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第349話 先達として

「すまぬがオユキ殿、説明を願っても。」


流石に、分かれた相手が今どこにいるか、それを拾ってというのは現実的でないため、各々戻ることしている。ただ、オユキ達がギルドからそろそろ出ようか、その段で動いたものもいるため連絡は行っているはずだ。

そして、戻るころには揃うだろう。まぁ、オユキとファルコはそこからもうひと仕事となるわけだが。


「おー。今聞くんだな。」

「ああ、戻れば御爺様に渡さねばならん。つまり、そこで何か必要になるのだろう。」

「そっか、ファルコも大変だよな。」

「そちらはそちらで、鍛錬があるだろう。」


どっちもどっちという意味では、まぁその通りだ。


「そうですね。では説明する前に。」


その前にオユキとしてもアベルに頼んでおきたいことがある。


「アベルさん、こちらに陣形などの講義に使うような、そう言った道具の用意は。」

「勿論あるが、流石にまだ早すぎるぞ。それに規模が違う。」

「いえ、有るなら理解も早いものかと。同胞が過去持ち込んでいるだろうとは思っていましたが、確認のため。」


そして、オユキは丸い石大きさの揃ったそれが、ある程度以上。二色で分けられていればよいと、そう話せばアベルも理解してくれる。

流石にまだまだ経験が足りない相手、それに状況を説明するには、何か想定の切欠くらいは必要だ。人が代役としてもいいが、それはそれで手間も多い。


「ああ、やりたいことは分かった。公爵家にも用意はあるだろうから、それを借りればいいな。」

「説明もお任せさせて頂く事になるかと思いますが。」

「ま、それこそ俺の専門だ。」


いいように使っている自覚はあるが、受けてくれるならば良しとしよう。何か対価は別で考えておく必要はもちろんあるが。一方的に甘えるでは無く、持ちつ持たれつ、その形にはしなければならない。

一先ず、そちらが決まればファルコの話に戻る。


「さて、お待たせしました。説明させて頂く事は、公爵様への手紙を預けられた事と、その説明をさらに口頭でされたことでしょうか。」

「ああ。実際の報告は明日以降でなければ間に合わない、そのはずであったし。御爺様への報告を、こうして擁してあるというのに私に聞かせた、その理由がわからない。

 そして、私がそれを基に何かしなければいけない、それは分かっているのだが。」

「あー、そういや、今日の成果については、また明日って話だったな。まぁ、流石にあんだけやればな。普段にしても魔石以外は、なんだかんだで次の日だし。」


さて、その疑問はもっともだと、オユキとしては頷いて見せる。オユキにしてもアベルにしても。それは当たり前と分る事ではあるのだが。


「まずは、そうですね。口頭で聞いた話と、その封書の中身は全く違うものです。」

「となると、いよいよお手上げですが。」

「何も、一度に纏めて全て、そういった運び方をしなかったそこが一点ですね。」


そう、ある程度拾っては逐一、積載量の限界もあるからそうせざるを得なかった、それもあるが。そもそも大いにオユキ達が暴れればどうなるか、それは既に一度示していることもある。それを考えても、過小評価、そうとしか言えない輸送能力なのだ。


「ってことは、途中までのが書いてあんのか。」

「成程。それを御爺様に渡したうえで、私は先方からこれを用意して以降の感覚と、明日以降の予定を説明と、そういう事ですか。」

「まぁ、公爵様宛だもんな。ぱっと書いて、直ぐにとはいかないか。」

「しかし、無用な手間にも思えてしまいますが。」


まぁ、そう思う気持ちは分からないでもない。ただ、それにも理由はある。


「では、公爵様は明日迄何も用意はいらないと、そう思いますか。」

「ああ。確かに。こちらでも何かはいりますか。いえ、食肉以外については、そう伝えたのはこちらでもある以上、特にこれはという物は、選んで伝えねばなりませんね。」

「はい。実際のところは私も詳しくありません。知識も不足しています。公爵様にお尋ね頂く必要はありますが。」


恐らくこうであろう、それはオユキも分かる。それはあくまで生前の経験として。多少こちらへの理解を元に調整は行うが、限度はある。アベルの様子を見ながら話してみれば、どうにも不足はあると、そう判断されていることは読み取れる。


「オユキ殿でも。」

「その、年長ではありますが、世の全てを知っている、そのような物ではありませんから。」

「まぁ、なんだかんだ抜けてるもんな、あんちゃんも、オユキも。」


シグルドの実に率直な感想にアベルが吹き出すが、まぁ、それは仕方あるまい。


「となると、先ほどの話に戻りますが、私は。いえ、先に誰かをとしなければいけませんでしたか。」

「この場合はどうでしょうか。」


先触れ、それについては今回の件は良く分からない。


「公爵様は、今日からは私たちと食事を共にする、その予定ですから、何処かでお時間は頂けるでしょうし。」

「しかし、これも職務であるなら。」

「いや、いるのは分かってるし、そこまで長い時間じゃないだろ。何なら夕食の後にとか。」


しかし明確な正解はわからぬと、三人そろってアベルに視線を向ければ、答えがすぐに出る。


「今回については不要だな。正式な物では無い。それが理由だが。」

「私的な物は、私的な場でそういう事ですか。」

「ああ。先ぶれまでとなると、仰々しくなりすぎますか。」

「明日以降は、そうだな。今日改めてマリーア公から指示があるだろうが、今日はまぁ結局のところ全部通してお試しだ。」

「戦闘については、上場とのことでしたが。」

「そっちは報告が終わってから、改めて採点だな。」


そこまではっきり言われてしまえば、ファルコはただ苦笑いを浮かべるだけだ。

そして、一度大きく息をつくと、改めて感想を口にする。


「色々と、聞いてみればなるほどとそう思えるのだが。兄上にしても、一体何処で学んだというのか。」

「それな。なんか前は、実際の場で経験積むしかないって言ってたけど。」

「ええ、ですからご家族の公爵様が、こうして内々の機会を用意してくださっているわけです。」


そう。どこで学び、どこに場があるのかと言えば、今まさにここにある。

どうにも、そう告げた少年2人の様子に笑いが抑えられないが、アベルにしても大笑いをしているのだ。

それに対して気を悪くすることがない、それは得難い資質である。


「まったく、人が悪い。」

「間もなく終わり、そうであるから話しましたが。最初から分かっていれば、甘えが出るかもしれぬ。そう考えるものですよ。」

「あー、そうだよな。今日のあれも鍛錬って、終わってから言われたもんなぁ。」

「適度な緊張感は必要ですから。」


命の危機はある、場としてはそれが事実。しかし今はまだそれを心配する必要はない。過剰な護衛がついているのだ。オユキにしてもトモエにしても。その前提があるから行っている鍛錬でしかない。

そうでなければ、少年たちの生命、その最後の一線をいかに守るか、突然発生する、そう分かっている魔物の危機にどう対応するのか。もっと精神をすり減らし、疲れ、今日のような事にはなっていない。


「護衛の方にも、何かお礼が出来ればいいのですが。」

「御爺様に、それこそ相談されては。」

「少々大げさになりそうで。今ついてくださっている方は、半分は慣れておられるでしょうが。」


そういってオユキがアベルを見れば、ただ彼もそれを実に楽しそうな笑顔でもって受け入れる。


「何、あいつらにもいい訓練だ。練習の機会、それが得られるってのは幸運な事だからな。」


どちらもできる人間の言葉の重さは、成程確かに違うが。お礼以上に面倒を増やしたオユキとしては、なおの事申し訳なく思う。


「ついでに巫女様方の言葉も頂ければ、言うことは無いだろうさ。」


そして、勿論この中では最もそういった事に詳しいのだ。オユキにも容赦なく機会を設けてくれるものだ。


「ええ、まぁ。エリーザ助祭と相談したうえで、そうしましょうか。いえ、案外、ここまで織り込み済みかもしれませんね。アイリスさんも巻き込んでおきましょう。」

「ああ、そうか、二つ目はその可能性もあるか。いや、だがそうなると。」

「ええ、アベルさんもご協力をお願いします。元騎士団長、勿論心得はあるかと思いますから。」


さて、やられるばかりではない、それが今の所のオユキと少年たちの差だろうか。


「ほんと、良い性格しているよな。」

「そのあたりが年季という事だろうな。良く父上も親しい相手とはああして遊んでいる。」

「へー。やっぱ、そっちもそういう場面ってあるんだな。」

「同じ人だよ、私たちは。なんだ、改めて今後ともよろしく頼む。シグルド。」

「あー、俺らは、ねーちゃんの方に恩があるし、町から離れたくないからさ。それでもいいなら。」

「そうだな、今の流れだと、そう取れる場面だな。」


そうして、それぞれに笑いあえば、目的地にたどり着く。さて、これからもう一仕事。とはいっても、気楽な物ではある。

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