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第196話 廃鉱山へ

「よし、親切な護衛から最初の忠告だ。装備も事前に確かめる、いいな。」


数日の間は、南東に行きその後傭兵ギルドで訓練をする、そんな日々を繰り返した。

少年たちはもとより、子供たちも訓練の終わりには、程よく疲れ果て、夕食の頃には食事を口に運ぶ途中で寝落ちするなど、なかなからしい状態を見せ始め、それを微笑ましくトモエとオユキで見守っていると、幽霊にでもあったかのような顔でアイリスに見られるなどという一幕もあった。

少年たちは、ただいつもの事と、これまた手慣れた仕草で子供たちの様子を見ていた。

そして、満を持して、出来上がった武器を受け取った翌日、ついに廃鉱山へと訪れ、中に一歩足を踏み入れれば、暗く先が見通せない状況に、さてどうしたものかと悩み、ルイスが苦笑いと共に、そのようなことを言い出した。


「あなた達、変なところで抜けてるわよね。」


アイリスにも、そうため息をつかれるが、トモエにしてもオユキにしても鉱山など観光したこともなく、人の手が入るのだし、明るいだろうと、それこそよくある写真のように壁に掛けられた明りが、中を照らしていると、そんなことを漠然と考えていた。


「その、明りがあると、そう思い込んでいまして。」

「稼働中なら、そりゃな。ここは廃鉱山だ。そんなところに手間をかける余裕なんてないさ。

 ま、護衛らしい仕事ができて、こっちとしては嬉しいがな。ほれ。」


そういって、オユキが抱えなければいけないような大きさの、ランタンだろうか、そのような物を二つほどルイスが馬車から取り出す。


「これは。」

「見ての通りランタンだ。魔道具だがな。」

「ほう。成程。こうして手に持って魔道具を見るのは初めてですね。」

「まぁ、宿にあるのは見えないように埋め込んであるからな。」


そう言いながらルイスがひっくり返し、底の方、側面にある蓋を外し、そこ示しながら説明を続ける。


「ここに燃料の魔石を入れて、こっち側だな、此処を押し込めば灯がつく。」

「燃料の魔石というのは。」

「ああ、間違っても魔物が落としたものをそのまま入れるなよ、壊れるからな。

 灯のランタン、これ用に調整された物があるし、そうでなければ、雑多なマナを抜いた物を使わなきゃならん。」

「一つで、どの程度持ちますか。」

「2週間はいける。」

「大きさの割に、長持ちですね。」

「ま、それも含めて調整されてるんだろうな。俺も詳しくは知らんが。」

「なぁ、別に松明とかでいいんじゃないか。」


そう言うシグルドに、オユキが苦笑いで応える。


「鉱山の中で火はそれなりに危険がありますから。可燃性、ええと、火が付きやすいものが大量にあることもありますからね。」

「へー。」

「それが分かってるなら、なんで明りを持ってきてないんだよ。」

「防爆処理のされたものが壁に掛けられているのかと。」

「んなわけあるかよ。そんな手間かけるなら魔道具を使うぞ。」

「こちらでは、そうなんですよね。」

「ああ、そうかそっちは魔道具もないのか。ま、そういう事だ。内部に壊れてないのが残ってるかもしれんが、予備の魔石を持っていけば、勝手につける分には構わなかったはずだ。」

「ひとまずは入り口だけですから。それにしても。」


そうして、オユキは改めて廃鉱山の入り口を見る。


「出てこない物ですね。」

「出て来たときは氾濫だ。」

「それは、分かり易い指標ですね。」

「後は、ロープとこんなほっといても少し光る魔石だな。目印にこいつらを使う。間に来た奴が置いてるのは魔物にやられてるだろうからな。」

「こちらは、あまり人気がありませんか。」

「足場はともかく視界が悪い、で、手に入るのはとにかく重い。騎士が纏めて入って時折掃除するくらいだ。

 うし、餓鬼ども、今日の荷運びが本番だ。これまでは、程々で済んだが今日はしっかりに運びだ。」


そうしてルイスが声をかければ元気に返事が返ってくる。

ランタンも子供たちが持ってくれるようで、早速とばかりに中に足を踏み入れる。

廃鉱山の中は、暗いこと以外、特に想像とは大きく変わらない。

魔道具のランタンは不思議な光方をするようで、周囲の一定距離まで、昼のように明るくなるが、そこを超えれば、また暗闇になる。


「これがこいつの欠点なんだよな。」

「だから野営では火を使っているのですか。」

「燃料代もあるが、融通が利かないからな。こいつだと、10mってところか、そこまでは明るいが、それで終わりだ。」


少年たちは物珍し気に辺りを見回している、そして、パウが何かに気が付いたように、壁に寄っていく。


「これは。」

「お。早速なんか見つけたか。」

「ああ。」


そして、パウが壁から一塊程の何かを取り、戻って来る。


「これだ。」


一見すれば石でしかないが、ところどころに青い光をのぞかせている。


「宝石、ですか。廃鉱山では。」

「魔物が出るようになったんだ、採掘は出来ないさ。

 それに、魔物が出始めると、なぜか枯れた鉱山にも、こうして資源が戻る。」

「これは、流石に、分かりませんね。」

「ま、持ち帰って専門家に任せりゃいい。下手に取り出して調べようと傷つけりゃ一気に価値がなくなるものもあるからな。」

「そうか。」


そういって、パウがそれを荷袋に放り込む。


「ま、こういった物もあるし、見えない場所も多い。横穴もあるからな。

 周囲の警戒はいつも以上にな。」


そう声をかけられて少し進めば、早速とばかりに魔物が視界に入る。


「さて、私達から相手をしましょうか。とはいっても、あれのどこを斬ればいいのか。」


そういって、トモエが前に出て、近寄ってきた狂った地精、見た目は泥が地面から噴き出しているような、独特な形状をした魔物ではあるが、トモエがそれに向かって刀を振れば、何事もなくその姿を消す。

ただ、トモエは納得がいかなかったようで、首をかしげて太刀を確認すると、何度か素振りをする。

オユキはゲーム時代として知識があるが、トモエは初めてなのだろう。

悪戯が成功したようで、オユキは少し楽しさを覚えてしまう。


「あんちゃん、何してんだ。」

「いえ、こう、説明が難しいですね。皆さんも、一度切ってみましょう。そうするのが早いかと。」


そうして鉱山をゆっくりと進みながら、それぞれが人たち入れれば、子供たちの物であろうと姿を消し、魔石だけを残して姿を消す。


「なんだ、この、なんだ。」

「パウ。大丈夫。思いっきり地面叩いたけど。」

「ああ、武器も問題ない。だが、これは。」


少年たちにしても、子供たちにしても不思議そうにしているのを、横合いからアイリスが笑いながら見ている。


「ね。なんというか、まったく手ごたえがないといいますか。」

「まぁ、水叩いたとしても、もう少し、なんかあるよな。」

「ええ。しかし、魔石になった以上は、仕留めているのでしょうが。」

「ま、それがこいつらの特徴だ。とことん物理に弱い。切ると腹決め手武器を振れば、必ず仕留められる。

 ただ、魔術だと厄介だぞ。元が地精、とことんマナよりの生き物だ、少々の魔術ならむしろ餌になるからな。」

「ええ、私の得意は火だから、此処では使わないけれど、魔術ならそれこそ消し飛ばす、それくらいの物を使わなければどうにもならないわ。後は振られた武器を利用して、地精が狂う原因となっている淀みを切り離している、なんて話もあったわね。」

「ええと、それは。」

「見える人であれば、元に戻った地精が地面に戻っていくのが見えるらしいわ。」

「へー。」


アイリスがそんな話をするが、それに関してはオユキも初めて聞くものとなった。

確かに狂った精霊、それが狩られて数が減るのなら、精霊の数は恐ろしい勢いで減るはずだ。

狂った精霊の類は、武器で軽く小突けば姿を消したが、成程そういう絡繰りがあったのかと、今更判明する。


「成程。それなら気兼ねなく切れますね。」


そうトモエは言うが、その顔は浮かない。


「試し切りには役不足ですからね。」

「はい。鉄とは言いませんが、石人形に早く会いたいものですね。」

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