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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
9章 忙しくも楽しい日々
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第318話 買い物

前日の夜に、あれこれと話しはしたものの。では早速とは立場のある物が多く関わる事柄。流石にそうなる物では無い。午前中は朝食を改めて作法を機にかけて送れば、いくらかの組に分かれて早速とばかりに授業が始まる。

少年たちは侍女の監督のもと、ファルコが教えるようで、恐らく人にそうするのは初めてなのだろう、まるで初めて魔物と戦った時のような緊張感を湛えて、少年たちに食事の席における作法を教えている。トモエについてはアベルから護衛として、昨夜二人で話した時に、巫女につく人間として武器を持っても不自然ではない、その役職として確かにそれが相応しいと話したこともあり、早速アベルにあれこれと立ち居振る舞いを尋ねている。言ってしまえばエスコートの域を出る物では無いようだが、やはり細かい違いがあり、他が出来てしまえばそれが目立つ、そういった物でもある。


「二人とも、筋が良いですね。」

「話には聞いていましたが、水と癒しとは、また全く違いますね。」


オユキとアイリスについては、早速とばかりに助祭について、祭り一先ず確定している短剣と御言葉の小箱、それを供えるための振る舞いを聞いている。


「そう、ね。向こうは、こう。」


以前に習い覚えた物は、オユキの想像に容易いというか、ゆったりとした、それでも要所で体を固める、そういった動きが多かったのだが、今習っているものについてはいよいよ型の色合いが濃い。


「やはり、神々によって行うべき勤めというのは異なるものですから。」

「それなのに、他の神々も等しく祀る、何とも。」


オユキとしては、それが原因で巻き起こった、現代まで続く凄惨な事柄を思えば、寛容さに改めてため息が出る。元居た土地柄も、そういった風土ではあったが、それは根底にある無関心がそうさせていたのだから。

国によっては入国の際に、信仰する宗教、それの記載が必要であったりもするし、それが原因で入国を拒否されることだってあるのだから。


「お二人とも、ただ、もう少し柔らかく。」


どうにも物が短剣であるため、抜き放ち掲げる、そういった動作もあるが、それについては慣れが優先され祭祀としての動きではないとやはり注意を受ける物ではあるが。

そんな朝の一幕を終えて、午後からはいつものように魔物を狩り、狩猟者ギルドに納品を済ませるついでに、昨日の成果を受け取れば、その足で買い物へと向かう。

護衛の都合もあるだろうが、あまりに大所帯ではと、別れようかと言えば、そもそもそういった事に対応ができる店舗にしか今日は行かないと言われれば、土地勘のない物たちとしては納得するしかない。そして、早速とばかりに一店目に向かう。


「最初に選ぶのが、此処なのね。」

「ええ、予備は必要ですし。手入れの事もありますから。」


アベルに任せてまずはとばかりに訪れた武具店、そこについてアイリスの第一声がため息とともに告げられる。ただそれには返す言葉も決まっている。正直少年たちの武器にしても、オユキ達にしても、数を揃えただけの物については、相応に痛みがひどい。もう手入れの段を超える物もある程度には。


「まぁ、分かるのだけどね。」


そうしてアイリスがため息をつきながらも、一同揃って店に入る。最も店と呼ぶには大きな建造物ではあるのだが。外観からわかる広さにしても、これまで訪れた店舗とは全く異なり、それこそ始まりの町の狩猟者ギルド、その程度の広さを持った店舗ではある。当たり前のように2階も作られており、倉庫の様な者も併設されている。

連れ立って店内に入れば、商品棚が並ぶような物では無く、広々とした間取りに、商談用だろう、いくつかの区切られたスペースが置かれ、壁際に見本としての商品が並べられている。

客が簡単にアクセスできる位置にある扉は、恐らく試しができる場所へと続くものだろう。店員とのやり取りは、先にマルタが行い、合わせて運んでいた、もう長く使う事は難しい武器を引き渡したり、そういった事を行ってくれている間に、揃ってあれこれと武器を見る。


「なんか、見た目に全然違うのがあるな。」

「鋼、でしょうか。それ以外の知らない色味の物もありますし、魔物の素材を使ったものかもしれませんが。」

「そりゃ、王都だし、そう言ったのもあるか。でも、あれだな、どれもこれもこれまで使ってたものより大きいな。」


言われてオユキも見てみれば、確かに握りにしても一回り以上太いものがざらではある。

アベルの案内であることを考えれば、騎士団が主に利用する店舗、そういう事なのだろう。


「頼んで作って頂くとなれば、相応に時間もかかりますからね。数打ちもいくらかはいるでしょうが、これは慣れるのに少しかかりそうですね。」

「あー、前も結構大変だったしな。」

「そうですね、一先ずその場の物だけを買って、後は修理と、誂えて頂くのを待つのが良いでしょう。」

「それにしても、領都でも驚きましたけど、こんなに種類があるんですね。」


そう、相応に広い店内、その壁もかなりの物なのだが、そこには所せまし、そういうほどに雑然とはしていないが、本当に多くの種類の武器が掲げられている。中にはそれこそどう使うのだ、そう言いたいものもあるが。

少年達もそうではあるが、見慣れぬ色を刃に持つものをオユキとトモエもあれこれと物色する。手に取ったりは流石に店員の許可を得てからとなったが、色々と面白い時間でもあった。

加えて、相応に人が多いという事なのだろう、修理にしても、今使っている武器と同じものを用意することについても3日もあればと、そう言われたため、それぞれに支払いを済ませて店を後にする。

そしてそれが終われば、今度は特産をとそういう話になり、まずは食材となるあたりは、少年たちの期待に応えてと、そういう事にはなるが。


「わー。」


夕食前の時間ということもあるのだろう。一つの店舗というわけではなく、それこそスーパーのように決められた区画にあれこれと食材やその加工品を並べた小さな店が並ぶ一角へと案内され、それを目にした少女達から歓声が上がる。こちらの言葉に合わせればメルカドと、そう呼べばいいのだろうか。


「活気もあり、華やかな良い場所ですね。」

「時間帯によっては、いよいよ何もないがな。朝と夕、こうして市が立つ。」

「貴族の行う事とも思えませんが。」

「生活を支えるのは市民だし、日用品の買い出しは、そもそも平民の丁稚の仕事だからな。」

「ああ、成程。そして貴族の方々も、折に触れて好奇心を満たせるという事ですか。」


トモエがアベルにそう告げれば、随分とこういった場に馴染んでいる様子のアベルは肩を竦めて見せるだけだ。

少年達も思い思いに、とまでは行かないが、早速とばかりにそれぞれ店先を覗き込んで、楽しげに話している。オユキだけでなくトモエにしても見た事のない品が多く並んでおり、確かに見ているだけでも楽しい物ではある。


「えっと、此処で買って帰って、料理するんですか。」

「今日はシチューもご用意いただけていますし、流石に直ぐではありませんが。」

「ああ、そうですよね。」


彼女たちにとってはそういった物であるかもしれないが、流石にそのあたりの予定も詰めなければいけない。

最終的にはあの屋敷から信頼のできる身内以外は排されるだろうが、流石に今直ぐにとはいかないのだから。恐らく料理人にしても今のような体制ではなく、スー・シェフ一人を残して引き上げるだろう。

公爵夫人がどうするかは分からないが、それが最初に伝えた要望でもあり、公爵が配慮を見せるとした約束でもあるのだから。

今ばかりはやむを得ない事情が重なって、そうなっていないだけでなのだ。


「あ、これ、何でしょう。」

「瓶詰の類も普通にあるのですね。」

「お、パウ、こっちに前領都で食べたのがあるぞ。」


そうして少年たちが実に楽し気に、保護者であろうとしているファルコが振り回されながら、あれこれと彼の知っているものについて説明を求められ、なかなか大変そうではあるが、実に楽し気にしている。

オユキも大人組で連れ立って歩きながら店先を冷かしつつも、あれこれと気になるものはあり、それを店主に声をかけて説明を聞いたりと実に楽しんでいる。

そして、そうしながらもこういう場所だからこそ、そう言えばいいのだろうか。どうにも言われていた気を付けるべき手合いが側によってくる。護衛については、試す必要が無いと、わざわざそう口にしてこちらの油断を見るためにという事なのだろう。

トモエとオユキはそれぞれ片手間に、側によって来たもの、流石に財布を狙う程度の手合いではあるが、そういった物を片手間に地面に転がして置く。

少年たちは既ににぎやかにしているし、そうする場はいよいよ店先、護衛がそちらに通さないようにしていることもあり、害が及ぶことは無い。

それに賑やかな場の中で、他の人でもそれなりにあるため、人ひとりが転んだ音を気にすることはまだできないだろう。特にこうして他に完全に注意が向いてしまっていれば。


「ま、お前らは問題なよなぁ。」

「流石にあの子たちは、まだまだですよ。一応肘を外す程度にとどめていますが。」


伸ばされる手を取って、簡単に関節は極めている。そのついでに足を払って地面に転がしているのだし。本来であれば足払いではなく、膝を狙ったりもするのだが。


「加減してるのはわかるさ。」

「ちなみに、こちらではどのように。」

「そもそも無傷で捕らえるな。」

「まだまだ未熟ですから。」


アベルから暗に過剰だと言われはしたが、そう言い訳でトモエが返す。それも事実ではあるが、騒ぎにしてもいいのであれば無傷で捕らえる事も出来るのだから。

あくまで面倒を見ている子供たちが楽しんでいる、そちらを優先した結果に過ぎないのだ、この対応は。

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