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第161話 領都の傭兵ギルド

案内された場所に入ると、シグルドが腰に下げた剣の柄に手を伸ばそうとしたため、オユキが肩を叩いて止める。

トモエも周囲へ警戒を向けているが、さてこの物々しさは、そう考え、思い当たるところがすぐにあった。


「昨夜の件でしょうか。」

「ああ、成程。」


始まりの町とは違い、石造りのしっかりとした建物、加えて構えからして、かなりの広さを誇ると、そうわかる建物の中は、少しガランとしており、いくつもある受付らしきところにも、一人が座っているだけだ。

オユキがそちらに行ってもいいか、そう聞くつもりで軽く手を振ると、大きく手を振って返されたため、一団で連れ立って歩いていく。


「ホセさんとカレンさんは、ここまでで大丈夫ですよ。

 特にホセさんは、色々とやらなければいけないこともあるでしょうから。」

「馬車はどうしましょうか。」

「あれば有難いのですが、私達だけでは、運転できませんから。」

「3時間ほど後に、よこしましょうか。」

「ありがとうございます。お願いしますね。」

「では、戻る道すがら、宿の者にそう伝えておきます。」

「お手数かけます。」


そうして、ホセとカレンとはギルドの入り口で分かれて、受付に向かえば、そこにはいかにも屈強な男そのような人物が立っていた。


「おう。護衛の依頼か。」

「いえ、明日以降お願いするかもしれませんが、一先ず訓練所をお借りできればと。」

「ああ、構わんぞ、教官役は、必要なさそうだな。場所代で一人50、練習用の武器を使わないなら10でいいぞ。」

「こちらの物も確かめてみたいですから。」


トモエがそういって人数分の料金を払えば、男が見慣れた木札を渡してくれる。


「少々物々しい気配ですが、昨夜の。」

「知ってんのか。ま、そうだな。まだ、出てるのも多いから、ましだがな。

 おい、坊主。気配に聡いのはいいが、ここで武器に手をかけるそぶりはやめとけ、殴られるぞ。」

「ん、そんなことしてたか。」

「無意識か。筋は悪くないみたいだから、しっかり見てやんな。」

「ええ、それでは場所お借りしますね。」


そういって、言われた扉を抜け少し歩けば、始まりの町で見慣れた訓練用の広々とした空間がある。

配置などもあまり変わっていないようで、まずはと買ったばかりの武器をそれぞれに抜いて、軽く素振りから始める。


「お。あれ。」

「あ、そっちも。私も、なんか。」

「俺の方は、そもそも形が違うからわからん。」


素振りを数回する度に、いつもと手ごたえが違うのだろう。少年たちが、数度振っては首を捻り、そんなことを繰り返している。

そして、アナが思いついたように声を上げる。


「だからトモエさん、同じ武器を使えって言うんだ。」

「いや、見た目だって同じようなの選んだろ。」

「でも、なんか、違うじゃない。」

「ええ、そうですよ、こちらの方が質が良い、そう分かるほどに違う武器ですから。

 振った時のバランスも当然違いますし、握りの太さだって、違うでしょう。」


トモエがそう言うと、それぞれに柄を持って、そこを改めて確認し始める。


「言われてみれば、こっちのが少し太いか。」

「私は、細いかも。」


武器をそれぞれ矯めつ眇めつしている少年たちに、トモエが軽く手を叩いて注意を引く。


「まぁ、こういう理由があって、武器は同じものが良いと、そう言っていたのですが。

 しっかり型が馴染めば、調整はこちらでもできますが、武器を作ってもらうときは、試しで数度振って、調整をお願いするほうが良いでしょうね。」

「ほー。ああ、だからあのおっさんも、4日後に一度来いって言ったのか。」

「ええ。恐らく大体の形がそこで出来て、そこから調整するとそういう事でしょう。

 それにしても、かなり早く感じはしますが、それぞれの最初の一本でしょうね。」

「あー、あんちゃんたち結構色々頼んでたもんな。」

「残念ですが、消耗品ですから。」


そう言うとトモエも苦い顔をしながら、買ったばかりの武器を一撫でする。


「まぁ、武器作ってるおっさんも、あんちゃんもそういうならそうなんだろうなぁ。」

「はい。それではこれにまず体を馴染ませていきましょう。明日には時間を作って魔物を狩りに行きたいですし。」

「おう、そうだな。となると明日はまず狩猟者ギルドか。」

「ちゃんと、準備の事が頭に入ってるようで何よりです。ただ、教会からもそろそろ話が来そうですし、なんだかんだと、暫くは忙しそうですね。」

「ああ、神様の御言葉を広く伝える祭りか。話では聞いたことあるけど、初めてだな。」

「しっかりお手伝いしましょう。」


そんなことを話しながら、改めて武器を構えた少年たちの姿勢をトモエが少しづつ直していく。

経験を積んでいけば自分でそれができるようになるが、今はまだトモエが指摘するのが早い。


「お。うん。これならしっくりくるな。」

「なんか前のよりも重いから、少し疲れるのが早くなりそう。」

「前のみたいに変に揺れないから、私はこっちの方が楽かな。」


そうして、それぞれに武器の感想を言い合いながら、一時間ほど武器を振り続けて、一度休憩とする。

そのころには、それぞれに武器が体に馴染み始めてはいた。


「ん-、持ち手のところがまだしっくりこないな。」

「前使っていた革に巻きなおせば、もう少ししっくりくると思いますよ。」

「ああ、そうか、そこも違うんだもんな。宿に戻ったら、換えるかな、まだ残りはあったはずだし。」

「魔物は、どうしましょうかね。今いる宿、東側だと魔物が出る位置まで、少しあるんですよね。」

「ゆっくり歩いて3時間だから、少し急げば一時間くらいじゃないか。」

「門からはそうですが、宿までの距離もありますから。」

「オユキちゃんとトモエさん、お風呂気に入ってるものね。私も好きになったけど。」


悩むトモエにアナが笑いながら声をかける。


「ええ、正直あの宿から離れがたく。

 町の中にないならともかく、ある以上は、どうしても。」

「もともと、午前中だけの短い時間だけだったし、いいと思うけど。」

「でも、トモエさんが狙ってる鉱山は、北側にあるんでしたっけ。」

「ええ、そう聞いています。まぁ、そこは後で、それこそ狩猟者ギルドで話を聞いて考えましょう。

 それに、鉱山、金属が手に入るなら、それをどう運ぶかも考えなければいけませんし。」

「そうか、金属の塊がごろっと出るなら、直ぐに持てなくなるもんな。」


そうして、それぞれに思い悩み始めるが、オユキが手を叩いて注意を引く。


「今考えても仕方がありませんからね、とりあえず、昨日の分もしっかり体を動かしましょう。

 そっちの練習用の武器も、試さなければいけませんからね。」

「そうですね。それこそギルドで相談するのが良いですね。」


そうして、休憩を切り上げ、各々練習用の武器を取りに行き、その重さに驚く。


「なんだこれ、見た目木でできてそうだけど。」

「恐らく、中に鉄芯を入れてますね。」

「木の中に、鉄を入れてんのか。」

「ええと、ああ、ありますね。ここを見てください、分かれ目があるでしょう。

 半分づつ作って、中を削り、そこに鉄を入れてから接着するんです。」

「なんだそれ、はじめっから全部鉄で作ればいいのに。」

「まぁ、練習用ですから。全部、外側も金属だと、手入れが大変ですからね。痛んだら作り直すのもことですし。」

「色々あるんだな。にしても、これ、振りにくいな。」

「中に鉄を入れる分、どうしても柄が太くなりますし、バランスも結構変わってますからね。

 痛むのは覚悟で、買ってきたものを使いましょうか。」


トモエが、そう苦笑いをして告げると、少年たちも頷く。


「あんまり、これだと練習になりそうにないし。」

「俺は、こっちでもいいな。」

「では、パウ君はそちらを使いましょうか。つるはしは先端重量が大きいので、接合部が痛みやすいですからね。」

「分かった。そうか、今度は持ち手の周りだけじゃなくて、そっちが痛みやすいのか。」

「そのあたりは、使い方次第ではありますが、今度からは、一度でとどめとならない場合は先端が魔物に埋まるので。

 上手く抜けなければ、ここですね、このあたりにかなり負担が掛かります。

 槌なら叩くことになるので、その心配はないのですが。」

「一度使ってから考えたい。」

「ええ、それでよいでしょう。」

アルファポリス

https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/160552885

カクヨム

https://kakuyomu.jp/users/Itsumi2456

にて他作品も連載しています。

宜しければ、そちらもご一読いただけましたら幸いです。

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