表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女貴族に買われた少年が厳しく可愛がられて、養われます。  作者: beru


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/74

第四十一話 ご主人様は使用人の躾に手を焼き始める

「ポール、居るかしら? ちょっと良い?」

「あ、はい」

 ポールが他の使用人たちと共に銀食器を磨いていると、セシリアに声をかけられ、彼女の元へと向かう。

「悪いけど、手伝って欲しい事があるの。力仕事だから、男手のあなたが必要だわ」

「はい」

 そう命じられてセシリアの部屋に入ると、

「今日は私の部屋にある不要物を処分したいの。一旦、外の倉庫にまとめた後に、ゴミ収集業者に来て貰って、廃棄してもらうわ。まずはそこのロッカーにある物からね」

 と、セシリアがポールに命じると、早速ロッカーを開けて、収納されていた古い衣服を取り出す。

 既に十年以上前に買った物で古くなっており、年齢的にも体型的にも合わなくなったので、もう処分する事にしたのであった。

「そこのトランクに詰めておいて」

「はい。あの、本当に捨てちゃうんですか?」

「ええ。古くなってるし、とって置いても邪魔になるだけでしょう。ドレスなんかも、もう流行りの柄じゃなくなっているしね」

どの衣服も、まだ新しい上に、高価な物ばかりなので、本当に捨ててしまって良いのかと、ポールはもったいなく思っていた。

「まさか、その服、欲しいの?」

「い、いえ……いいえ、欲しいです」

「どうして? あなたが着る事はないでしょう」

「でも……」

「もしかして、何処かの古着屋に売るつもり? 少しお金にはなるかもしれないけど、あなたが持っていけばどこからか盗んだ物だと思われるわよ。持っていくなら、私が直接出向くが、アンジュ辺りに任せないと、怪しまれるわよ」

「いえ、売るとかではなくて、その……セシリア様を少しでも感じていたいというか……」

「ん?」

 トランクに古着を詰め込みながら、ポールが恥ずかしそうにそう呟く。

 セシリアの服でもアクセサリーでも何でも、彼女が身につけていた物を携帯して、セシリアを身近に感じていたい。

 そんなことを考えていたが、恥ずかしくてまともに口に出せなかった。


「私を、何? きゃっ! ちょっと!」

「うう〜〜……」

 何を思ったか、ポールは急に背後からセシリアに抱き付き、彼女にしがみつく。

「ちょっと、いきなり、何なのよ? 今は仕事中なんだから、ダメでしょ、そんな事したら」

「セシリア様とこうしてたいですう……居ない時は、とても寂しくて。それに今日はまだしてないです」

「はあ……」

 自分にしがみつきながら、駄々を捏ねるポールを見て、思わず溜息を付くセシリア。

 日に日に、幼児退行が進んで、セシリアに幼子の様に甘えてくるポールに最近は彼女も頭を悩ませていた。

「あなたはもう少し、大人になりなさい。もう、そんな事をする年じゃないでしょう。私もポールのママじゃないの。何度、言えばわかるのよ」

「セシリア様はママより優しいから大好きですよ」 

「んもう……甘やかしすぎたわね、これは……懐いてくれるのは嬉しいけど、これは調子に乗りすぎよ。いい加減、離れないと、抱っこしてあげないからね」

「うう……それは嫌ですう……」

と涙ながらに、更にぎゅっとセシリアにしがみついてポールが訴えるが、セシリアの意思は固く、

「冗談じゃないわよ。あなたは使用人としての自覚が足らないわ。教育が少し間違っていたかもしれないわね。この所のポールの素行は目に余るわ」

「ふええ……」

 強引にしがみついていた、ポールをセシリアは振り払い、泣きそうに上目遣いで見上げていたポールにそう宣告する。


 今までセシリアのお仕置きは彼にとっても、厳しくはなかったので、調子に乗らせすぎたと、セシリアも何度も反省していたが、今回ばかりはもう甘くはしないぞと決意したのか、

「この鞭は、お父様が昔、私に対して使ったものよ。小さい頃、言う事を聞かなかったら、これで何度かお尻を叩かれた事があったわ。今度、私の言う事を聞かなかったら、本当に脅しじゃなくて、叩くわよ」

「えーーん……そんなの嫌です……ひっ!」

 パチンっ!

 と、鞭を取り出したセシリアが、ポールの足元の床を思いっきり鞭で叩いて、幼い彼を威嚇する。

 しかし、威嚇だけでは脅しにならないと思った、セシリアは

「お尻を出しなさい」

「え?」

「今まで、駄々を捏ねた困らせた分のお仕置きをするわ。さ、後ろを向いて」

「え……」

 目を吊り上げて、セシリアがそうポールに命じると、ポールも今までにない厳しい口調と顔をしていた、主を見て青ざめる。

 まさか、本気で言っているのかと思っていたが、セシリアは一向に引く気配はなく、早くやれと鞭を手に持って、 


「ほら、早くなさい。今なら、一発だけで許してあげるわ。鞭の味をちゃんと味わないと、ポールは駄目みたいだしね」

「う……うえーーーん……」

「泣くんじゃないわよ、男の子でしょう。私も甘やかせ過ぎた事を反省しているの。特に最近のポールは目に余るわ。ほら、泣いてないで、さっさと後ろを向く。言う事聞かないと、二発、三発と増やすわよ」

「えぐ……うわあああん……!」

「こら! 赤ちゃんみたいな泣き声出さないの! そんな声出しても許さないわよ!」

「そんなのセシリア様じゃないです……セシリア様はもっと優しくて、温かい人です。鞭なんか振るう人じゃないもん」

「あなた、私の事を勘違いしてるわね。確かに鞭なんか使いたくないけど、ポールの聞き分けが悪いから、こうやって躾無いといけないと判断したのよ。良いから、後ろを向きなさい! 今なら一回で許すから、言う事聞かないと、貴方の手を……きゃあ!」

 執拗に泣いて駄々を捏ねるポールに困惑していたセシリアが声を荒げて、本当に鞭を振るおうとすると、ポールはまた彼女の胸に飛び込んできつく抱き締める。

「くっ! は、離れなさい、ポール!」

「嫌です……真面目にお仕事しますから、ぶつの止めて下さいい……う、えぐ……しないと、僕、屋敷から出ます」 

「そんなんで私を脅す気? 逃げたら、貴方の事、追いかけて連れ戻してやんだからね! ポールは私の物なのよ! わかってるの?」

「僕、いつも抱っこしてくれる優しいセシリア様じゃないと嫌です。鞭なんか使うセシリア様は嫌だもん」

「ああ、もう……」


「何の騒ぎですか?」

「っ!」

 騒ぎを聞きつけたのか、アンジュが急いで、セシリアの部屋に走り出して来たので、咄嗟にセシリアはポールを突き飛ばす。

「何事ですか?」

「ポールが私の衣服を乱暴に扱ったから、注意していた所。もう終ったから下がって良いわ」

「は、はい。では失礼します」

 そうセシリアに告げられると、アンジュも訝しげな顔をしながらも部屋をすぐ後にする。

 アンジュに見られたせいで、セシリアも気が抜けてしまい、

「もう良いわ。作業に戻りなさい。でも、ポールの事、許した訳じゃないからね」

「うう〜〜」

「返事はっ!?」

「はいっ!」

 セシリアが怒鳴り声を上げて、そう言うと、ポールも思わず目を瞑って返事する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ