れしているのだろう。


「習うには、簡単な物ですよ。定型がありますから。」

「そうなの、オユキちゃん。」

「はい。そもそもそれで収まらぬことが起きれば、報告書などと、悠長な事が言える状況では無いでしょうから。」


勿論、それにしても最終的に書面に残す必要はある物だが、それこそ別の得意な人間がまとめる。その時は口頭でも構わないし、例外として、その時の事例に合わせた物を習うしかない。


「じゃあ、その、メイ様お願いしても。」

「ええ、勿論です。」

「でも、あれだ。教えるのにかける手も惜しいってなら、そう言ってくれていいからな。忙しいんだろ。」

「はい。」


シグルドがそう言えば、メイはただ肩を落とす。


「リヒャルト、良く補佐するように。」

「分かっています、御爺様。リース伯爵子女、私の方でもいくらか人を連れて行きます。常にとはいきませんが、それでも出来る限りは協力を。」

「ありがとうございます。」


さて、大枠の話はあった。それはそれとして、オユキからも確認しておきたいことはある。


「今回持ち帰った魔術文字、そちらについてですが。」

「後で我からも手紙を渡す。それを魔術ギルドに。その方らも、顔見知りの相手がおると聞いている。」

「では、その方を通して助力を願うとしましょう。」


どこもかしこも忙しくはあるのだが、そればかりは少し優先してもらうしかない。正直、今後を考えれば必須なのだ。そして、試作が完成すれば、それを新たに作るための技術資料と共に、まずは王都に送り出さなければいけない。その次は公爵になるだろう。その上で、オユキ達が他国に向かう、それにも使える物を最終的に仕立てる事になると、今はそう聞いている。巫女として、それが先に立つために、どうしてもそれなりの仕立てにしなければならないのだ。

それでおこるだろう面倒、避けられるだろうもの。比べてしまえば後者が圧倒的に多い。特に目的が神殿の観光だ。巫女がそれを望み、足を運ぶ。そうなれば断れるような物では無い。


「特別なことは無く、いつも通り。ですがやはり少々忙しい。そうなりそうですね。」


トモエの言葉に、オユキは表面として同意しておく。

この後あの気のいい友人をアベルと共に問い詰め、そこで何が出て来るか。それ次第という物だ。最初に話した内容を振り返れば、これから残りの知人がこちらに来る予定も恐らく知っているのだ。その辺り、ここらで問い詰めておく必要がある。

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