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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
2章

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第39話 新しい朝

「おはようございます。よく眠れましたか?」


オユキが目を覚ませば、すぐ隣にある顔から、そんな声がかかる。


「はい。思いのほか長く眠っていましたか。」

「そうですね、私も明け方ではなく、こうして日の昇っている時間に目を覚ますのは久しぶりです。」


そう二人で話しながら、どちらからというわけでもなく、起き上がる。


「オユキさん、足の具合はいかがですか?」


オユキは室内でもあるので、無理に強く踏むことはなく、数度捻った足へと体重をかけてみるが、違和感も痛みもない。


「問題はなさそうですね。昨日ミズキリが言っていましたが、やはり治るのが早いようです。

 場所の確認のため、一度お医者様にお伺いして、そこでまず診て頂いて今日の予定を決めましょう。」

「そうですね。それにしても、こちらの医療費はどの程度なのでしょうか。」

「分かりませんね。お伺いした時に、お尋ねしてからにしましょうか。

 こちらに来るにあたって、十分な資金は頂いていたように思いますが、そういえば、こちらの衣類ではどれくらい使いましたか?」


オユキがそう尋ねると、トモエが外してひとまとめにしていた装備から、一つの小袋を取り出す。


「食費に比べると、かなり高額ですね。やはり工業化されていないからでしょう。

 オユキさんから頂いた分すべてで、この量の衣類ですから。

 私が頂いた分は、すべて残っていますので、一度の診療くらいであれば、問題ないかと。」

「それは、今後も気を付けないといけませんね。」


そういうと、オユキもトモエも、そこまで広くはない空間であるがその中で体を伸ばし、曲げ、柔軟を行う。


「やはり、こう、体が思うように動かせるというのはうれしいですね。」


晩年は、どうしても節々が固まり、今ほど思った通りに、思った以上に体が応えてくれることはなかった。


「トモエさんは、昨日かなり負担をかけてしまいましたが、不調はありませんか?」

「体が重く感じますが、これは疲労ではなく、本当に感覚的な重量の部分ですね。」

「そうでしょうね。私も体が軽くて心許ない、そんな感覚は抜けません。」

「少なくとも、二月はかかりそうですね、違和感に慣れるまでは。

 ところで、魔術と呼ばれるものは、どのような物でしょう。

 その中には、怪我を癒すようなものは無いのですか?」

「はい。ありましたよ。ただ、私は以前のゲームでは、結局扱えませんでしたから。」


オユキは、柔軟を、オユキが思う以上に柔らかい体に驚きながら終える。

以前はゲームに使えそうだと、そんな理由からそういった技術に手を出したこともあり、体は、同年代、何もしていない相手に比べれば柔らかに動いたが、トモエほどではなかった。

今は過去に見たトモエ以上に、柔らかに体が動く。


「そのように仰っていましたね。今回はどうでしょう。

 私も興味はありますので、一度魔術ギルドでしたか、伺ってみたいと考えていますが。」

「ええ。いいですね。昨夜も言いましたが、何も私の行いをなぞる事もないでしょうから。

 この町にもあるはずですから、一度伺って、話を聞かせていただきましょうか。」


そういって、二人で連れ立ってまた一階へと向かう。

こちらの人々は、勤勉であるらしく、食堂にはすでに人がまばらとなっていた。


「おはよー。どうする?すぐご飯にする?」

「ええ、おはようございます。

 そうですね、いただけますか?」


オユキがそう答えれば、フラウはすぐにパタパタと駆けだす。

彼女にしても、二人が起きだすより早く、こうして家の仕事を手伝っているのだろう。

そうして、空いている机の一つに、二人で座ると、昨夜の夕食とは変わり、野菜のサラダ、果物らしき物、膨らんでいるパン、それにヨーグルトのようなものが並べられる。


「はい、どうぞ―。足りなかったらお肉焼くよ。燻製したものになるけど。どうする?」

「私は、大丈夫です。トモエさんは?」


オユキがそう聞けば、トモエは少し考えるそぶりを見せ、応える。


「そうですね、いただけますか?」

「はーい。」

「オユキさんも、少し私からお分けしますので。卵でもあれば、それでいいのでしょうが。」

「燻製されていれば、油も落ちているでしょうから、少しなら口にできるでしょうか。」

「調理法次第でしょうね。私も久しぶりに料理をしてみたくありますが。」

「そうですね。私もトモエさんの作ったものを、頂きたく思います。

 少し慣れてきたら、いろいろと、そうですね、いろいろと試していきましょう。

 今度は、私が覚えてみるのも面白そうですし。」


そういうと、トモエは少し苦い顔をする。

オユキの生前、ほとんど料理など作らなかったことを思い出しているのだろうか。

もしくは、たまに作った物、それこそ肉を焼くだけ、お湯を入れるだけ、それを料理と呼んだことだろうか。

そう、思い当たる節が、確かにオユキにはあったが、トモエの懸念は異なった。


「そうですね、ただ、昨日の事を思い返すと、台所の高さが不安ですね。」


言われたオユキは、それがあったかと、そう思いいたる。


「こちらの方は、私達のいた場所よりも、平均値が高そうですから。

 少し、そのあたりも考えて、設定をさせていただいたほうが良かったでしょうか。」

「構いませんよ。それで不便があったとしても、納得したのは私です。

 それに、思い入れもあったのでしょう?」


そういうと、トモエは少し恥ずかし気に、はいと頷く。


「なら、構いませんよ。

 不便を楽しむことなんて、それこそ慣れた物です。お互いに。」


そんな話をしているうちに、フラウが焼いた大振りのベーコンを持ってくる。

さて、多くの人がおいしそうだと、そう評するだろう、きれいに白い油が層を作るそれを見て、オユキは思わず身を引いてしまった。

そして、そんなオユキをフラウが咎める。


「もー。好き嫌いは駄目だよ。ちゃんと食べないと大きくなれないんだから。」


昨晩と同じ言葉に、オユキは苦笑いをするしかない。

苦手意識、それこそ晩年は脂が胃もたれをもたらしたこともあり、あまり食べていない、そんな時間が続いたことに加えて、この体は、あまり食に積極的ではないようだと、そんな実感をオユキは得てしまう。


「ええ。大丈夫ですよ。私のものを分けますから。フラウさんは、好き嫌いなく?」

「うーん。好きじゃない野菜もあるけど、でも、食べるよ。」

「それはいい事ですね。」


そう、トモエがほめると、まぁね、そういって直ぐに何処かへと移動する。

そんな姿を目で追いながら、オユキとトモエは食事に取り掛かる。

そして、生前とは逆に、オユキが食事を終えるのを、トモエが待つと、そういう結果となった。


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