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第270話 詰まる予定

ダンジョンに関しては、この場に聞くべきではない物も多いからであろう。

作成権限が得られない、それに対して修正を行う。

作成における利便性を条件付きであげる。

主な内容はその二点となった。ただ、当たり前のようにメイにしても、他の者にしても達成せねばならぬと、そう言われることはあったが。


「2週間、ですか。そしてそこから3週でたどり着けと。」


小箱の開封が終わり、応接間でそのままの顔が話しを続ける。


「俺らは、どうしようか。」

「お祭り、あるもんね。」


これまでは王都に同行する、そう言った向きであった少年たちがそう口にする。

そう言えば、領都でそろそろとそんな事を言っていた。


「皆さんは、残りますか。」

「いえ、連れて行ってください。」


トモエがそう彼らに尋ねれば、しかし否定はロザリアから行われる。

そして、それには直ぐにアナが反応する。その顔は今にも泣きそうだ。


「でも、司教様。」

「叶うなら、あなた達も、そう言われたでしょう。」


そう。意外。まさに意表を突かれたことではあるが、シグルドたち。彼らも名指しというわけではなかったけれど、創造神から王都に向かったほうが良いと、そう言われた。

その言葉が無ければ、少年たちは一も二もなく残るとそう言ったのだろうが。


「でも、出来るならって事だったし。祭りの準備があるだろ。」

「手伝ってくれるのは嬉しい事ですが、あなた達も教会を出た身ではあるのです。強制ではありませんよ。」

「いや、やりたいからやってるんだよ。世話になって、それで、何てのは。」

「手が空いているなら、もどっだ時に次のお祭りで。それで十分ですとも。」


そして、そこでロザリアは言葉を切って、アナとセシリアを見る。つまり持祭、そう呼ばれている二人に視線を向ける。


「それに、私は司教として、神の御心に沿うように、そう言わなくてはなりません。」


言われた二人は肩を震わせる。

ただ、言葉の意味は二人はよくわかるのだろう。神に仕える身、その位階を持っているのだ。

ならばその意向に沿うのは、至上命令、そう言い換えてしまってもいい。たとえ主として崇める神が違おうとも。


「でも。」


それ以上の言葉は出てこないが、やはり腑に落ちないところがあるのだろう。

これまで大事にしてきたものなのだ。いきなりそれを取り上げてというのは、確かに突然で整理のつくものでもないだろう。

ロザリアにしても、先の言葉以上の物は、彼女の役職もあって言える物では無いのだ。

そうであるなら、この場にいる者としてと、トモエが口を開く。


「出発まではまだ短いですが日があります。その間に考えるのもいいでしょう。それまでの間、お祭りの準備をしっかり手伝うのもいいでしょう。」

「あんちゃんは、俺らも行ったほうが良いって、そう思うのか。」

「正直なところ、そう思います。恐らくですが、わざわざ呼ばれたという事は、あなた方も王都で何か行うべきことがあるのではないかと。」


トモエとしてはそこが気にかかるのだ。少なくともこちらで見た、これまで見てきた神々ははっきりと無駄と、そう分かることを行っていない。しかしそれがなにかは分からないのだが。

ただ、トモエがそう告げれば、パウとアドリアーナの二人は何か思いつく事が有ったのだろう。


「そうかもしれん。」

「ね。領都に行った時も、なんだか私たちだって色々あったんだもん。アンも、王都でまた何かあるかもって、そう言ってたじゃない。」


どうやら少年たちの間で、今後の話もしていたらしい。

帰りがけに、オユキが何かに巻き込まれそう、そんな事を言っていたが、彼女たち自身も何かに巻き込まれる予感があるらしい。そして、にべもなく告げてそれ以上は語らないロザリアにしても。

ただ、それだけでは納得がいかない様子の3人がいる。

これまでの行い、それは彼らにとっても大切な事だったのだろう。オユキはメイとアイリス、メイの付き添いと話しながら出立までの予定を詰めている以上、こちらに直ぐには加われない。


「そうですね。私も何かあると、そう考えています。司教様も。」


さて、こうして子供相手にその悩みをほぐすように話すのはいつ以来かと、トモエはそんなことを考える。


「それに、心配しすぎですよ。皆さんがお祭りを手伝う、そこで感謝を捧げる。それが必要ない、そう言われたわけではないのですから。」


シグルドは、教会への思いが強いのだろうが、アナとセシリアはこちらが大きいのだろう。

それを告げれば、驚いたようにトモエを見る。


「皆さんが日々感謝しているのは知っていますし、それを大事にしてるのは、まだこちらに慣れていない私でも分かるものです。なら神々とて同じでしょう。」

「でも、お祭りに出れない日程でも、王都にって。」

「もしも、そうですね。皆さんの祈りが足りていない、目にかける必要もない、そうお考えであるならこうして何かを言われることは無かったでしょう。

 これまでのあなた達の行いが評価された、だからこうして頼みごとをされた、そうではないですか。」

「本当に。」

「さて、そればかりは私にも。おそらく、だろう。それ以上の言葉はありません。」

「そう、ですよね。神様の御心は、神様の。」

「ええ。それを確かめたい。そうであるなら王都に行くしかないのでしょう。神は試練を与え、それを超えた物に功績を。これは私も直接聞いたお言葉です。さ、後は皆さんでしっかり考えるといいでしょう。

 ただ、司教様。」


トモエとしては、せめて言い訳の一つくらいは教会から用意してもらいたい。

少なくとも、長い旅路、危険もある。せめて前向きな道のりであってほしい、そうは思ってしまうのだから。


「ええ、皆さんが王都へ、そうするのであれば頼みたいことも色々ありますから。」


そう、手助けはここまで。後はまた相談された時に。


そして、そんなやり取りを気にしながらも、オユキはオユキで決めなければいけないことを話す。


「間に合いますか。」

「間に合わせるしかありません。」


そう、急な日程の短縮、そんな物はよくある一つなのだ。そこで必要なのはまず考える事。


「人手を増やすことで解決できるのは、ダンジョンの試行回数。直ぐに魔石を集め、ダンジョンの攻略を日に二回。とするしかないでしょう。それで倍量。元の予定と同じ回数は行えます。」


忙しさは増すが、他に方法もない。むしろ人手を増やすことで解決できるこちらは可愛いものだ。


「しかし記録や報告書、その作成は人手が増やせません。ミズキリが説明したように機密、それがあり国王陛下にまず報告しなければならない以上、道中公爵様や、伯爵様へお願いするわけにも参りません。」

「それでは、しかし。」

「ええ。ミズキリを使ってください。そして騎士の一部は今日にでも領都へ。」


もう彼女に手を貸すと、そう決めた以上オユキは自身が必要だと思う事、それを彼女に言う事を躊躇わない。

それが伯爵家令嬢その人に指示するような、そんな聞こえ方をするものであろうとも。


「それは。分かりました。日程の変更を伝えて、そちらの準備もいる、そういう事ですね。」

「はい。叶うなら両名にも同行を願い出ねばなりません。最低でも公爵様は。」

「それは、まさか。」


明言はされていないが、今回の短縮の要因は恐らくそれだ。そして可能性がある以上それを見過ごすことは出来ない。いや、それについては都市間での遠隔通信が可能であるらしいというのに、その情報が共有されていない、つまり予定外の事とそうなる。ならば、公爵家から王家に伝える必要がある。その可能性を。


「そうですね。この場で明言はしませんが、そちら自体が想定外、その可能性があります。

 急ぎ連絡を行い、水と癒しの教会、そこで助力を乞う必要もあるかもしれません。」

「想定は最悪を、現実はそれを超える、ですね。」

「ええ。」


以前オユキが彼女に伝えたその言葉、それをメイは覚えていてくれたらしい。

だとすれば、創造神から与えられた聖印はそこまでを見越しての事なのだろうか。本当に頭が下がる事だ。


「アイリスさん。王都まで3週間というのは。」

「町で泊まらなければ、前ほど無理をしなくても可能よ。」

「野営、ですか。」

「避けられないは。」

「ミズキリは恐らく騎士の一部を残して、ダンジョンの攻略を継続することを提案するでしょう。

 なので、戦力の主体は領都までは傭兵に。」

「問題ないわ。」

「では、メイ様。」


指示の様ないい方が続いたが、オユキはメイに確認を取る。

決めるのは彼女、そこだけは譲ってはいけないのだ。トモエが最後の選択を子供たちに委ねているように。

それが誤りであるならともかく、どちらを選んでも問題は無い、そんな時であれば。


「分かりました。この場では流石にできない事も多いので、直ぐに戻りそこで必要なことをしましょう。

 アイリスは傭兵ギルドで必要な話を。オユキはついてきなさい。」


そうして各々が慌ただしく動き出す。

トモエとは簡単に目線でだけ、王都ではゆっくりしましょうと、そんな意志をかわしながら、互いに互いの場を任せる。

オユキにとっては慣れた鉄火場。ミズキリもそうだ。生憎彼は王都には来れないだろうから、そこまでの道中オユキがメイの補助をしながらとなるのだろう。

そのついでに、叶うなら王都でのんびりできる場所を公爵と伯爵の二人にねだってしまいたい。

忙しい日々が終わったのなら、リフレッシュ休暇、それくらいは欲しいとそうは思ってしまうのだから。

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