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第194話 日々の成長

いつもよりも多い魔物を相手に、一人で複数少年たちが相手をし、子供たちはオユキとトモエで場を整え一対一で、そんな戦いが二巡した頃にシグルドが珍しいことをトモエに言い出す。


「あんちゃん、ちょっと次は時間空けてもいいか。」

「構いませんよ。どうかしましたか。」

「いや、休憩ってのもあるんだけど、なんか、こう。」


そう言うと、シグルドは少し離れた場所で数回剣を振って首をかしげる。


「武器のおかげって、だけでもない気が済んだよな。」

「ジークも。私もなんだか。」


そう言って、セシリアもジークと並んで何度かグレイブを振っては首をかしげる。

さて、どうしたことかと思えば、アナがトモエに話しかける。


「えっと、ジークが言ってること分かるかも。私もなんだか違和感が。」


そういって、パウとアドリアーナを覗く三人が、揃って首をかしげながら素振りをする。

その様子にトモエとオユキは、思い当たる事が有り頷きあう。


「あ、アンとセリーもか。ならいよいよ武器だけじゃないよな。

 なんかこう、いつもみたいにガッとこないというか。」

「なにそれ。私もなんかお野菜斬ってるときみたいで。」

「アンもそうなんだ。私もなんだか、手ごたえがいつもと違う感じがして。

 パウとリアはいつも通り?」


そうセシリアが話を振れば、二人は揃って首をかしげる。


「いや、楽だなとそう感じはするが。」

「私も。少し楽に感じるし、いつもより軽く振っても問題ないけど、それくらいかな。

 力が付いたのかなって、そんな感じ。」

「そっか。」


そうして少年たちが並んで剣を振る横、子供たちも何を話しているのかと、不思議そうな顔をしている。


「あんちゃんから見て、なんか変わったか。」


どうやら自分では答えが見つからないようで、トモエに答えを求める。


「ええ、ちゃんと刃筋が立つようになってきていますから、それでしょう。

 これまでのように刃で叩くのではなく、ちゃんと切れている、そういう事です。」

「え。これまでもちゃんと切ってたぞ。」

「いいえ、叩いていただけですよ。その結果として刃の鋭さが、相手にもぐりこんだ、それだけです。」

「あ、わかったかも。お野菜も上からナイフで抑えたら切れるけどつぶれて、ちゃんと手前に引いたらあんまり潰れずに綺麗な形になるし。」

「はい。そうですよ。」


アナが身の回りで近い事が有ったため、それに思い至ったようだ。


「でも、これまでと同じようにしてるだけだけどな。」

「同じように、であって同じではない、そういう事です。

 まだまだ、ぶれがありますからね。それが常に出来る様になれば、今の型は馴染んできたという事ですよ。」

「おー。そっか。確かに初めの頃みたいに、窮屈には思わなくなってきたな。」

「私とパウは、まだって事かな。」


そう言った実感を得られていないアドリアーナとパウが少し落ち込んだような顔でトモエを見る。


「お二人は、そうですね。ただ、好みの武器が違うので。」

「ああ、そうだな。俺は叩く武器を使っていたな。」

「私も弓が好きだからかな。」

「それがあるでしょうね。型としては身について来ていますし、刃筋も整ってきてはいますが、そもそも二人とも切る事を目的とした扱いではありませんから。」


そうトモエが話すと、二人も安心したように頷く。


「さて、それでは成長が実感できたところで次に行きましょうか。」

「ああ、違和感と思ったけど、悪い物じゃないみたいだし。」

「ね。魔物を倒せるようになる以外でも、ちゃんと実感できるんだね。」

「私たちは、魔物がいなかったので、それが当たり前でしたが。

 ああ、そちらの皆さんも、まだ少し先になるでしょうが、そのうちに同じような実感を得られますよ。

 きちんと修練を続けていけば。」

「はい。分かりました。」

「でも、私達も灰兎一匹なら、疲れずに倒せるようになったよね。」

「ね。お手伝いの時も、結構重い物持てたし。」


そうして後から加わった子供たちも、ここ数日程度の実感を話し合っている。

加護があるためか、確かに成長が早い。

こうして、入り口として使われ、後は魔物を狩ることで技を磨くことなく、魔物を狩り続け、さらに少し強い魔物を相手にしても、それは変わらない。

街から離れず、周囲の魔物、それを狙うのであれば、なおのことそうなるのだろう。

こうして面倒を見ている子たちが、そちらを望めばまだしも、武として、技として、魔物に対する確たる武器になるのだ、そう思えるように教えていかなければと、そうトモエが心を改めて固め、再び声をかける。


「はい。おしゃべりはそこまで。魔物の狩りを再開しますよ。

 それと、あなた方も、そろそろ灰兎の数を増やすので、そのつもりで。」


そろって帰ってくる元気な返事に頷きながら、それからも暫くの間魔物を狩り続ける。

数が多いと思えば、オユキとトモエで間引きつつ、遠間から突っ込んでくる魔物はオユキと護衛の二人で狩る。

そして、昼を少し過ぎた、その位の時間になると、一度長めの休憩をとる。


「今後は、食事も用意しておいたほうが良いかもしれませんね。」

「肉ならいくらでもあるじゃない。少し焼きましょうか。」

「お肉だけというのも、調味料もありませんから。

 そうですね、此処で戻って、きっちりと訓練をしてもいいかもしれませんね。」

「その辺の匙加減はあんちゃんに任せるさ。確かに腹減ったから、何か食べたいけど。」

「私も。でもお肉だけは、ちょっと。うん、せめて味付けくらいは。」

「あら、美味しいのに。」


他の面々が難色を示す中、アイリスが意外と乗り気なことに、そういえば狐は肉食に近いのだったかと、そんなことをオユキは考える。


「まぁ、準備不足も経験でしょう。次からは、事前に用意しなければ、それが分かったのですから。」

「その通りだな。で、準備が足りないと分かれば、安全な場所に戻って、準備をする。そういうこった。」

「そうですね。きりも悪いので、もう一巡して、それから戻りましょうか。

 そして、昼食をとって休んだら訓練ですね。」

「ああ、狩猟者ギルドで納品してからかな。

 にしても、魔物が落とすものは、そんな変わらない感じだな。

 こう、魔物を資源とって、水と癒しの神様が言ってたから、増えるのかなとか思ってたけど。」

「数が増えていますから。その分狩りやすくなっていますよ。」

「狩れる今だからそう言えるけど、でもなぁ。」


そう言うと、シグルドは少し真剣な表情でトモエに尋ねる。


「例えば、最初の俺達や、こっちのガキどもがさ。」


そうしてシグルドが切り出すが、後に続く言葉はオユキにも、トモエにもわかる。

ならば言わせるまでもないだろう、言いにくそうにしている以上は猶更と、オユキが答える。


「ええ、死ぬでしょう。シグルド君たちも、今でもそうなります。」

「そっか。それは、グレイハウンドに。」

「いえ、見ていたでしょう。シエルヴォが突っ込んできますよ。

 下手な方向に回避を続ければ向こうに少し見えるプラドティグレに気が付かれるでしょう。」

「まぁ、そうだよな。でも、そうなると狩猟者になるの、難しくなりそうだよなぁ。」

「私たちは、出会えた幸運に感謝しましょう。」

「そりゃな。」


そういって、少年たちと子供たちが揃って頷くのを見て、オユキとトモエも頷く。


「では、その幸運を長く感じて頂けるように、よりしっかりと教えなければいけませんね。」

「うん、でも、それだけは後悔するときもある。」

「シグルド君たちだけで、シエルヴォを狩れるようになれば、此処での狩りもよりやりやすくなりますからね。」

「あんちゃん、話を聞いてくれ。たまに訓練については、本当に後悔する事が。」

「では、やめますか。」

「いや、続けるけどさ。加減とか。」

「実践よりも簡単な訓練など、役に立ちませんよ。訓練よりも実践が楽、そうであるから余計な力が入らず剣も振れるというものです。」

「それは、まぁ、何となく分かって来たけどさ。」

「では、問題ありませんね。安心してください。今の訓練はまだまだ準備運動未満ですから。」

「安心できないんだよなぁ、それ。」

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