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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
12章 大仕事の後には
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第406話 久しぶりの領都

急いではいる。それは確かなのだが、準備とて必要でもある。特に公爵とリース伯爵は。

今後の体勢、それぞれが今拠点としているこの領都、そこから誰を送りだすのか。そしてそう決まったものは、それに対応するための準備を整えなければならない。

それ以外にも、やはり疲労もあるからと、こうしてしっかり休める場所で、四日程ではあるが、まとまった休憩をとる事となった。準備期間も兼ねての物でしかないが。


「そういや、お前等所属はどうなる。」


トモエとオユキは、領都での生活の場として与えられた屋敷で、昨日の夕方到着してからしっかりと休み。朝はこうして、久しぶりにゆっくりと食事をとりながら、今は客間にいる相手と食卓を囲んでいる。

ホストとしての差配は流石に不慣れであるため、それを行う執事迄つけられているのは、まさに至れり尽くせりといった様子だ。


「今後は決まっていますが、今は。」

「先輩ばかりと思っていたけれど、その、私も不足が多いみたいで。」


この場には大人組。アベル、アイリス、イマノル、クララ。そう言った者達が顔を揃えている。イマノルとクララについては、当主は流石に直ぐに移動が出来る訳もなく、先行でとなっていることもあり、やはりまだ浮いているらしい。


「今後を考えれば、独立した家として。そうなるのでしょう。ならば扱いもそれに準じたほうが。」

「筋を言えばそうなるが、頼みたいことも多いからな。それを言えばアイリスにしても、こうも楽にさせちゃおけん。」

「まぁ、そうよね。でも、私はまだ戻るつもりはないけど。」

「頼むから、やり取りだけはちゃんとしてくれよ。」


アイリスとて、恐らくは部族の長、それに連なる者だ。報告すれば、既に王都からそのための人員は出たのだろうが、一度戻れとそう言われるだろう。


「ここにいる方々は。」

「あー、他の使用人がいる。」

「畏まりました。アイリスさんにも、王太子妃様から。」

「ほんとうに、あいつらは。」


拠点間の通信機能。それがどの程度の事が出来るかは分からないが、王太子妃から、王都を立つ直前に今後もこうして連絡をとり合うようにと。手紙だけでなく、王族からの正式な要望として巫女オユキに届けられている。

それを見た公爵の顔は、なんというか、いつか見た記憶がある物ではあったのだが。


「あとは、そうですね。皆さんにも手を借りたいのですが、相応に銀を。」

「銀、ですか。武器にするには。」

「イマノル。」


アベルが名前を呼ぶだけで、疑問を続けようとしたイマノルが、すぐに口を閉じる。


「公爵様が手配するだろうが。」

「私たちが持ち込むのですから、私たちからも相応に必要になるでしょう。」

「それもそうか。アイリスも、構わないんだったか。」

「ええ。どのみち分からないまま持って帰っても。私たちのは基本は祖霊に依るものだもの。」


魔術ギルドへの心づけ、それもあるが得た物はあくまで魔道具として組み立てる事が前提と、その予想がある。ならば試作の為にも、間違いなく必要になる。公爵にも事前に話、相応の量の約束は得ているが、持ち込む本人からもあってよいだろう。


「後は、気兼ねなく話せる場所ですが。」

「ま、それもいるだろうな。それとアイリス。始まりの町では、お前とそこの二人の家は一先ず同じだ。」

「あら、いいのかしら。」

「流石に分けるには近衛が足りん。」

「私たちは構いませんよ。あの子たちも遊びに来るでしょうし、他の方を招くこともあるでしょうから。」


特に、書類仕事。公爵へ渡さなければならない物品の管理や、その手配。公爵からも管理ができる人員は出されるだろうが。


「私たちとしても、今後を考えれば、家令、家宰どちらが伝わるか分かりませんが。」

「お前らの場合は、執事と家令、近侍は必須だな。今頃公爵が選んでいるだろうが。王家から下賜された馬もいる。厩舎の責任者、侍女。流石に直ぐに全てとはいかんが。」


そういってアベルがイマノルとクララを見て、ため息をつく。


「厩舎の管理なら。」

「護衛なら。」

「お前らが出来りゃ、話は簡単なんだがなぁ。」


揃って胸を張って返ってきた返事は、元上司を満足させるものではなかったらしい。さらに一つ、重たいため息をついて頭を抱える。


「馬については、一先ず第二の方々に頼めない物でしょうか。」

「それ以外ないだろうよ。流石に公爵も厩舎の用意まではしてないだろうしな。最悪家で纏めて預かるさ。」

「おや、と言う事は。」

「ああ。条件を伝えたんだろ。少し奥に入るが、傭兵ギルドの裏手だな。外周区にしても、門が近い。安全性は確かだ。」


どうやら、随分と便利な土地を頂けるものらしい。今後、町の拡張については、まずは東西にと聞いている。ならば当分の間は、実に利便性の高い場所となる。

今与えられている領都の屋敷は、やはり中央に近く、何かと不便なこともあるのだ。公爵としては、今はひとまずそうせねばならない、それもある。南区の騒動は、未だに治まっているわけもないのだから。

そして、ここで得られた日程。その中でトモエとオユキも色々とやりたいこともある。今朝のこの時間は、領都での短い期間。それをどうするかというのもあるのだから。


「私としては、一先ず気に入っている得物を要してくれた方に、改めて挨拶と手入れをお願いしたくありますが。」

「どこの工房だ。」

「東区のウーヴェ工房、確かその看板は東区では一つだけと聞いていますが。」

「なんだか、随分懐かしく感じるわね。」


そうトモエがまず話すが、オユキとしてはそれは確認が必要な事項に入っている。


「トモエさん。以前のメイ様の言葉があります。」

「ああ。確か始まりの町に招くとか。」

「なら、そっちはまず人をやって、確認だな。後は手土産の類か。前もここでチーズやら買い込んで来ただろ。」

「どれほど積める物でしょうか。」

「そっちは俺と近衛で今いる使用人と話して置く。」

「お手数かけます。」


そこからもいくつか買いたいもの、そう言った話を進めた上で、それらは全て使用人がという結論に落ち着く。


「何か、新しいものがあればとも思いますが。」

「あなた達ね。せっかく時間が取れるのだから、街歩き位しなさいよ。」


あれもこれも引き取ると言われ、トモエが少し不満げにすればアイリスからただただ重たいため息が返ってくる。そして賢しらに言葉をかけたクララからも、突き刺さる視線がある。


「ですが、大仰になりすぎませんか。」

「それはもう、諦めるしかないでしょう。公にとそう言ったのだから。」

「それもそうですか。なんと言いますか、以前ただの狩猟者としてお会いした方には、結果としてとなりますが。」

「そうですね。改めてご縁のあった水と癒しの教会にも伺いたいですし。」


一時はエリーザ助祭が始まりの町まで同行する、そうい話も出た。ただリザのこともあり、それでもと言うのであれば、ゆっくりと移動を。そう話しが纏まった。

公爵が借りた、リザ助祭にしても、未だに王都に残っているのだ。水と癒し、その奇跡の担い手は引く手数多どころの話ではなくなっている。本人と会って話した折には、戻る意思はある。未だ神殿は早いとそういった事を言っていたため、後続に合わせて戻って来るかもしれないが。手放してもらえるのか、それとも神殿から人員の供出を求められる正式な書状を手に戻るのか。


「ですが、そうなると戦と武技、そちらを先にしなければとも思いますが。」


トモエの言葉に、巫女としての位を正式に得、それを使うオユキが声をかければ少し考えたアベルが口を開く。


「それこそ、聞くしかないな。」

「では、あの子たちがすぐにでも行くでしょうから、お願いしましょうか。」


そうして話していれば、意外とトモエとオユキは、今日、直ぐに。そう言った事が無いのだと改めて気が付く。そうであるなら、それこそ街歩き。慣れた魔物を。そうしてもいいかと二人で顔を見合わせる。

アイリスについては、王都で進めた手続きを元に、こちらでもまたギルドでの手続きが残っている。それを手伝う事などできるはずもない以上、いよいよ二人の時間とする事も出来るのだ。

少年たちは、リース伯爵、と言うよりもメイとの話し合いの結果がある。教会については理解があるだろうが、戻ってからの事、それを話す時間も大事なのだから。

ここまでの道中、そう言った話は流石にできていないこともあるのだから。


「偶然できた時間です。久しぶりに二人でと言うのもいいものでしょう。」

「そうですね。やはり体も固まっていますし。」

「街歩きに行ってこい。」


話の向きが傾きそうになったところに、有無を言わせぬ口調でアベルに言われたため、トモエとオユキ。揃って肩を竦める。王都では結局使う機会の衣服もある。なら、それを久しぶりに使うのもいいだろう。使っていない一着もそれぞれに持っていることもあるのだから。

そうして予定が決まり、朝食も話ながら進めていたため、終わっている。ならば身支度をとそう思えば。


「そういえば、オユキは侍女いなくても、用意ができるのかしら。」

「いえ、トモエさんにお願いしますが。」


オユキが迂闊にもそれが当然と答えれば、クララにそのまま連れて行かれ、長い話し合いをすることになった。ゆっくりとした朝であったため、恐らく出るころには昼を過ぎる事だろう。

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