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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
11章 花舞台
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第371話 神話:過去

「今更と、そう受け取られるかもしれませんが。」


外観、その説明を聞きながらも、色々と興味の赴くままに説明してトモエが改めて、そう切り出す。

流石に、そう言った細かいことまでは把握していないのか、日々の疲労を癒すことを求めたのか。話に途中から入ってくることを止めた、公爵と王太子も前置きに首をかしげる。


「神々の御代、そう言えばいいのでしょうか。」

「そちらについては、神殿内に手と考えておりましたが。それを示す物も多くありますから。」

「ご配慮、有難く。ただ己の浅学を恥じ入るばかりではありますが、概要も聞き及んでおりませんので。」

「成程、畏まりました。」


それぞれの絵画、装飾、美術品。その来歴に耳を傾けるにしても、概要を知らねば都度説明を求める事になる。


「しかしながら、私どもの知る事、それもあまり多くはありません。過去、巫女様方や、司教様、神の声を近くお伺いできる。そのような方々が残したものとなりますが。」


そう前置きを作った上で、司祭が、語る。

オユキにとっては馴染み深いこの世界、かつてのゲームの舞台。そこに存在する神々の話を。


そもそも、この世界の始まり、それ自体が特殊なのだ。

いくつもの失敗、世界の崩壊。それがこの世界の、今あるこの場の根底にある。

特に力ある、創造神を覗いた4柱。それは元来他の世界、そこでそれぞれが世界創造、それを担当した神であり、そこの崩壊とともに流れ着いた神である。こちらで生まれた幼い創造神、それが持つ絶大な力によって、砕かれ、滅んだ世界、それを繋ぎ合わせて一つとした、それがこの場であると。


「その、お会いした神々は、姉妹、兄弟と。」

「ええ、創造神様の生みの親たる異邦の神。そのお力によって生まれた方々ですから。」


そう。この世界に存在する神、それはその発生からして被造物。何とも言えない入れ子構造が存在する。

なんにせよ、過去があり、今がある。故に神殿の数も決まっている。

過去、その神がいた世界、それが存在した残滓として。では、なぜ。全ての神殿が同じ大陸に存在するのか。重複して存在しないのか。それはまた違う話になってくる。

始まりは、確かにこの大陸だけ。後の大陸は、文字通り後の時代に作られたものに過ぎない。


「新たな大陸が、創造されたのですか。」

「はい。最も私たちが今の形で生を得る、その遥か昔の出来事ではありますが。」


そう、マップの製作など、一度にすべて、当然そうできる物では無い。いや、両親が残していた資料、僅かなやり取りの記録。オユキは一度それらを考えようとするが、つい最近そういった方向からの推測は許さぬと言われたばかり、そう考えて思考を止める。自制ぜずに過度に頼れば、何が起こるかなどわかった物でもない。


「私たちが、改めて、明確に生を得た。その瞬間でこの世界はこれで良し、そうされたと御言葉が残っています。」

「つまり、その時点からは、新しい大陸が生まれたりなどが無いのですか。」

「はい。最もそれを確かめた者はいませんが。」

「そうなのですか。以前、数だけは聞いた覚えがあるのですが。」

「それも、神々の言葉によるものですから。」


世界樹一つにつき、大陸が一つ。そうであれば10程はありそうだが。そういう訳でも無いらしい。

そして、オユキがかつて見たものは、ただ何もない荒れた陸地が広がるそこだけであった。わざわざ大陸を作り、そこには何も置かない。そんな事はいよいよないのだろうが。


「異なる大陸、そちらから何かがあったという事は。」

「聞き覚えが無いな。」

「こちらの大陸にない多くの物がある、そのように言われていますが。」


つまり、確かめた物はいないという事らしい。過去に渡った者もいる。そしてこちらに来たものの中には、それを目的とした人物も多くいただろう。ただ、帰ってこなかったという事か、海、他の大陸までは遠い、この国に情報が存在しないだけか。

概論としては、それこそ創世神話、物語としてもっと詳細もあるらしいのだが、流石に時間がない。概論として、大まかなそれを聞けば、改めて神殿の内部に案内される。


「では、神殿の中では、それぞれの品にまつわる逸話を。勿論建国に関わる品も多くありますから。」

「ありがとうございます。それにしても、以前伺わせていただいた折には、この華やかな彩は、祭り故と思っていましたが。」

「華と恋の女神様ほどではありませんが、水と癒しの女神様も飾ることを喜ばれますから。」


相も変わらず、陸地にあって水没しているその神殿の内部へと連れ立って進んでいく。ここから先は少年たちも合流してとなるが、まぁ、人数が人数だ。全員横一列にとはならずに、自然と隊列のような物は出来ているが。


「この神殿の材質も、実に不思議な物ですね。水流があるとなれば。」


そう、流れる水は、確実に削るものだ。まして魚も放されているし、植物も流れている。だが、そのような変化は見られない。随所に施されている彫刻にしても、真新しい。そう思えるほど細部までが彫り込まれている。


「それこそ、まさに神の業の為せるものでしょう。」


そうして連れ立って神殿に足を踏み入れれば、以前はゆっくりと見る事が叶わなかった内部を足を止めて見渡す。

王妃の同行者として、流石に視線を不躾に動かすわけにもいかなかったため、その天井に描かれた、大きな絵画、それは初めて目にすることになった。


「水中で、いえ、むしろ移動の制限がない事を思えば。」

「かつての異邦の方、その手によるものです。当時の司教様から、水と癒しの女神様、そのかつての世界を聞き、感じ入ったからと、筆を取られたそうです。」

「とすると、いえ、神殿が今こうして水中にあるのです。現状でその表現は省きましたか。」

「流石にそこまでは。」


天井、緩やかな曲線を描くそこには、一つの広大な都市とそこで暮らす人々が描かれている。都市と言っても、恐らくそうだと分かるものであって、見慣れたものとは全く異なる。

その全てはやはり水中にある物なのだから。飛ぶ鳥の代わりに、魚が泳ぎ。目を楽しませる緑は海藻のそれ。勿論見た事もないものばかりではあるが、それでもそうとわかる。水の流れに溶ける様な衣服をまとった人々は、揺蕩う泡のような物の中に住む者もいれば、皆底にある建造物で暮らしている者もいる。ところどころに、魚の特徴を持った者たちも居はするが。

神殿を中心に、広場があり。其処で踊るものがいれば、歌うもの、音を奏でる物、そう言った物も描かれている。他にもクラゲだろうか、柔らかそうな生き物が都市に明りを与えたりと、実に幻想的な絵画である。

そして、神はここから来たのだという。


「絵画としての表現が多く、水と癒しの女神様は、ここまで美しく計画性のある都市ではなかったと、そう仰せでしたが。」

「成程。」


まぁ、教会、その天井一面に。そうともなれば、多少の装飾はと張り切る物だろう。それにいくら広いとはいっても実際の都市に比べればあまりにも小さいキャンバス。聞いた話の全てを盛り込もうと思えば、整理するしかあるまい。


「この絵については、女神様も大いに喜ばれたようで。当時は巫女から神国へと、写しを作り供物とするように、そのような話があったそうです。」

「実に難儀したと、そう聞いているがな。」


その頃は、若しくは今も一部で。芸術を嗜む者達が確かにいたらしい。


「何せ、天井、その曲線を利用しているのだ。一枚の布に書くには、根本から違う。当時の王と画家は、それは頭を悩ませたと聞いている。」

「私はそこまで詳しくありませんが、同じ形状の者にとはならなかったのですか。」

「そうなると、石造りとするしかないが、そうなれば重すぎる。この絵画自体非常に緻密な物だ。相応の大きさが無くば写しも作れぬとなってな。」


その頃から異邦の者達は、こちらの世界を大いに騒がせていたらしい。


「最終的に、写しとはまた異なるが、四方と上面、それを覆う布を使い、当時の画家が描いた絵を治める事となった。」

「ええ、その工夫も喜ばれたと、当神殿にも話が残っておりますとも。それから、あちらの正面。」


以前来た時にも、ひときわ目を引いたそれを司祭がさして話始める。絵画については、流石にそこに描かれた見知らぬもの、その一つ一つを求めればそれこそ際限がなくなるのだから。


「あちらのモザイク画、それが彼の女神様の坐す場、それを表しているそうです。」

「世界樹、と。あれは。」


そう、辛うじてわかる物、それは中央に描かれた世界樹。それ以外は判然としない。いや、そもそも前回来た時にモザイク画、そう認識はしたが、その図案の認識は出来ていただろうか。


「おや、中央の図案がお分かりになるのですね。」

「とすると、やはり。」

「ええ、理解できるものは限られます。勿論司祭の任を頂いている私にしても、全てが見て取れるわけではありませんが。」

「神殿に入るのに、試しがある。そのような話も聞きましたが、それだけではありませんか。」

「神殿の門に拒まれる方は、そこまで多くありませんとも。それこそ、最初に話に出た。」

「ああ。」


モザイク画、それについてはそもそも説明も聞き取れない、そのような物であったため早々に終わり。他にも柱や置かれた調度に施された装飾の意味などを聞き、広く開かれたその場を満喫して帰路につくこととなった。

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