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第224話 銀製品

「私は魔術が使えないので、詳しくはありませんが。」


店員がそう前置きをしたうえで、代表的な使い方を説明してくれる。

それを要約してしまえば、使い捨ての魔道具というのが近いらしい。

ただし、投げたりせずに、その場に突き立てることで使うという意味では、地雷とでも呼べばいいのだろうか。


「なかなか面白い道具ですね。」

「となると、水なども。」

「その場合ですと、専用の魔道具の方がよいでしょうね。」


概要を聞いた時には、そんなことを考えていたが、実際にはもっと平和な利用法が主体だった。

魔術は何も攻撃を行うための物では無いのだから。

この町では、庭園の維持を行うために、土地に栄養を与える。

屋内、食料の保管のための部屋を整えたり、病室を整える。

他にも色々と。


「成程。ただ劣化とのことですが。」

「ええ、徐々に削れて行きます。」

「サイズを大きくしたりは。」

「試したこともあるそうですが、このサイズが最も良いと、そうされていますね。」

「成程、費用対効果、大きくしたところで、今度は設置すると目立ちすぎる等、でしょうか。」


二人でそんな説明を聞きながら、あれこれと考えたことを口に出す。

そんな中でオユキは魔術を無償で習っている相手の顔を思い出し、土産に良いのではと、ふとそんなことを考える。


「これは、領都からの手土産として、魔術を使われる方に贈れば喜ばれるでしょうか。」

「定番の品ですね。魔術師と、それを名乗る方でしたら、間違いなく喜ばれるでしょう。」

「では、そうですね。そちらを頂きたいのですが、数は。」


そういってオユキは少し考えこむ。使い捨てであるならば、多少の予備はあったほうが良いだろうが、あまり高額になっても、そう考えてしまう。

前の世界であれば、90%程のペーパーナイフが5万円を超えるか、そのあたりからだったような気もするが。


「10本をセットとしているものが。贈り物としての箱なども、合わせていますよ。

 そちらで、4000ペセとなっております。」

「あら、案外お安いのですね。」

「特産ですし、型に流し込むだけですから。」


どうやら、思った以上に銀製品の類というよりも、銀そのものは安いようだ。

遠方まで持ち運ぶことも簡単ではないため、そのあたりもあるのだろうが。


「では、そうですね。3セット程。」

「ありがとうございます。それと、鎖は色々ありますが、一先ずこちらで。」


そうして側に置かれた鎖を勧められるが、二種類の太さが並べられているが、どちらも華奢な作りになっている。


「ああ、魔物の狩猟も行いますので。」

「これは、失礼しました。それでは少々お待ちください。」


改めて職業を伝えれば、一度トレーに置かれた品を全て下げ、裏手のほうに歩いていく。


「普段使い、街歩きのときであれば、良いのではと思いますが。」

「功績を持ち歩くとなると、付け替えるのも。」

「ああ、そういった用途ですか。そちらは紐でもと、思ってしまいますね。」

「今後を考えると、鎧を着ることもあるでしょうから。」


その言葉に、オユキはなるほどと頷く。

そうなれば鎧下を着るにしても、功績は上に行くだろうし、金属と擦れれば革は痛みも早いだろう。


「鎧、ですか。」

「ええ、一応興味がありまして。」

「手入れなどが難しいと思いますが、確かによく似合いそうですね。」

「オユキさんは、難しそうですが。」

「流石に、この体躯で鎧は。後は目指している方向も、速さを主体とするでしょうから。」


そんなことを少し話しているうちに、店員が品を変えて、改めてトレーを持ってくる。


「お待たせいたしました。」


今度は少し太めの鎖が、いくつか並べられている。

それにしても、オユキとトモエに合わせているのだろう。

太さが二種類用意されている。

どちらも作り自体は、前の世界で親しんだものほど細かいものではないが、それでも繊細さを感じる仕上げがされている。


「こちらは、良さそうですね。持ってみても。」

「勿論ですとも。」


そう言われてトモエが手布を出して、鎖を持ち上げて確認している。

オユキもオユキで他にいくつか並べられた装飾の類を見る。

指輪は分かり易いが、他にも髪留めらしきものを始め、見慣れない物もある。

そうして、鎖を始め、いくつかの商品を店員からあれこれと説明を聞きながら、見聞きし、結局は鎖だけとなったが、購入を決める。

ただし、鎖に関しては手作業の割合があまりに大きいため、先に買った物とは、比べ物にならない金額ではあったが。

事前に説明されたように、預かっていた札お店れば、それを書き取り品は運んでいくと、当たり前のように言われたために、手ぶらで店舗から出る。

そんな、なかなか無い体験ではあるが、買い物を終えても手がふさがらないというのは、やはり楽なもので、それでは次の店へと足を運ぶ。

ここまでは衣服を扱っている店舗が多かったが、このあたりからは、装飾に変わっているようで、どの店もガラス越しに様々な、銀製をはじめとした、宝石で飾られた物、他の一目で何かわからない素材と組み合わせているものなど、実に様々な品が並んでいる。

その中で、一つの店の前に来た時、トモエが足を止める。

そこでは、カトラリーを取り扱っているようで、装飾は少ないがだからこそ造形に機能美が見て取れる、そんな食器が並んでいる。


「綺麗な物ですね。」

「ええ。」

「少し覗いていきましょうか。」

「いえ、使い道が。」

「それこそ、買っておくのもいいでしょう。そこまで嵩が張るものではありませんし。」


トモエが元々こういった物を好むと知っているオユキは、たまにはとトモエの手を引くようにして、店の入り口へと向かう。

そんな様子に、店員が微笑まし気に二人を迎え入れてくれ、前に寄った店と同じく、恐らくどこの店にもあるのだろうが、商談をするためのスペースへと案内される。


「表で銀食器を見たので、一式そろえたいと考えています。」

「畏まりました。」

「それで、一式となった時に、入れるための木箱のようなものは。」

「ええ、勿論ご用意させていただきます。」


そう答えた店員が少しすると、3つの片手に下げられる鞄を持って戻って来る。


「お待たせいたしました。庭園にも持ち出しやすく、近頃こういった形のものが好まれていまして。」

「成程。となると、茶会向けの物ですか。」

「いえ、たまには気分を変えて屋外で、そういった趣にも扱えますよ。

 では、まずこちらから。お茶会向けの組み合わせです。」


机に置かれた鞄が空けられると、中にはティースプーン、デザートフォーク、バターナイフといった物が、内側にしかれた布の上、動かないようにひもで結ばれて並んでいる。


「まぁ。」

「美しい物ですね。」

「ありがとうございます。」


思わず出た言葉に直ぐに店員が頭を下げる。

良く磨かれた食器は、周囲の景色をゆがめて写し、美しい光沢を放っている。

表の物にはなかったが、こちらは持ち手の部分に装飾が施されており、さらにその高級感を際立たせている。


「セットは、3セットが基本ですか。」

「いえ、ご相談に応じさせていただきます。こちらの持ち運び用の鞄の都合もありますので、直ぐに対応できるのは5組をまとめた物までとなりますが。」

「成程。内張りの布の色は。」

「勿論、変えさせていただきます。」


そうして店員は、次の鞄を開く。今度の者はディナー向けと一目でわかる内容になっている。

こちらに来て直ぐはフォークはないのかと思えば、確かに金属が問題なく得られる地域では、こうして当たり前のように存在しているものらしい。


「こちらは、装飾があまりないのですね。」

「ご要望があれば、その様に。」

「ああ、そういった形式ですか。ここを離れるまであまり日が無いので。」

「それは、残念ですね。定番の装飾がされているものでしたら、ご用意できますが。」

「そちらも見せていただけますか。」


入る前は遠慮していたトモエではあるが、いざこうして目の前にすれば、実に楽し気に店員と話しながら、あれこれと興味深げに見ている。

そんな様子を見ると、戦いも楽しそうだからと、そちらに専念しすぎたなと、改めてオユキは反省する。


宜しければ、感想、ブックマーク、評価等、ひと手間頂けますと幸いです。


アルファポリス

https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/160552885

カクヨム

https://kakuyomu.jp/users/Itsumi2456

にて他作品も連載しています。

宜しければ、そちらもご一読いただけましたら幸いです。

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