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第14話 古い友人と

「すまないね、トラノスケさん。これから登録をしようかと考えているところで。」


オユキは残念さを隠すことができないままに、そう伝える。


「ああ。そうか。そうだな。確かに見るからにこっちに来たばかりだ。それが先だろう。

 どうだろうか。それを待ったとして、時間はもらえそうか。」


トラノスケはオユキの言葉に、何度か頷きながら、そう続ける。


「どうでしょう。オユキさん。ご迷惑でなければ、私も先達の言葉は聞きたく思いますが。

 それこそ、トラノスケさんのご迷惑でなければ、教えを請いたく。」

「水臭いことを言うな。いや、そうか。トモエだがトモエじゃないんだしな。

 なに、それこそ当たり前のことだ。俺だってこっちに来てまだ2月ほど。

 それこそここで20年以上狩猟を営んでいる大先輩に比べれば、まだまだ卵のからも取れちゃいない。

 それでも良ければ、喜んで。」


トラノスケは昔と変わらぬ、面倒見の良さをもって、トモエにそう答える。


「では、お言葉に甘えさせていただいても?」

「ああ、こちらこそ、喜んで。

 それに、トモエ、オユキか。お前を案内したいところもある。」


言われて、こちらに来たばかりのオユキは首をかしげる。


「お前のところの団長が、こっちに来ていてな。団員が来れば、顔を合わせるくらいはしておきたいからと、方々に声をかけている。心機一転、新しいことをしたいなら邪魔はしたくない、そう言ってはいたが、どうだ?」

「おお、ミズキリも来ていましたか。そうですね、あの人ならこちらに来れるのであれば、二つ返事でしょう。」

「あら、その方は、私もお名前を耳にしたことがありますね。話を聞くだけでも良い人と、そうわかる方でした。」


オユキがトモエに昔記憶に思いを馳せながら、応える。


「はい。何度も口にしたかと思います。ただ、まぁ、悪い病気もあるのですが。」

「確か、強者との戦いを何よりも好むのでしたか。

 殿方の心がけとしては、良い気性だと私は思いますが。」

「今回はゲームのようにはいきませんので、ミズキリもそれはわかっているでしょうが。」

「なに、あいつも今はここに腰を据えている。現実は現実として受け止めて、きちんとしているさ。

 あんたも長い事一緒にやってたから、信頼もあるだろう。

 さぁ、まずは登録を済ませるといい。そのあたりはゲームの頃と同じだ。

 外の魔物を売るなら、狩猟ギルドが楽だ。商人ギルドもあるが、その場合自分で買い手まで見つけなきゃならん。」


それは面倒だろう。そう苦笑いと共に、トラノスケが告げる。

オユキはそれに肩をすくめて答えとして、カウンターへと向かう。

確か、総合受付はそこだったかと思いだしながら。


親し気に話す姿に興味を引いていたのだろう。カウンターに座る女性はオユキ達のほうへと視線を向けていた。

オユキはカウンターに近づき、改めて自分の背丈が殊更低いらしいことに気が付く。

自身の作ったトモエは190だった。元の自分の身長を切り良くしただけではあったが、その方からはるか下、恐らくへそのあたりに頭頂部が存在する自分は、ともすれば140にも満たないかもしれない。

体の動かし方に難儀するあまり、実際の数値を考えてこなかったが、なるほどこの落差には苦労しそうである。


オユキはカウンターにたどり着くと、かろうじて目線が台の上を超えるため、トモエに話は任せたほうがいいかと、自身の隣に並ぶトモエを見上げる。

こちらに合わせるではなく、普通に立っていることもあるが、改めてオユキは身長差というものを意識する。


「狩猟者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか。」

「はい。こちらのギルドへの登録を。私どもは本日こちらへ来たばかりですので。」

「そうですか。先ほどトラノスケさんと親しげに話されていましたが、お二人も異界から?」

「はい。お導きを頂きまして、こちらへ。」

「そうですか、それなら一から登録ですね。では、まずこちらの用紙に。

 えーと、此処から上と、ここと、ここ。」


言いながら受付の女性は、取り出した用紙に印をつけ、いくつかの場所には斜線を入れる。


「はい。ではこちら記入をお願いします。えと、そちらのお嬢さんも?」

「はい。私も登録をお願いします。」

「うーん、分かりました。でも、あんまり危ないことはしちゃだめですからね。」


渡された用紙は、オユキもトモエも問題なく読むことができた。今更だが、こちらに来て会話に困ったこともないと、オユキは気が付いた。どうやら、そのあたりは、何か理外の力が働いたらしい。

元の世界の言語で言えば、スペイン語だろう。そのあたりは、ゲームのタイトルから引き継いでいるらしい。

ゲームの頃であれば、UIは各言語に翻訳されてはいたが。


言われるままに、その場で記入しようかと思ったが、オユキは台の上でかけるほどに背が高いわけではない。

さて、どうしたものかと考えれば、背後にあった気配がオユキに手を伸ばしてくるのを感じる。

反射でその手を掴めば。


「手伝ってやるさ。」


そういって、トラノスケの声が聞こえたかと思えば、脇に手を入れ、持ち上げられる。


「ありがとう。助かりました。」

「なに、いいってことさ。」

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