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第167話 人手を増やそう

朝食を終えれば、早速とばかりに神殿に行こうかと、そのような流れになったが、オユキは少し受付にたって話しかける。

少々言葉は悪いがあぶく銭が入った、それもあるのだが、馬車をこちらの都合で使えるというのなら、少なくともこの領都にいる間は、ここを起点とそう決めてしまってもいいだろうと、そういう思いもある。

トモエも何をするのか気が付いたようで、オユキを追いかけて受付へと寄ってくる。


「ひとまず一月分、延長をしたいのですが。」

「ええ。もちろん可能です。」

「ありがとうございます。それと馬車についてですが、かなりいいように使わせて頂いておりますが。」

「当ホテルカ・テドラルにご宿泊のお客様ですから、どうぞお気兼ねなく。

 隣の町にという事でしたら、申し訳ございませんがご遠慮頂きますが。」

「そこまでを求めたりはしませんが、今後鉱山、廃鉱山ですか、そちらも考えていますが、そこで得た物を積むとすると、どの程度までなら可能でしょうか。」

「その折にはお申し付けください。また別の馬車を用意いたしますので。」


どうやら、そういった用意もあるそうだ。

あまりにも都合の良いサービスの数々に、ああ、そういえばここは使徒、そもそもゲームの製作者が肝いりで作った場所だったと思い出す。

ゲームであれば楽しめる不便も、こちらでは、そう考えてくれたのだろう。

そうであれば、示せる謝礼は、まぁ、今はあぶく銭しかない。

オユキがそう考えてトモエに視線を送れば、トモエも軽く頷いて、相応の金額が書かれた為替を数枚まとめて渡す。


「それでは、宿泊費、食費、馬車の利用料など、後は手間賃として頂けますか。

 それと、他の部屋についても、説明を頂けますか。」

「過分なご厚情ありがとうございます。そうですね、空室と、そういう事で宜しいでしょうか。」

「はい。」

「今は2階に4室3階に1室空きがあります。

 2階が個人向け、3階が4人から6人を想定した造りになっております。」


他の宿泊客と会うことはなかったが、やはり盛況らしい。

合わないのは、遠出している客が抑えているからと、執事が他の客と会わないよう時間をずらしているからだろうか。


「どうしますか。」

「今のところ、宛があるわけでもないので、とりあえず2階を2室、3階を1室で良いのではないかと。」

「ああ、そうですね。そういう方法もありますか。では、お手数ですが、その様に。

 食事もこちらで持つことにしますので、都度不足が出れば。」

「頂いた物で、過分かとは思いますが。承りました。」


そんなやり取りを終えてホテルを出れば、少年たちにやり取りの意図を聞かれ、説明する。


「鉱山に行く、それは決めているので、荷物を運んでくださる方と、その護衛も兼ねて傭兵の方、その方々を側にいてもらうため、ですね。」

「ああ、そういやその問題もあったな。」

「あとは、昨日狩りをして、直ぐに荷物が増えたので、そこで試すことも踏まえて今日とりあえず部屋の確保をという事ですね。祭りが始まると、埋まるかもしれませんから。」

「そうかも。お祭りのときは人が増えるし。」

「色々考えてんだな。でも、あてはあんのか。」

「護衛は傭兵ギルドに話を持っていくとして、荷物持ち、言葉は良くないですが、それを頼める方はどうした物でしょうね。」


オユキとトモエは顔を見合わせる。

そもそも土地勘もなければ、声をかけれる相手もいない。

狩猟者ギルドで聞けば、紹介くらいは頼めそうだが、このタイミングで。

祭りが近いこともあるし、そもそも1日のうち、半分も仕事はないのだ。

傭兵は護衛として1日、そういう話にできるが、荷物持ちはそういう訳にもいかない。拘束時間は発生するからその手当は出すが、実際の仕事時間以外、ただ待つことを良しとする、そんな人物が果たして都合よく見つかるか。


「なぁ、前に教会の子供でも、望めば面倒見てくれるって言ってたよな。」


考え込むオユキとトモエにシグルドが、そう声をかける。


「ええ。間が空いていますが、皆さんもある程度は任せられる場面もありますから、町に戻って増えても構いませんよ。」

「いや、こっちの教会なんだが、教会から出るのが遅れてるやつがいてさ。」

「そのあたり、仕組みが今一つわからないので、良くわかりませんが。

 教会を離れなければいけない子で、狩猟者になる事を考えている、そういう子がいるという事でしょうか。」

「ああ。今は頭下げて教会で屋根を借りて、町で仕事をして、金をためてるらしい。」

「こちらだと、まともな武器を望めば、かなりしますからね。分かりました、一度本人と会ってから話をしましょう。ただ、最初のうちは荷物を持ってもらう、それが優先されるかと思いますが。」


トモエがそう言えば、シグルドもそれに対してただ頷く。


「ま、いきなり魔物となんて戦えないさ。」

「いえ、戦わせますよ。」


さらりと答えたシグルドが、トモエが教会の子供の面倒を見ると、そう頷いたことに喜色を浮かべていたのだが、一瞬で真顔になる。


「あなた方も、実際に戦って、ようやく実感があるでしょう。

 打ち合いなどでも構いませんが、せっかく外に獲物がたくさんいるのです。利用しない手はありません。

 お金にもなりますからね。」

「うん、理屈は合ってると、そう思うんだけどな。」

「良いじゃない。こんなに運のいいことはそうそうないよ。

 私達だって、トモエさんとオユキさんに会えなかったら、どうなってたか、分からないもの。

 間違いなく領都になんていなかったもの。」

「まぁ、本人の意思もあります、会って話して、それで決めましょうか。

 それにしても、教会を出る、そうですよね、そういう日もあるでしょう。

 あなた達は、どうなのですか。」

「ああ、俺らは全員次の新年祭だな。」


言われて、恐らく時期としてはそこで成人だろうと考える。

その年齢は狩猟者への登録ができるタイミングと、そう考えていたが、意外と猶予があるようだ。

そう考えて、彼らにオユキが尋ねる。


「となれば、あなた方より年上ですか。」

「いや、3つは下だぞ。ああ、荷物持ちって考えると、確かにそうだよな、あんま小さいと心配か。」

「おや、皆さんは教会に住んでいると思っていましたが。」

「えっと、手伝いとか、いろいろしてるし、子供のの面倒も見たりするし、住んでる場所も近いけど、もう教会からは出てるよ。」


言われて、そういえば教会で会う事はあっても、彼らの生活している場というのには行ったことが無かったと思いなおす。

だが、そうなると彼らよりも年若い、そんな相手に荷物持ち、オユキとトモエは再び視線を交わして、確認し合う。


「なに。荷運びなら教会に居れば慣れる。オユキの倍だろう。

 小麦の袋の詰まった木箱や、水樽に比べれば軽いもんだ。」

「護衛の方も雇いますし、2,3人で馬車まで運んでもらえれば構いませんが。」


そういってトモエが考え込む。

オユキとしても、トモエが考えていることに関しては、口出しがしにくいため、そこに関しては、いえることが無い。

あまり黙っていても、シグルドたちが不安になるだけだろうと考え、話を振る。


「それで、その方々は、何人程でしょうか。」

「6人だって聞いてるな。その中の二人にしか俺は合ってないけど。」

「残りの女の子4人は私達と、祭具のお手入れだったもの。」

「6人ですか。人数的には問題なさそうですね。」

「そうか、で、あんちゃんはさっきから何を悩んでるんだ。無理だったり負担だったりって言うなら、こっちで断っとくぞ。狩猟者として働いてるって話をしたら、相談されたってだけだし。」


シグルドが少し不安げにトモエに声をかければ、トモエはある程度方針を決めたのか、口を開く。


「いえ、体ができる前に鍛えると、体を壊すことが多くなるんですよ。

 なので鍛錬に加えるかどうかを考えていました。まぁ、後は会って成長の度合いを見て、そうしましょうか。」

「なぁ、あんちゃん。加減とか、する気はないのか。」

「ありますが、鍛錬とはそういう物です。壊れそうなところを壊さない、そのために教える立場の人間がいるんですよ。」


そうトモエが答えると、後ろでセシリアが聖印を切った。

子供たちの、今後の健康を祈っているのだろう。

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