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憧れの世界でもう一度  作者: 五味
8章 王都
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第299話 そして外へ

「あー。ダメだってのはわかるんだけどなぁ。」

「私たち、本当に必要になるんですか。」


町の外へ、先にファルコの手ほどきを等という話もあったが、そこは公爵夫人が残る屋敷の中、先ほど採点が行われたばかりで気楽な場に出来る訳もなく。まずは気分転換と馬車に揺られて王都の外に魔物を狩りに行くことにした。

ファルコについても、今回が初めてであるようだし、先に実際の魔物、狩られた後の収集物ではない、を見て置くのも良いだろうと。


「リース伯爵家につくのだろう。その方らの行動が彼の貴族家の評価の一助となるのだ。」

「あー、そういう事か。でも、あれだ。」

「公爵家と伯爵家、その家格による礼法の差は無いのですか。」


シグルドがファルコの言葉に納得するものの、言葉にならない疑問を考えているようで、オユキが代わりにファルコに尋ねる。


「ああ。御婆様であればそのあたりも考慮されるでしょう。」

「スゲーな。」

「苦手と避けた私が言うのもおかしな話ではあるのだが、それができるからこそ、ではあるのだ。」

「へー。」


さて、気質の近いもの同士、やはり育ちの差は見えるのだが仲良くなれそうで何よりではある。

ただ、あまりこの二人が仲良くなってしまえば、今後リース伯爵家の方で気を揉むことにはなりそうだが。その辺りは追々と、そうするしかないだろう。始まりの町、そこに戻ればそちらとの交流も増えるであろうし。


「オユキ殿と、アイリス殿は。」


ファルコから伺うような視線が寄せられるが、何が聞きたいのかは理解できる。


「そうですね。おそらく、何処か、数日中で私とアイリスさんは皆さんとは午前中、行儀作法の時間は別行動になるでしょうね。」

「御屋敷に呼ぶのかしら。」

「いえ、それだと何かあると公言することになりますので、かといって連日伺っても変わりませんか。」


そういってオユキは考える。正直そのあたりは解決策が見当たらない。姿を変える方法があるというのは聞いているが、そもそも神事に望むものにそのような真似を、こちらの人々がさせる事を良しとするとも思えないのだ。


「アベルさんは、護衛としてそのあたりは。」

「助祭を一人借りるというか、あの屋敷で少しの間一緒に暮らす形だな。衣装や装飾の手配もある。」

「そのあたりは教会にある物と考えていましたが。」

「新しい出来事だからな。」


そう言われてしまえば、オユキにも理解は及ぶ。新しい葡萄酒は新しい革袋へ、そういう事なのだろう。


「トモエさん。」


そういった話を聞いていると、トモエが少し考えるそぶりを見せるので、オユキが水を向ければトモエがどこか気恥ずかしそうにする。その様子で何を考えているかは、オユキにも察しがついた。


「ああ。そうですね、夕食の場であったり、その後の時間であったり、そこで強請ってみるのもいいのではないでしょうか。」

「えっと、どうかしたんですか。」

「いえ。皆さんにも聞こうとしながら機会が得られませんでしたから、こちらの神様の逸話など、やはり興味がありますから。」


どうにものんびりできる時間というのは、トモエとオユキ、若しくはそこに他の大人たち、そういった時間であったために、少年たちにも聞こうと、話してもらえたらと言いつつ後回しになっていたことを、せっかくの機会だからとトモエは考えている。


「あー、そっか。あんちゃんたちはそりゃ知らないよな。」

「巫女様が知らないのは、えっとアイリスさんは。」


アナが知ってますよね、そう言いたげにアイリスを見るが彼女はそのまま視線を逸らすことで応える。


「その、トモエ殿もオユキ殿も、政治に理解はあるようでしたが。」

「申し訳ありませんが、流石にこちらに来て5カ月ほどですから。」

「ああ、成程。そうであるなら、やむを得ないのでしょうね。」


アイリスはともかく、トモエとオユキの二人はまだこちらに来てなんだかんだとその程度、色々と巻き込まれ、事を起こしてはいるものの、だからこそそういった事に割く時間を持てずにいる。

勿論、それをやろうと思えばできはするのだが、そのためには余暇、余裕、そういった物を無くせばと、そういった受け入れられるはずもない前提があってのこととなる。


「後回しになっていることも多いですから。」


オユキとしてはただそのあたりはまとめて、そのように言うしかない事ではある。


「そうですね、私の方でも後回しとしていることも多いですから。」


トモエの方でも、少年たちに新しい型を、対人、集団戦における優先順位を話そうとはしつつも後回しになっている。


「あー、俺らもなんか色々あるし。」

「そうですね。これから午後は落ち着けるようではありますから、そこで順に片づけていきましょうか。」

「そうなんですか。」

「ええ。不足が明確に確認されたのに、こうして許されているという事は。」


そう、ファルコにしてもこうして解放されている以上は、やはりそれも重要と相手が判断してくれているという事ではある。無論公爵夫人にしても今頃は諸々の手配を行ってくれてはいるのだろうが。


「おー、そっか。流石に、一日中だと息が詰まるしな。」

「うん。私もきちんとしようとは思うけど、一日中はやっぱり。」

「ああ。」


その辺りは少年たちにしても堪える物であるらしい。


「そのあたりの配慮も頂けているのでしょう。」


後は子供たちについてではあるが。


「ティファニアさん達は、王都の学院に興味はありますか。」

「いえ、その。」


騎士を目指している、領都からの子供たちに話を振ってみれば、それについては苦笑いと共に返ってくる。


「費用の事もありますし、その、事務仕事ばかりの為には。」

「そうなるでしょうね。」

「事務、書類、それ以外であれば、基礎訓練などもあるのはあるが。まぁ学院でなければできない、そのような物では無い。貴族家であれば、同年代との顔つなぎなどもあるが。」

「ま、そもそも見習い試験突破すればめでたく同期だからな。そこからでも間に合う事ではある。」


アベルからも、ファルコが遠回しにお勧めしないと言えば、同意が加えられる。どうにもオユキには実際のところ一騎士、ではなく士官・将校向けの基礎教育を行う施設であるらしいと、そういった印象が得られる施設である。

用は古い形式の学校であり、将来に向けて高等教育を目のある物に施す、全体の底上げではない、そういった施設であるようだと判断する。

ただ、そうなってしまえば貴族家で十分以上にと、そういった事も考えられるのだが、それで教師役の取り合いが過熱して、そういった背景があったのかもしれない。


「さて、到着ですか。」


そうして話しながらもあれこれと考えていれば、町の外結界の切れ目、そのそばについたらしい。

相変わらず冗談じみた速度で移動する馬車ではあるが、目的地の到着は振動であったり、原則の感覚で非常に分かりやすい。


「ファルコ君は。」

「まずはティファニアさん達と同じですね。」


どうやらそういった扱いとするらしい。


「ではシグルド君たちはこちらで引き取りましょうか。」


そうして分担も決まり、馬車から降りれば改めて周囲を見たうえで、素振りから始める。

昨日程のぎこちなさは残っておらず、一日で取り戻せる、その範囲を考えれば上々ではある・


「まだ、違和感があるな。」

「そればかりはどうしようもない事ですから。」

「にしても、多いな、魔物。」


昨日オユキ達が散々暴れはしたものの、今日も多くの魔物が結界の外を闊歩している。

近いところではグレイハウンドがグレイウルフに率いられていたり、シエルヴォが数体纏まっていたりと、そういった光景ではあるのだが。

トモエがその光景を見て苦笑いをしているのは、用はゲームというものへの慣れ、そうとしか言えないだろう。

元の世界で考えれば、鹿の群れが、虎や狼が側を通るのに何もしない、そんな事はあり得ないのだから。そして、その一方でしっかりと家畜の類がいるあたり、愉快な生態系をしていると、そう言うしかない。


「さて、では今日もまずはグレイハウンドからにしましょうか。」


さて、素振りも話しながら十数回は行い、それに対してトモエから何か言われることもない以上は、少年たちについては実戦の時間となる。

子供たちとファルコについては、まだもう少しかかりそうではあるのだから。


「そういや、オユキ。俺らも武器の予備見ておきたいんだけど。」

「ああ、それもありますね。」


シグルドに言われて、オユキもそれに思い至る。

オユキとトモエの武器についても、溢れの魔物、それで作った物以外は相応に痛んでいる。少年たちの物、まだまだ雑な扱いになる彼らの物であれば、尚更だろう。


「今日の帰りに覗いてみましょうか。アベルさん、案内は頼んでも。」

「任せとけ。」


オユキにしても、見たこともない武器、それを見る事が出来るというのは正直嬉しいものだ。

労働の後の楽しみ、そいうには労働にしても生臭いものではあるのだが、それはそれ。


「では、今日も怪我に気を付けて、狩りをしましょうか。」


既に離れた位置では護衛が間引きを始めているし、そこまで危険はないが油断をしていいわけでもない。


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